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30話 不死身の悪魔

 アルフレッド第三王子は臆病な性格だった。昔に乗馬をしていたときに落馬してから、色々なものに怯えるようになった。


 そして政争で自分の命が狙われると知ったときには、震えるほど怖がっていた。


 ネクス王国の王家は跡継ぎが多く、皆野心的だった。そのため兄弟は王になるために、それぞれが命を狙っていた。


 血みどろの政争が繰り広げられる中、第三王子で継承権が上のアルフレッドは王の座に興味がなかった。


 しかしアルフレッドは死ぬのが怖かった。そのため命を狙われないように息を潜めて、目立たないように暮らしていた。


 そんな中、兄である第二王子が毒殺されたのをきっかけにアルフレッドは変わった。隠れてもいずれ殺されてしまうと思ったのだ。


 死ぬのを恐れたアルフレッドは力を求めるようになった。死なないように、他を圧倒する力を求めた。


 そしてアルフレッドは魔術師を国内外から集めて、黒魔術に傾倒するようになった。王家の書庫の禁書の棚で、他者の命を上乗せするという魔法を見つけたのだ。


 その魔法を魔術師に秘密裏に研究させた。それはもちろん禁忌だったが、アルフレッドは倫理観などを無視した。


 魔法の研究には犠牲となる命が必要だった。それは人攫いに集めさせた。街中で行方不明が多発したのはこのためだった。


 そしてついに黒魔術の研究が終わり、実践の時が来た。王都のスラムを訪れたアルフレッドは魔方陣の上に立ち、黒魔術を使った。


 恐怖から命乞いをする民衆の声を無視して、黒魔術は行われた。それによりアルフレッドは民衆の命を、自身の命に上乗せすることが出来た。


 これでアルフレッドは不死身の体を手に入れたのだった。



          ※



 王城でアルフレッドを一刀両断したブレイズ。しかし両断したはずの体がくっついたアルフレッドを見て、ブレイズは思わず呟いた。


「おいおい、不死身かよ……」


「そうだ! 私は不死身だ! 死を超越したのだ!」


 復活したアルフレッドは高らかに笑った。死を克服したアルフレッドに怖いものなどなかった。


 ブレイズは大太刀を構え直した。そして周りを見た。周りにはアルフレッドの姿に怯えた兵士や大臣などがいた。


「ヘルガ、皆を避難させてくれ。俺がこいつを抑える」


「わかったわ」


 ブレイズはヘルガに指示を出した。ヘルガは大臣の腕を引っ張って立たせて、この場から避難させようとした。


「この姿を見られたのだ、一人として逃がす訳がないだろう!」


 アルフレッドは目撃者を皆殺しにするつもりだった。アルフレッドは逃げようとする大臣に向かって飛びかかった。


「殺させねぇよ!」


 ブレイズは間に入り、アルフレッドの攻撃を止めた。


「それなら、まずは貴様からだ!」


 アルフレッドはブレイズに標的を定めた。その間にヘルガは大臣や兵士を逃がした。


 アルフレッドは鋭く硬い爪を振るった。その攻撃は人外の膂力も相まって、剣のように鋭い一撃だった。


 ブレイズはそれを大太刀で受け止めた。攻撃は重く、ブレイズは壁まで吹き飛ばされた。ブレイズはすぐに立ち上がると、アルフレッドに斬りかかった。


 ブレイズの一撃は素早く正確だった。アルフレッドは体を切り刻まれていった。しかしアルフレッドはダメージを気にせずに突っ込んで来た。


 腕を切り離そうと、体を両断しようと効いている様子はなかった。ダメージはブレイズにのみ溜まっていた。


 ブレイズはアルフレッドの攻撃を何とか捌き続けた。そしてアルフレッドの体を刻み続けた。しかしアルフレッドは首を刎ねられても死ななかった。


 並の怪物よりも手強かった。


 そこに避難を終わらせたヘルガが合流して、戦いに加わった。二人はアルフレッドに攻撃を加え続けた。


「いくら切ろうが無駄だ! 私は死なない!」


 首を刎ね、体を両断し、心臓を貫かれてもアルフレッドは止まらなかった。


 しかしブレイズとヘルガは攻撃を止めなかった。二人はあることに気付いていたのだ。アルフレッドは致命傷になり得る一撃を食らうたびに、回復が遅くなり、膂力も下がっていたのだ。


「どうやら、完全に不死身って訳でもなさそうだな」


 ブレイズとヘルガは気力を尽くし、アルフレッドに攻撃を与え続けた。


 アルフレッドも自身の力が弱まっていることに気付き始めたのか、徐々に焦りの表情を浮かべ始めた。


 上乗せしてきた命が一撃ごとに消費されたからだ。命の残基が減るにつれて、アルフレッドの姿も人間の姿に戻っていった。


 そしてアルフレッドの残りの命が一つになった。アルフレッドは死の恐怖を思い出した。


「す、済まなかった! 頼む! 殺さないでくれ!」


 アルフレッドは涙を浮かべながら命乞いをした。しかしブレイズとヘルガに慈悲はなかった。


 ブレイズは限界の体に鞭を打ち、気力を振り絞ると、大太刀を上段に構えた。アルフレッドはそれを見て、悲鳴を上げた。


 そしてブレイズはアルフレッドに大太刀の一撃を加えた。体を両断されたアルフレッドは今度こそ動かなくなった。


 戦闘が終わり、大きく息をついたブレイズとヘルガ。そしてブレイズはふと冷静になった。勢いでアルフレッドにトドメを差したが、王子殺しはマズいのではと思ったのだ。

読んでいただきありがとうございます。

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次回更新は8月17日の0時です。

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