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第三章 ⑳
土砂降りの雨…
僕は遠い昔のことを思い出した。
あれは、初めて祖父母の家に預けられた時のことだ。
僕は一人で祖父母の家の周りで遊んでいた。
遠くへ行ってはいけないよ、とばあちゃんに言われていたのだが、好奇心が勝り、裏山へ続く道へずんずんと進んで行ってしまった。
そこにはこれまで見たこともないくらい大きな虫や、変わった葉っぱやきれいな花がたくさんあって、僕は夢中になっていた。
その時、突然雨が降って来た。
僕は慌てて祖父母の家へ戻ろうとしたのだが、途中足を滑らせてしまい、小さな崖から転落してしまった。
そこで、足の痛みと怖さで身動きが取れなくなってしまった。
雨は土砂降りのように降り始め、土の匂いが強くなり、僕の耳には雨の音しか聞こえなくなった。
このままもう、お母さんやじいちゃん、ばあちゃんに会えないのだろうか…と初めて感じる怖さと悲しさの中、僕の身体と意識はだんだんと感覚を失っていった。




