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第三章 ⑪ *
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ロゼと話しているうちに、僕は次第に落ち着きを取り戻していった。
「そういえば、“おじいさんを助けられなかった”って、どういう意味なんですか?」
そう問いかけると、たちまち彼女の表情は曇っていった。
「あの日…私が出かけてなければ……おじいさんは助かったかも…しれないのに……」
「…うん?」
「おじいさんが亡くなった日…
いつもはおじいさんの家の周りにいたんですけど、その日に限って、私…少し遠くへ出かけてしまったんです。
バラの花が見たくて…」
「バラの花…?」
「…はい。おじいさんが、ロゼという名前には“バラの花”という意味もあるって教えてくれたんです。
バラはとてもきれいでいい匂いのする花だって。
亡くなったおばあさんが好きな花だったって…
お花の図鑑を見せてくれながら嬉しそうに教えてくれました。
それで…私、見たくなったんです…」




