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第三章 ⑤
「合田の…じいさんにも…?」
かろうじて声を出すことができた。
「…はい。おじいさんに助けてもらった時は、まだ猫に見えていたようです。
猫として助けられました。
それから、おじいさんにお世話になり始めてしばらくしてからです。」
僕と合田のじいさん…?
特に大きな関わりはなかったし、会った時に挨拶を交わすくらいだった。
僕の頭の中は混乱していた。
「なにか…思い当たることは…?」
「思い当たること…?」
「うん…合田のじいさんに見えるようになった日とか…
その時のことはなにか覚えてる…?」
「おじいさんが見えるようになった日…」
彼女はそう言うと悩ましいような、困ったような顔をした。
「あ…雨…雨が降っていました。」
「雨…?」
「はい。急に土砂降りのような雨が降ってきて…それから、えっと…」
彼女はその時のことを思い出しながら話し始めた。




