ジェイクとの出会い
「幽霊…?」サイは信じられない様子で尋ねた。
杖を下げる気配はない。
「そうだ。俺の魂はこの地に留まっている」ジェイクは答えた。
彼は周囲の遺体を見回した。
「これは俺のチームだ。地球から…いや、別の世界から来たんだ。隠密作戦中に突如空間がネジ曲がり、この世界に飛ばされた。しかも上空に転移してチームは全滅。俺だけがなぜか幽霊となってこの周辺を彷徨っていた」
「地球?別の世界?」サイは混乱した様子で尋ねた。
「ああ、長い話だ」ジェイクは腕を組んだ。「お前は?」
「サイです。天乃学園の生徒で…」サイは少し躊躇した後、続けた。
「僕には『複製』という固有スキルがあります。
構造や材質を理解しているものなら、掌サイズのものを複製できるんです。でも、複雑なものだと魔力の消費が大きくなって…」
「なるほど、複製か」ジェイクは興味深そうに言った。
「それは貴重なスキルだな」
「でも、みんなは役に立たないと言います。戦闘には向いていないし…」
「役に立たない?」ジェイクは笑った。
その笑い声は、森の静けさを破るほど大きかった。
「そんなことはない。お前の力は、知識があれば何でも作り出せる力だ。それがどれほど貴重か、分かっているのか?」
「でも、直接戦闘には…それに掌サイズのものしか複製できないんです」
「誰がそう言った?」ジェイクは遮った。
彼は散乱している武器の一つを指さした。
「これが何か分かるか?」
サイは首を横に振った。
「これはSIG P226だ。9mm口径の弾を使用するハンドガンだ。コンパクトだが、信頼性が高く、特殊部隊でも愛用されている」ジェイクは説明した。
「俺はこの銃を完全に分解して、お前に構造を教えることができる。お前の力で、これを複製できるか試してみろ」
――――
「見ろ、これが本当のお前の力だ」ジェイクは満足げに言った。
彼の幽霊の姿が、少し明るく輝いたように見えた。
「知識さえあれば、何でも作り出せる。それが複製の真の力だ」
サイは新しく複製した部品を使って、ハンドガンを組み立て直した。
彼の手は震えていたが、ジェイクの指導に従って一つ一つの作業を丁寧に行った。
「これで弾も撃てるんですか?」サイは興奮して尋ねた。
「ああ、弾薬も複製できる。試してみろ」
サイは再び集中し、9mm弾を複製した。ジェイクの指導のもと、彼は銃に弾を込め、近くの木を標的にして発射した。
銃声が森に響き渡り、木の幹に穴が開いた。
「すごい…」サイは自分の目を疑った。
「こんなに威力があるなんて…」
「これがお前の力だ、サイ」ジェイクは彼の肩に手を置こうとしたが、幽霊の手は通り抜けてしまった。
「お前は落ちこぼれなんかじゃない。ただ、力の使い方を知らなかっただけだ」
サイはハンドガンを手に取り、その重さと質感を確かめた。
それは確かに実在し魔法で作られたとは思えないほど精巧な作りだった。
「周りにはもっと様々な装備がある」ジェイクは周囲を見回した。
「ライフル、サブマシンガン、夜間視覚装置、通信機器…すべてお前の力で複製できる可能性がある。だが、今日はこれだけにしておこう。また後日、ここに来て他の装備も見てみるといい」
何を言ってるのかサッパリ分からなかったが、
「はい!」とサイは興奮した様子で答えた。