始まり
翌朝、サイは目覚まし時計が鳴る前に目を覚ました。
窓から差し込む朝日がまだ弱く、部屋は薄暗かった。
時計を見ると、まだ朝の5時だった。
『おはよう、サイ』
ジェイクの声が彼の心に響いた。
『よく眠れたか?』
「はい…」サイは少し驚いて答えた。
彼はまだジェイクの存在に慣れていなかった。
「でも、なんでこんなに早く起きてしまったんでしょう?」
『体が自然と目覚めたんだ』ジェイクは言った。
『これは良い兆候だ。今日から基礎トレーニングを始めよう。まずは体を動かすことから』
「こんなに早くから?」サイは少し驚いたが、すぐに納得した。
彼はジェイクを信頼していた。「分かりました。何をすればいいですか?」
『まずはランニングだ』ジェイクは指示した。
『校庭を10周。それから腕立て伏せと腹筋。基礎体力がなければ、どんな能力も活かせない。これは軍隊の基本だ』
サイは黙って頷き、体操服に着替えて寮を出た。
まだ誰も起きていない静かな校庭は、朝霧に包まれていた。
彼は深呼吸し、ジェイクの指示に従ってランニングを始めた。
最初の数周は何とか走れたが、5周目を過ぎたあたりから、サイの足は重くなり、呼吸も荒くなってきた。
彼は普段から運動が得意ではなく、体力にも自信がなかった。
「もう…無理です…」サイは7周目で立ち止まり、膝に手をついて息を切らした。
『まだだ、サイ。』ジェイクの声は厳しかったが、励ましの色も含まれていた。
『最後まで諦めるな。一歩ずつでいい。ゆっくりでもいい。最後まで走り切るんだ。』
サイは深呼吸し、再び走り始めた。
彼の足は鉛のように重く、肺は火のように熱かったが、ジェイクの励ましの声に支えられ、何とか10周を走り切った。
「はぁ…はぁ…」サイは息を切らしながら膝に手をついた。
汗が顔から滴り落ち、体操服は汗でびっしょりだった。
「きつい…です…」
『最初は誰でもそうだ』ジェイクは優しく言った。
『私も訓練を始めた頃は同じだった。大事なのは諦めないことだ。続けることが、成長への唯一の道だ。さあ、次は腕立て伏せだ』
サイは言われるままに腕立て伏せの姿勢をとった。
彼の細い腕は震え、最初の数回で既に力が入らなくなったが、ジェイクの指導のもと、何とか20回をこなした。
腕立て伏せに続いて腹筋も行い、最後に軽いストレッチで締めくくった。
朝のトレーニングを終えると、サイは汗だくになっていた。
彼の体は疲労で震えていたが、同時に不思議な充実感も感じていた。
『よくやった、サイ』ジェイクは彼を褒めた。
『これからは毎朝、このトレーニングを続けよう。少しずつ回数を増やしていくんだ』
「はい…」サイは疲れながらも、素直に頷いた。