27話 黒魔術師の調査
城の応接間を出たブレイズとヘルガ。その後二人は城の兵士に黒魔術師のことを聞いた。
「すまない黒魔術師のことで聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「はい、大臣から話は伺っております。何なりと聞いてください」
兵士たちはすでに大臣からの通達を聞いているようで、黒魔術師のことを二人に教えてくれた。
「黒魔術師の痕跡が見つかったと聞いたんだが、それはどこで見つかったんだ?」
「痕跡は城下町の西区の端の民家で見つかりました。現在その建物は保存してあるので、調査をするなら、そこからがいいかと思います」
「ありがとう、助かるよ」
黒魔術師の痕跡が見つかった民家は兵士たちにより保存されているらしかった。そのため二人はまずは現場を見に行くことにした。
王城を出た二人は話に出ていた城下町の西区の端に向かった。その周辺に着くと、兵士が立っている家があった。
「すまない、大臣の使いで黒魔術師の調査に来たんだが、通してもらえるか?」
「大臣の使いですか。はい、どうぞ入ってください」
二人は大臣の使いで来たと兵士に言った。するとすんなりと通してもらえた。民家の中は薄暗く埃っぽかった。
そして黒魔術師は慌てて出て行ったのか、部屋の中には物が散乱していた。また部屋の至るところに血の跡があり、まともな雰囲気ではなかった。
さらに黒魔術師のものと思われる道具などもかなり残っていた。実験道具や拘束具などがあり、いかにも怪しげなことをやっていたという感じだった。
部屋に明かりを付けると、部屋の壁や床には魔方陣や呪文がびっしりと書いてあった。ブレイズはそれを一つ一つ観察した。
「ブレイズは魔法がわかるの?」
「いや、ほとんどわからない」
ヘルガは魔方陣を観察するブレイズに質問をした。ブレイズは素人に毛の生えた程度しか魔法についてはわからなかった。
「クリスタがいれば何をしようとしたかわかるんだが……」
ブレイズは自分の魔法への無知さを愚痴った。ブレイズとヘルガは魔方陣以外に何か手がかりになる物がないかを調べた。
「ねぇ、この椅子、何か高そうね」
するとヘルガが一つの椅子に目を付けた。それは一脚だけあった高そうな椅子だった。ボロい民家に一つだけある高そうな椅子は、他の物と比べて浮いていた。
しかしそれ以外に特に手がかりになりそうなものは見つからなかった。そのため二人は民家を後にした。
そして次に黒魔術師に攫われたという人たちを調べることにした。二人は一旦ギルドに向かい、行方不明者の捜索の依頼が出ていないかを確かめた。
受付嬢にその依頼が出ていないかを聞くと、ここ一ヶ月だけでも十件もの依頼が出ていた。二人はその依頼を出した人たちに聞き込みを行った。
話を聞くと、多種多様な人が攫われているようだった。老人から若者、男女や年齢に関係なく攫われているようだった。
ただ決まって皆、夜に攫われているようだった。そして二人は何人かから話を聞いて、一つの共通点を見つけた。
それは酒場で飲んでいたのを最後に、姿を見なくなったということだ。
「最後の目撃は酒場が多いようだな」
「やっぱり酔ってる人の方が攫いやすいのかしら」
「そうかもな」
聞き込みを終えた二人は作戦会議を開いた。
「攫われる人に法則性はなく、誰でも良いみたいだな」
「そうね、これじゃあ次の被害者を特定するのは無理そうね」
「さて、どうするか……」
ブレイズとヘルガは行き詰まっていた。そんなときヘルガが思い切った作戦を提案した。
「ねぇ、私が囮になるっていうのはどう?」
「危険過ぎないか? 囮なら俺がなるぞ」
「ブレイズを見て攫おうとする人はいないわ。それなら可憐な乙女の私の方が適任だと思うわ」
ブレイズは囮に自分がなると言ったが、ヘルガはそれを却下した。なぜならブレイズほどの大男を攫おうとする人はいないからだ。
「他に方法もなさそうだし、それで行くか……」
「私に任せて頂戴!」
こうして二人は囮作戦をすることにした。二人は町外れの酒場に行った。そこは客層が悪い酒場だった。喧嘩する奴やコソコソと怪しげな密談をする者などがいた。
そこでブレイズとヘルガは酒を飲み、暗くなるまで時間を潰した。ブレイズは酒を飲みながら、客の様子をつぶさに観察した。客に怪しい奴がいないかを見ているのだ。
そして良い時間になったところで、ヘルガが酔った振りをして一人で店を出た。ヘルガは標的になりやすいように、あえて暗く人通りのない道を歩いた。
するとヘルガの後ろを歩く男がいた。男は足音を立てずに素早くヘルガに近づいた。そしてヘルガに杖をかざした。男は失神の呪文を唱えてヘルガを気絶させようとした。
その刹那、横の路地からブレイズが現れた。そして杖を持つ男の腕を掴んで捻り上げた。
「ぐわぁっ!」
男はそのまま壁に押しつけられた。そしてブレイズが尋問を始めた。
「捕まえたぞ、黒魔術師」
「ち、違う! 俺は黒魔術師じゃねぇ! 俺はただ頼まれただけだ!」
「頼まれた? 誰にだ?」
「知らねぇ奴だ! 人を連れて行けば金が貰えるんだ!」
男は自分が黒魔術師ではなく、ただの人攫いだと喚いた。
「よし、ならそいつらのいる場所に案内しろ。そうすれば命までは奪わないでやろう」
「わ、わかった」
ブレイズは男の腕を縄で縛り、逃げられないようにすると、黒魔術師の元へと案内をさせた。二人は人攫いの案内のもと、暗闇の中へと歩いて行った。
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