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第二章 ⑫
「半年…くらいになります。それまでは、別の町にいました。」
「そう、なんですね…。合田さん…合田の…じいさんとは?」
僕は内心ドキドキしながら聞いた。
「おじいさんにお世話になっていました。とても…」
「お孫さん…なんですよね…?」
「……ごめんなさい。」
「え…?」
彼女は突然歩く足を止めた。
「私、孫じゃないんです…あの…あの時、気が動転してて…
ごめんなさい!嘘をつくつもりはなかったんです…ごめんなさい!
本当にごめんなさい!」
そう言いながら何度も頭を下げた。
「い、いえ!大丈夫です!そんなに謝らなくて、大丈夫です!
あの!本当に!大丈夫です!」
僕は彼女をたどたどしくもなだめながら、ほっとした気持ちでいる自分に気づいた。
彼女への疑問がまたひとつ解けたこともそうなのだが、女性の「ごめんね」の理由が初めて自分の中で理解できたことがただ単純にうれしかった。




