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第一章 ①
【第一章】
僕は走っていた。
「今日、雨なんて言ってたっけ。」
そう小さくぼやきながら、朝のテレビの天気予報を思い出していた。
予報を聞き逃したのか、それとも予報が外れたのか、そんなくだらないことを考えていた。
「はぁはぁ…あぁ、止みそうにないな。」
息も切れてきたところで、僕は走るのを諦めることにした。
少し首の伸びた薄いブルーのTシャツ、いつものベージュのチノパン、履き慣れたグレーのスニーカー、黒い古びたリュック。
身を纏うもの全てが雨でぐしょぐしょだ。
元の色が濃くなり、濡れたことをはっきりと主張している。