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8話 セイレーン

 ハーラの街に着いてから翌朝、宿屋を出た二人は露店で買った朝飯を食べていた。パンに焼いた肉と野菜を挟んだシンプルな料理だったが、意外と美味しく、二人はすぐに食べ終えてしまった。


 そして二人は預けた武器を取りに、昨日の武器屋へと向かった。


「待ってたよ、お客さん。武器のメンテナンスなら終わってるよ」


 武器を受け取ったブレイズは鞘から大太刀を抜き、その刀身を眺めた。預ける前は欠けた部分があった大太刀だったが、今は見事に研がれており、濡れているかのような霞仕上げだった。


「良い仕事をしてくれたな。ありがとうな」


「いえいえ、こちらこそこんな業物を扱わせてもらって、職人冥利に尽きますよ」


 ブレイズは店主に礼を言うと、ヘルガとともに店を後にした。そして武器が戻った二人はクエストを受けて路銀を稼ぐために、ギルドへと向かった。


 ハーラは隣の国行きの船が出ているため、その船に乗るための路銀を稼ぐ必要があるのだ。船に乗るにはそこそこの額が必要なため、二人はこの街で足りない分を稼ぐつもりだった。


 ブレイズとヘルガがギルドに入ると、一斉に目線が向けられた。仮面を付けた大男が入って来たのだ。注目されて当たり前だろう。


 ブレイズは居心地の悪さを感じながら、依頼の張られた掲示板を吟味した。まとまった額の路銀が欲しいため、高難度のクエストを受けようとした。


 そしてブレイズは一つの依頼を手に取った。それはセイレーンの討伐の依頼だった。依頼書によると、近くの廃村にセイレーンが巣を作ったらしい。


 その廃村に新たな村を築こうとしているらしく、セイレーンの存在が邪魔なようだった。ブレイズは依頼書を受付に持って行き、依頼を受けた。


 そしてヘルガを連れて、件の廃村へと向かった。



          ※



 ブレイズとヘルガはハーラの街を出て、セイレーンに支配された廃村へと歩いて向かっていた。その道中、ヘルガはブレイズにセイレーンのことを質問した。


「ねぇブレイズ、セイレーンってどんな怪物なの?」


 ノルグの街から出たことのなかったヘルガはセイレーンという海沿いに現れる怪物のことをよく知らなかった。


「簡単に言えば、羽の生えた人魚だな」


「え、人魚なの? そんなの討伐しても大丈夫なの?」


「ああ、問題ない。見た目は美しいが所詮は怪物だ」


 人魚と聞いたヘルガは、そんな存在を討伐しても大丈夫か不安になった。しかしブレイズはセイレーンを怪物だと割り切っていた。


「セイレーンって何をする怪物なの?」


「唄を歌って漁師を誘い、海に引きずり込む。そして人間を食らうんだ」


 セイレーンはその美しい見た目と唄で、人間を惑わせて食らう危険な怪物なのだ。


「へぇー、そんな怪物がいるのね」


「唄には心を惑わす性質があるから、あまり唄を聞かないように注意しろよ」


「はーい」


 そんな話をしながら数時間歩くと、ようやく目的の廃村に到着した。そこはたくさんのセイレーンが飛び交っていた。


 セイレーンは二人を見つけると、牙をむき出しにして襲いかかって来た。


「よし、それじゃあ討伐開始だ!」


「うん!」


 ブレイズとヘルガはそれぞれ武器を抜き、襲いかかってくるセイレーンと対峙した。ブレイズは飛びかかってくるセイレーンを躱すと、大太刀をセイレーン目掛けて振り下ろした。


 軽い力で振り下ろされた大太刀だったが、それだけでセイレーンは真っ二つに両断された。これはブレイズの力だけでなく、大太刀の切れ味が上がっていたからこそ出来たことだった。


「あの武器屋の親父、良い仕事するぜ」


 いつもより切れ味の良い大太刀を振るい、ブレイズはセイレーンの数を減らしていった。一方でヘルガは身軽に跳ねながら、空中に飛び上がり槍でセイレーンの翼を突き、地上に落としていた。


 そしてヘルガは地面で這い回るセイレーンに槍を突き立て、トドメを差していった。二人ほどの実力があれば、セイレーンは何匹いようと相手にならなかった。


 そうして廃村に巣くうセイレーンを全て討伐し終えた頃には、日が落ちてきていた。


「よし、これで全部やったな」


 二人は返り血を拭い、セイレーンの巣を破壊した。そして今日はこの廃村で一夜を明かすことにした。


 二人はあまり壊れていない家を探して、その家で眠りに就いた。



          ※



 廃村で夜を明かしたブレイズとヘルガは、朝になるとハーラの街へと帰っていった。ギルドに到着した二人は討伐を終えたことを報告し、報酬を受け取った。


 高難度のクエストだったこともあり、そこそこの額の路銀を稼ぐことが出来た。しかし船に乗るにはまだまだ路銀が足りなかった。


 そのため二人は高難度のクエストをいくつも受けた。急に街に現れ、高難度のクエストをたくさんこなしていく二人を怪しむ人もいたが、仮面のおかげでブレイズの正体がバレることはなかった。


 そしてハーラに滞在して一週間が経った。そこそこの路銀が集まったため、ブレイズとヘルガは船に乗るために交渉をしに行った。


 隣の国行きの商船に乗ろうとした二人だったが、そこで一つの問題にぶつかった。それは怪物が現れて、船を出せないと言うのだ。


「どんな怪物が出たんだ?」


「それがな、クラーケンが出たんだよ」


 クラーケン、それは巨大な蛸の怪物だ。ハーラの近海に現れ、次々と船を襲っているらしい。そのためクラーケンがいなくなるまで船が出せないのだ。


「近々討伐隊が編成されるらしいから、それまで船は出せないよ」


 そしてブレイズとヘルガが足止めを食らって三日が経った。するとギルドに緊急クエストが張り出された。


 ハーラの街長が依頼主で、クラーケンを討伐するために手練れのモンスタースレイヤーを求めていた。街長直々の依頼ということもあり、かなりの額の報酬が支払われるようだった。


 報酬を見たブレイズとヘルガは、クラーケンの討伐隊に参加することにした。またこの緊急クエストは他に、腕に自信のある傭兵や魔術師がたくさん参加していた。


 そしてブレイズたち討伐隊を乗せた船は、クラーケンのいる近海を目指して出航した。


読んでいただきありがとうございます。

次回更新は6月12日の0時です。

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