37/51
第三章 ⑩
「あっ!すみません!ずっと名乗りもせずに!
“ハル”です。青山ハル。」
「ハルさん、ですか。」
「あっ、“ハル”で大丈夫です!呼び捨てで!」
「“ハル”…いい名まえですね。」
「カタカナだから珍しがられるんですけど…」
「そうなんですか?」
「あ、はい。名まえだけだと、たまに女性に間違われることもあります。
だから、昔はこの名前が嫌いでした。
…でも、この名まえは母が一生懸命考えて付けてくれたんです。
“晴れ”という意味もあるし、僕の産まれた季節の“春”っていう意味もあるし、母曰く、“新しい始まり”を込めたらしいです。
「いつでも、どこからでも新しく始められるって素敵じゃない?」って、よく言ってます。」
「“新しい始まり”…いいですね。」
「あ、ありがとうございます。なんだか照れます。
“ロゼ”もいい名まえです!」
そう僕が言うと、彼女はとても嬉しそうに
「はい!」
そう答えた。




