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第二章 ⑩
「先日は、ありがとうございました。」
彼女はそう言うと、もう一度頭を下げた。
「い、いえ!こちらこそ!傘まで借りてしまって!」
僕も訳も分からぬまま頭を下げた。
「一旦!待ってください!」
僕は彼女の返答も聞かず、彼女に背を向けた。
そして、
「ふぅ~~、すぅ~~~~。」
と一度大きな深呼吸をして、振り向いた。
彼女は僕の行動に少し不思議そうな顔をしていた。
「僕は!今から帰ります!」
一体、何の宣言なのだろうか。
気持ちを落ち着けようとした深呼吸が意味をなしていない。
全く落ち着かないまま言葉を発してしまった自分が恥ずかしかった。
「あのっ、山上町、ですよね?」
彼女はほんの少し笑いながらそう言った。
「あ!はい!」
…あれ?山上町に住んでるって言ったっけ?
「私は奥山町です。同じ方向なので、一緒に帰りませんか?…よければ。」
「は、はい!よ、よければ!」
そうして、僕と彼女は歩き始めた。




