2話 暮らし開始
~屋敷~
ターサー「さ…ここだ…」
ターサーは両手で大きな扉を豪快に開ける
ゆい「おぉー!すっごい家ー!」
シロ「…」
メアリー「…」
ターサー「…(気に入ったとは言ったが…残り二人は静かすぎるな…)」
ゆい「わーい…ゆいの部屋どこになるの?」
ターサー「え?あー…どこが良い?一緒にまわるか?」
ゆい「もっちろん!」
ターサーはゆい…メアリー…シロと一緒に歩いていく
そうしていくつか部屋を紹介すると…
ゆい「ゆいここが良い!」
ゆいは紹介した部屋の中の一つ…
紫色のベットに大きめの人形を置いておいた…
他にもドレッサー…ワードローブ…などなど
ターサー「…(こんなメイドもいるかと思って…人形なんて置いておいて正解だった…)」
ターサー「ここだな?じゃ…ゆいはここだ…」
ゆい「やったぁぁぁ!」
ボフッ!
ゆいは勢いよくベットに飛び込み人形を抱き締める
その目は…一瞬だけ…少し寂しそうにも見えた。
そうしてゆいは少し広めの紫色を基調とした部屋になった。
次に…
シロ「…」
ターサー「…(こいつ…結構反応してるっぽいな…)…どうだ?シロ?ここはピッタリに思えるぞ」
シロ「ここにさせていただきます…」
シロは白樺の綺麗な床…壁…家具…白色を基調とした部屋になった。
ターサー「…(さて…最後に…)」
メアリー「…」
ターサー「メアリー…この部屋…どう思う?」
黒い木のフレームにマゼンタのベット…ワードローブ…ドレッサー…
ターサー「…(メアリーって感じがする…この部屋で決定だろ…)」
メアリー「私はどこでも構いません…」
ターサー「ならここだ…」
メアリーは部屋にかかった時計を見ながら言う。
メアリー「ありがとうございます…さて…夕食を…有り合わせでも私に任せてくれますか?」
シロ「あら…メアリーさんは料理を?」
メアリー「はい…」
シロ「では…私達は屋敷内の清掃を始めようと思います…ゆいさん…行きましょう…」
ゆい「えぇー…ゆい疲れたー…」
シロ「…ゆいさん…」
ギロリと睨むシロ
ゆい「は…はぁーい…」
二人はそそくさと行き掃除を始めに行く。
メアリー「では…ご主人様…お願いします…」
ターサー「あぁ…こっちだ…」
ターサーは屋敷内を一緒に歩きながら
ターサー「さて…ここがキッチンだ…」
メアリー「ありがとうございます…」
メアリーはキッチンに入り進んでいくとまず先に冷蔵庫を開ける
メアリー「…今夜はシチューを作ろうと思います」
ターサー「あぁ…頼んだ…」
メアリーは淡々と料理を始めていく
ターサー「…(さてと…少し様子見させていただこう…)」
ターサーはキッチンのテーブルの椅子に座りメアリーの後ろ姿を確認していく
ターサー「…(確か…)」
バックから紙を取り出す
遺伝子改良メイド
ターサー「…(夢のつまったメイド…)」
そう大きく書かれている紙。
ターサーは顔を上げ紙とメアリーを交互に見る。
まるで常に計算されてる機械のような動き…
鍋の取っ手に触れる手も、まな板で刻む指も何一つ無駄がない。
ターサー「…(無駄がないな…)」
メアリーは淡々と料理を続けている…
その時だった、メアリーのエプロンの後ろの紐がほどけかけている。
ターサー「ぉ…」
ターサーは椅子から立ち上がりメアリーの背中につく。
ターサー「ほどけかかってる…」
メアリー「…?あ…すみません…」
ターサー「意外にも抜けてるな…」
ターサーはメアリーのエプロンの紐を握り結んでいく
メアリー「あ…私がっ…」
ターサー「良いって…またほどける結び方しそうだしな」
メアリー「…」
メアリーは無言で結んでもらう…少し…拗ねてるようにも見えた。
ターサーは…ほんの少しだけ、結ぶ指先に力が入った。
完璧に見える背中が、いま少しだけ…無防備に見えたから。
ターサー「…(こういう完璧なやつって…失敗気にしがちなんだよなぁ…)」
キュッ…ほどけないよう結び終える。
メアリー「…ありがとうございます…その…以後、気を付けます…」
ターサーは軽く笑いながら返す
ターサー「いや…少しくらい…抜けてた方が安心する」
メアリー「そ…そういう…ものなのですか?」
ターサー「何も完璧が全てじゃないからな」
メアリーは少し俯いた後…鍋のお玉を握り料理に戻る
ターサー「…(ふぅ…さてと…あいつらはどうなってるかな?)」
キッチンを出てシロとゆいの調子を見に行く。
廊下を歩いていき見えたのは…
シロにきっちり見張られながら窓を拭いているゆいだった。
ターサー「調子はどうだ?二人とも…」
ゆい「あ…ご主人様ぁぁぁぁ!」
ほとんど泣いてるかのように甘えるように抱きついてくるゆい。
ターサー「あぇっ?」
ゆい「シロがずっとずっと見張ってくるんだけどぉ!好きに仕事させてくれないよぉ!」
ターサー「そ…そうなのか?」
ゆい「うん…シロが…ずっと…ずっと横にいて…目線が冷たくて…窓が割れるかと思った…」
ターサーはシロにゆっくり視線を向ける。
シロはいたって冷静にこちらを見ている。
それだけじゃない…早くゆいを仕事に戻らせろ…という視線に感じる。
ターサー「あ…あー…シロの仕事はしばらくゆいを見張ることなんだ…だから…もう少し頑張ってみないか?その後…ちょっとした特別な任務を与えてやる…シロも…それで良いよな?」
シロ「ご主人様の…選択でしたら…私は否定しません」
ターサー「良かったな?」
ゆい「特別な任務って…?」
ターサー「あと10分頑張ったらな…?特別任務は…俺のおすすめ菓子を一緒に味見すること」
ゆいはしばらく黙っていたが、ちらりとシロを見てから目をそらす。
そのまま手を動かしながら、口を尖らせて呟いた。
ゆい「まぁ~…ご主人様が言うなら…仕方ないよねぇ…」
シロ「まったく…ゆいさんはいっつもそうですね…」
シロは呆れたように溜息をつきながらも…
その目の奥には、わずかな安心が滲んでいた。
ターサー「…(そうか…甘いもの好きなのか…)…味見とは言ったが…沢山用意しとくよ…」
ターサーは再び笑いながら言うとその場から離れていく。
ゆいはそこからさらに元気になり言う。
ゆい「よーし!このまま世界一綺麗なお屋敷にするも~ん!」
続く