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第一章 ⑥
はっ。
一瞬感覚がどこか遠のいていた僕は、慌てて何か話さなければと彼女の周りをきょろきょろと見渡した。
「あっ…傘!」
え?傘?
そう、目についた物は傘。
彼女の隣には傘があったのだ。
しっかりと閉じられた傘は、白地に所々ブルーがかっていて、柄の部分には虹色のチャームが揺れている。
恐らく女性物の傘だろう。
僕の頭は分からなくなった。
なぜ傘を持っているのに彼女はずぶ濡れなのか?
彼女の傘ではない…のか?
その疑問を問いかける前に彼女が口を開いた。