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第一章 ⑪
ブォ~…キィ~
そこへバスが到着した。
彼女はゆっくり立ち上がると
「ありがとうございました…タオルは洗ってお返しします。
それから、傘、どうぞ。」
「あ、いえ!大丈夫ですよ!」
「いえ。どうぞ。」
その力強い言葉に
「あ、…はい。」
僕はそう答えることしかできなかった。
彼女が去ったバス停に残った僕は、急に力が抜けてすぐに立ち上がることができずにいた。
気づいた時には雨は上がり、雨が残した水たちと彼女の傘の虹色のチャームを太陽がキラキラと光り照らしていた。