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第三章 ⑯
どれくらい時間が経っただろう。
僕たちは時間も忘れて、二人で静かに涙を流していた。
「…ごめんなさい。どんなに泣いても、どんなに後悔しても、もうおじいさんは戻ってこないのに…」
ロゼはそう言うと両手で涙を拭った。
「いや、僕の方こそ、泣いてしまって…」
僕は慌ててTシャツの袖で涙を拭いながらそう言った。
「ただ、合田のじいさんが亡くなったのは、ロゼのせいじゃない。ロゼのせいなんかじゃない。
じいさんは、最期までロゼを想って待ってたんだ。ロゼが帰ってくるのを。
ただロゼに「おかえり」って一言、言いたかったんだと思う。
だって、ロゼはじいさんの“家族”だったと思うから。」
「家族……
おじいさん、私が何か失敗すると笑いながら言ってくれました。
「ロゼは不器用じゃな!さすがオラの孫じゃな!」って。
私はおじいさんの“家族”になれたのかな…なれてたのかな…」
「うん、もちろんだよ。
ロゼはじいさんの“家族”だったんだよ。今までも、そしてこれからも。」
僕がそう言うと、ロゼは瞳に涙をいっぱい貯めながら、顔をくしゃくしゃにして笑った。




