その10 マリア、これからもバトルする
そうなのよ。
私、心の底で、ずっと一緒にいてくれるトモダチが欲しかったのよ。
それがね。
今、アリエルっていう天使なの。
出会ったばかりのトモダチなの。
私。
フィクションに、うといけど。
戦うの。アリエルと一緒に。
「眠いんだけど。何よ、これ」
「遠藤マリア!起きてくれたでありますか?」
「アリエル。泣いてるの?」
天使アリエルの両目からは、涙があふれ出していた。
「当たり前であります。トモダチが心配だったのでありますよ!」
マリアは、胸ポケットからハンカチを取り出したが、霊体のアリエルの涙を拭いてあげられなかった。
「全ては、ワタシがおっちょこちょいだったからである」
筋肉隆々の老人が、両手を組んで、仁王立ちをしている。
明らかに、常人では無い。
「何、あれ?」
「天上の神様であります。偉いのであります」
その10 マリア、これからもバトルする
天上世界には、筋肉質な白髪の神様がいたらしい。
神様に、名前は無く。
ただ、すごい昔から、天使たちの住む世界に、君臨してきた。
頭より、身体が達者な存在である。
「大天使ミカエルよ。年若い天使アリエルよ。そして、“特別者”遠藤マリア」
白髪の神様の前に、ミカエル様とアリエルが片膝をつけてお辞儀をする。
マリアも、何となく頭を下げた。
クリスの存在は、目に入ってないのか。会話がわかる者たち以外に、神様は目線を向けない。
精神病院のクリスの個室に、人間と、天使と、神様がいた。
ルシファーの姿は、無く。
人間が入れるくらいの、縦長な鳥かごが、いつの間にか置いてある。
「黒い大天使ルシファーは、臨時鳥かごに入れたである。だが、安心してはならないである」
神様は、ルシファーの力が、怒りによって増減するものだと説く。
ルシファーは、初めから、天使が見える人間を憎んでいたわけではない。
きっかけが、あった。
天上世界では、天使と、干支の動物たちが暮らしている。
ルシファーは、大の動物好きで、干支の動物たちを可愛がってきた。
しかし、ある日、干支のネズミが一匹、地上の人間世界に落ちてしまう。
慌てたルシファーは、直ぐ様、ネズミを探すため、人間世界へ降りた。
ネズミは、案外すぐに見つかった。
だが、ネズミを保護していたのは、天使が見える精神障害者だった。
その人間が、ルシファーの、天使の見える人間嫌いの原因?
近い。少し違う。
その精神障害者の飼っていたネコが、最大の原因だった。
飼いネコは、愛くるしかったのだ。
天上世界には、干支の動物たちしかいない。
ネコがいない。
ネコを独占する、心底、心の醜い人間たち…。
「果たして、ルシファーの人間嫌いとなったのである。以上である」
「…ネコ欲しさの闇落ちでございますね…」
神様とミカエル様は、肩を、なで下ろす。
「何?長くて、何もわからなかったわよ」
「ルシファーは、ネコ好きなだけのイジメっ子大天使でありますか?」
まだ若い天使のアリエルは、真相を知らなかった。
ネコが欲しいだけで、遠藤マリアを永遠に眠らせる神器を使ったのは許せる範囲ではない。
「アリエル。落ち着いて欲しいでございます」
ミカエル様は、
「ワタクシにとっては、ルシファーは、友人でございます」
と、言った。
友人、トモダチ…。
なら、何とかして助けるべきだ。
マリアは、結構、行動派だ。
「私、何とかするわよ。ネコ好きとか?」
「遠藤マリアよ。できれば、ルシファーの心のすむまで、地上世界のネコを与えたいのである」
「…ネコを、与える?」
神様の言葉に、首を傾げる、マリア。
「…あ、あの。ネコなら、ボクの屋敷にたくさんいますけど…」
クリスが、か細い声で乱入してくる。
「それよ!そのネコを与えるのよ!」
「ナイスアイデアであります。遠藤マリア」
かくして、永井クリスの屋敷から、ネコが一匹、精神病院に持ち込まれることになった。
クリスの電話一本で、ネコが屋敷から移動してくる。病院内は、ペット厳禁かもだったので、外の駐車場でルシファーとネコを引き合わせた。
ニャア
ニャアニャア
「可愛いだわよ〜!」
臨時鳥かごから出た、ルシファーは、永井家の自家用車から、聞こえるネコの声に身体をくねらせる。
クリスがネコを抱えると、そのネコの種類は、アメリカンショートヘアだと、わかった。
「可愛いだわよ〜!可愛いだわよ〜!」
ルシファーは、その後、もう人間嫌いなんて言わないだわよと、神様に約束した。
「これにて、一件落着でございます…」
ミカエル様が、深々と、マリアに、頭を下げる。
「これで、終わりなの?」
「終了でありますね」
「…何か、色々あったけど、大変な気がすることもあったけど。アリエルと会えて、私、良かった!」
「アリエルだって、遠藤マリアに会えて良かったであります!」
「トモダチだものね」
「トモダチでありますからね」
少女マリアと天使アリエルは、一緒に笑い合った。
ごく普通の何もない毎日。
だけど、突然起こるのが、病気だったりする。
特に、精神病は、本来、孤独で辛い病気です。
幻聴、幻覚、それが、もし…。
楽しいことだとしたら?
天使が見える精神病だったら?
遠藤マリアのように、何となくで良い。
ラクに考える心を大切にしましょう。
「私、精神病と戦うわ!」




