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第一章 ⑨
「この辺りの方ですか?」
そんな訳ない。
僕の他に同年代くらいの若者が住んでいるなんて聞いたこともない。
なんて分かりきった、馬鹿な質問をしてしまったんだろう。
自分のコミュ力の低さを反省していると
「その道をずっと上がった奥山町です。」
彼女が指差したその道は細い山道で、突き当りに1軒だけ家がある。
「あ…合田さん家。」
「はい…おじいさんが…亡くなって…」
そう答えた彼女はすこし俯いた。
そこで僕は気づく。
彼女の漆黒の闇のように黒い服が、喪服であることに。