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第二章 ⑬
辺りは陽もだいぶ落ち、本格的に夜を迎えようとしていた。
僕の緊張も解けていた。
「合田のじいさんとは、どうして?」
「…助けてもらったんです……雨の降る日に。
…………………………………。」
彼女は黙った。
そして、少しの時間黙った後にまた歩く足を止めて、ひとこと
「私、猫なんです。」
そう言った。
「…ねこ?…………ネコ?ん?…………猫?」
僕の頭は何を、どう考えていいのか分からなかった。
そう聞き返すことしかできなかった。
「ごめんなさい!!驚きますよね!
でもっ、あっ、あなたには見えてるのでっ!」
彼女は下を向きながら、両手でぎゅっと自分の洋服の裾を握りしめていた。
「あ、あの…、“見えてる”…って?」
僕は恐る恐る彼女に聞き返した。
「え、えと、私が…私が…“人間”に。」
「………………………。」
僕の頭は完全にショートした。




