たまには、そういうことだってあると思います。
「炎が利かないみたい。爪も届かないし」
お手上げだ、とネコが肩をすくめる。
「こっちも無理だな。月刃は危なくて使えないし」
三日月形の武器をいじりながら、ウサギもため息を吐く。ウサギに与えられた、三日月の刃は、投げればブーメランのように戻ってくるらしい。が、彼はまだそれを使いこなせてはいなかった。
「海坊主…。厄介ね」
海辺に出現した海坊主は、火をものともせず、砂や土の攻撃もダメージを与えられない。巨大すぎて、重力を操作できるウサギの手にも余ってしまう。
「凍るかしら」
「氷なら攻撃も届くか?」
二人はそろってイヌの方を見た。
「イヌ。氷の力であいつ何とかできない?」
海坊主の攻撃を掻い潜って二人の元に来たイヌは、ネコの言葉に不安な表情を浮かべる。
「できる、と思います。あの大きさも凍らせることはできると思うし。ただ、時間がかかります」
「じゃあ、時間は私とウサギが稼ぐわ。頼んだわよ」
「うっす」
顔を引き締め、少し離れた場所で力を集中させる。
「……イメージ。イメージ」
確かクラウドは、能力の発動にはイメージが必要だ、と言っていた。実際ネコさんはイメージを口にすることで、うまく炎を操ることに成功している。
身を凍らす吹雪。鋭い氷柱。避けようのない氷の雨。
「イヌっ!まだなの!?」
「陸に上がるぞ!」
二人の切羽つまった声がイヌの耳に届く。二人の役に立たなければ。
「行けます!」
力をためた右手を振り上げる。
「氷柱雨!」
そう叫んで放った力は、鋭い氷の雨となって海坊主を襲う――筈だった。
「きゃぁっ」
「うわっ」
「……あ」
鋭い氷の雨は、海坊主の手前、ネコとウサギの頭上に降り注いだ。
「殺す気!?」
むしろ今からイヌを殺しそうな目で、すべてを避けきったネコが怒鳴る。
「すんません!」
コントロールを間違えたらしい。ウサギやネコを意識し過ぎたのだろう。
「説教も私刑も後だ!やるぞ、ネコ」
地味に恐ろしいことを言って、ウサギが月刃を出す。
「使えないとは言ってられない。月刃で表面に傷を作る。そこに炎をぶち込め」
「はい!」
すぐさま海坊主に意識を戻して、ネコとウサギが攻撃態勢に入る。
「月刃」
「火車、二輪!」
月刃が海坊主の両目をえぐる。そこに、駆け上がった猫が特大の炎を叩きこんだ。
断末魔をあげて、海坊主が消えた。黙って互いの手を叩いていたわり合うウサギとネコの姿に、イヌは何とも言えないさみしさを覚えたのだった。
この後イヌは説教コースです。




