29話 王子の正体
ブレイズに黒魔術師だと言われた第三王子は驚愕の表情を浮かべた。しかしすぐにブレイズに対して怒り始めた。
「ふ、不敬であるぞっ!」
第三王子は剣を抜き、ブレイズに向けた。ブレイズはじっと第三王子を見つめた。その目に第三王子はたじろいだ。
すると騒ぎを聞きつけた城の兵士や大臣がぞろぞろと集まってきた。そして何事かと驚いていた。
「アルフレッド様! どうなさったのですか!」
第三王子ことアルフレッドは、大臣に剣を抜いている理由を聞かれた。
「この無礼者が、私を黒魔術師だと言うのだ!」
「そんな……っ! ブレイズ殿! どういうことですか!」
大臣はブレイズを問いただした。ブレイズは周りに集まった者たちに説明を始めた。
「昨日取り逃がした黒魔術師の手を掴んだとき、第三王子と同じ香りがしたんだ。それにそのとき黒魔術師の腕を力一杯掴んだんだ。だから王子が包帯で隠してる腕に、俺の手の跡があるはずだ」
ブレイズは自信満々な様子でアルフレッドを問い詰めた。
「黒魔術師じゃないと証明したいなら、その包帯を外せ。きっと残ってるはずだ。昨日俺が付けた手形がはっきりとな!」
大臣はブレイズの言葉を信じ、アルフレッドの無実を証明するために、アルフレッドに包帯を取るように言った。
「アルフレッド様、どうか包帯を外してください。無実を証明するのです!」
しかしアルフレッドは包帯を外すのをためらった。その様子に城の兵士たちの疑惑の目が強まった。
「アルフレッド様、失礼します」
いつまでも包帯を外そうとしないアルフレッドに、大臣は痺れを切らして近づいていった。そして大臣はアルフレッドの手を取ると、無理矢理包帯を外した。
するとそこには大きな手形がくっきりと残っていた。それは間違いなく昨日ブレイズが残したものだった。
「アルフレッド様、これはどういうことですか?」
大臣はアルフレッドに疑惑の目を向けた。
「くっ……」
アルフレッドは言葉に詰まっていた。城の兵士はアルフレッドの周りを囲み始めていた。アルフレッドはもう言い逃れが出来ないと観念したのか、大きな溜息を付いた。
そしてアルフレッドは突如呪文を唱え始めた。
「アルフレッド様、何を……」
「大臣、王子から離れろ!」
ブレイズはアルフレッドと大臣に一気に近づいた。すると呪文を唱えたアルフレッドを中心に衝撃波が発生した。ブレイズは衝撃波で吹き飛ばされた大臣を受け止めた。
「大臣、大丈夫か?」
「は、はい。何とか……」
ブレイズは大臣の安否を確かめると、アルフレッドの方を見た。するとそこには禍々しい姿となったアルフレッドが立っていた。
アルフレッドの体には赤黒い紋様が走っており、背中には翼が、頭には角が生えていた。腕も鋭い爪が生えてきており、まるで悪魔のような見た目をしていた。
その姿を見た大臣や兵士は恐れ戦いていた。
一方でヘルガは吹き飛ばされたブレイズに駆け寄っていた。
「ブレイズ、大丈夫!?」
「あぁ、大丈夫だ」
ブレイズは大太刀を抜くとそれをアルフレッドに向けた。ヘルガも槍を構えて臨戦態勢を取った。
「バレてしまったなら、もうしょうがないな……。皆殺しだ」
悪魔のような姿になったアルフレッドはそう呟き、周りを殺意を持った目で睨んだ。その視線に兵士たちは震えた。
「まずはお前からだ!」
そう言うとアルフレッドはブレイズに一気に肉迫して剣を振るった。尋常ではない早さで踏み込んで来るアルフレッドに、ブレイズは大太刀で対応した。
アルフレッドの一撃を大太刀で受け止めたブレイズ。ブレイズはその一撃の重さに驚いていた。ただの人間の膂力を遙かに超える一撃だったのだ。
ブレイズはアルフレッドの攻撃を何とか弾くと、一旦距離を取った。
「ヘルガ、まともに攻撃を受けようとするなよ。あいつただの人間じゃないぞ」
「わかったわ」
ブレイズはヘルガに忠告をすると、今度は逆にブレイズからアルフレッドに斬りかかった。ブレイズは怪物を相手にするときのように全力で大太刀を振るった。
アルフレッドはそれを難なく受けて見せた。
(クソっ! 反応も人間のレベルを超えてるな)
ブレイズはなるべく自分に攻撃を集中させた。他の者たちではアルフレッドの一撃を受けることが出来ないと思ったからだ。
アルフレッドは稽古を受けていたこともあり、戦闘の心得があった。それに加え、強化された感覚と膂力があった。そのためブレイズとヘルガは苦戦した。
しかし戦闘経験を積んでいたブレイズとヘルガの方がアルフレッドより一枚上手だった。ヘルガが槍でアルフレッドの足を貫いた。そして動きの止まったアルフレッドの剣を弾き、ブレイズは胴体に袈裟斬りを与えた。
その一撃でアルフレッドの体は両断された。ブレイズとヘルガは膝を付いて肩で息をしていた。
「お二人とも! まだです!」
すると大臣がブレイズとヘルガに大声で忠告した。ブレイズとヘルガがアルフレッドの方を見ると、そこには両断したはずの体がくっついたアルフレッドが立っていた。
「おいおい、不死身かよ……」
アルフレッドは邪悪な笑みを浮かべていた。
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