29/51
第三章 ②
家からバス停までは歩いて20分はかかる。
僕は走った。
途中、近所のおばちゃんがいつものように
「あら、ハル君、おはよう!」
と声をかけてきたが、
「おはようっ、ございます!」
息が弾む中、走りながら挨拶を返した。
「あら、急いでるのね~。いってらっしゃ~い!」
「いってきま~す!」
おばちゃん家を通り過ぎても、僕は走り続けた。
走り続けて行くと、遠くにバス停が見えてきた。
「はぁ…あと少し…はぁはぁ…」
そうしてバス停にたどり着いた。
「はぁはぁはぁ………
……あぁ、遅かったか……」
待合室を見渡したが、そこに彼女の姿はなかった。
僕は、うなだれるように椅子へ横たわった。
息はまだ上がったままで、心臓はドクドクと波打っている。
夏の暑さもあって汗が次から次に額から流れてきた。
僕は、待合室の椅子に仰向けになりながら待合室の天井をただ、ぼーっと見つめていた。




