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25話 霊廟の悪霊

 ブレイズとヘルガが王都のギルドで依頼をこなすようになって数週間が経っていた。ある日いつものようにギルドに行くと、二人は受付嬢に声を掛けられた。


「ブレイズさん、ヘルガさん! 少しいいですか? ギルドマスターからお二人にお話があるそうです」


(ついに来たか!)


 ブレイズは待ちに待ったものが来たと内心喜んだ。一方でヘルガはなぜギルドマスターという偉い人に呼び出されたのかわかっていなかった。


 二人は受付嬢の案内でギルドの奥にある応接室に通された。


「ただいまギルドマスターをお呼びして参りますので、少々お待ちください」


 そう言うと受付嬢は応接室から出て行った。


「ねぇブレイズ、私たち何かしちゃったのかな?」


「大丈夫だ、ヘルガ。たぶん俺たちの実力がようやく評価されるときが来たんだ」


「そうだといいなぁ」


 ヘルガは少し不安そうだった。対照的にブレイズは自信に溢れていた。


 そして少し経つと受付嬢がギルドマスターを連れて戻って来た。


「二人とだけ話したい。外してくれ」


「はい、わかりました」


 ギルドマスターは受付嬢に退室するように促した。受付嬢は飲み物を置くと応接室を退室した。そして応接室はブレイズとヘルガ、ギルドマスターの三人だけになった。


「初めまして、私がこの王都のギルドマスターだ。よろしく頼む」


「モンスタースレイヤーのブレイズです。こっちはヘルガ。よろしくお願いします」


 ギルドマスターは礼儀がしっかりとしているブレイズとヘルガに驚いた。大抵傭兵やモンスタースレイヤー、冒険者は粗野な者が多く、礼儀や敬語を使えないものが多いからだ。


(この二人になら任せられそうだな)


 ギルドマスターはこの様子なら王城からの依頼を任せても大丈夫だと思った。


「君たちを呼び出したの、とある依頼を受けて欲しいからだ」


「どこからの依頼ですか?」


「王城からの依頼だ」


「え!? 王城から!?」


 依頼主を聞いてヘルガは驚いていた。ブレイズは内心笑顔を浮かべていた。しかしそれを表には出さず、冷静に対応した。


「王城からですか……。なぜ自分たちに依頼を?」


「それは私が君たちを推薦したからだ。君たちのこれまでの功績を評価して、君たちなら信頼に足ると思ったのだ」


「ありがたいお言葉です」


 自分たちが選ばれた理由を聞いたブレイズは、これまでの行動が無駄ではなかったと喜んでいた。


「それでは依頼の詳細を聞かせていただけないでしょうか?」


「わかった。ただしこれから話すことは他言無用で頼むぞ」


 ギルドマスターは二人に念を押してから話し始めた。


「実は王城の裏手にある王家の霊廟に悪霊が出たのだ。その討伐を君たちに頼みたい」


「なるほど、霊廟に悪霊ですか。それなら城の兵士などが適任なのではないですか?」


「ごもっともな指摘だ。だが城の者では手も足も出なかったのだ」


「それほどまでに強力な悪霊なのですか」


「そうだ。城の猛者でも相手にならなかったと聞く」


 ブレイズは手強そうな相手と聞いて、俄然やる気が出た。なぜならそれを倒せれば自分たちを雇いたくなるだろうと思ったからだ。


「依頼を受けるのは良いのですが、一つ条件があります。よろしいですか?」


「聞こう。話してくれ」


 ブレイズは依頼を受ける上で一つの条件を提示した。


「この依頼を達成できた暁には、私たちを王宮で雇って貰えるよう口利きして欲しいのです」


「ほう、意外と野心的だったのだな。ふむ、わかった。何とか取り持ってみよう」


「ありがとうございます」


 ギルドマスターはブレイズからの予想外な頼みに驚いた。そしてギルドマスターは何とか自分の人脈を活かして、交渉の場を作ると約束してくれた。


「それでは、悪霊の討伐を頼んだぞ。良い報せを期待している」


 交渉が成立したブレイズとヘルガは応接室を後にした。そして悪霊を倒すための準備を始めた。



          ※



 ギルドマスターから王城の依頼を紹介されたブレイズとヘルガ。二人はまず悪霊に効く武器を用意することにした。


 悪霊やゴーストには通常の武器の攻撃が効きにくいため、エンチャントが必要なのだ。二人はそのために教会に向かった。


 教会に入った二人は、そこの神父に武器へのエンチャントを依頼した。


「この大太刀と槍にゴースト退治用の祝福を掛けて欲しい。どれくらいで出来る?」


「武器への祝福ですね。それでしたら半日ほど待って頂ければ出来ますよ。他に入り用な物はありますか?」


「そうだな。あとは聖水の瓶をくれ」


「承知しました。それではしばしお待ちください」


 神父に武器へのエンチャントと聖水の用意を依頼したブレイズとヘルガは一度宿に戻り、霊廟に行く準備をした。


 そして半日が経ち武器を受け取りに教会に戻った。そこで神父からエンチャントされた武器を受け取った。


 武器はうっすらと輝いており、しっかりと聖なる祝福がされたことが確認出来た。これで悪霊を祓うことが出来るようになった。


「ありがとう、神父様」


「いえいえ。ゴースト退治が上手くいくことを祈っています」


 ブレイズは神父に礼を言うと、エンチャントと聖水代を払った。そして教会を後にすると、ギルドへと向かった。


 ギルドには王城の若い兵士が一人いた。この兵士がブレイズとヘルガを霊廟まで案内するのだ。若い兵士は憂鬱そうな顔をしていた。多数の死傷者が出た霊廟に行きたくないのだ。


 しかし他の兵士も同じく行きたがらず、結局一番下っ端のこの兵士が二人を案内することになったのだ。兵士は恐怖から少し震えていた。


「ねぇ、大丈夫?」


「は、はい」


 ヘルガは怯えている兵士に声を掛けた。兵士は返事をするのがやっとだった。


 そしてブレイズとヘルガ、若い兵士の三人は霊廟の入り口までやって来た。霊廟の入り口が近づくとブレイズとヘルガは眉間に皺を寄せた。入り口ですでに死臭と邪悪な気配がしたからだ。


 また入り口にはグールが群れを成していた。霊廟内で死んだ兵士たちの屍肉を貪りに来たのだ。ブレイズとヘルガは兵士を後ろに下がらせると、武器を構えた。


 そして二人は入り口のグールの群れに突っ込んだ。グールは鋭い爪で二人を引き裂こうとしたが、所詮はグール。群れていようが二人の相手にはならなかった。


 グールを倒した二人は松明を用意すると、霊廟の中に入ろうとした。


「日没までに戻らなかったら、死んだと思ってくれ」


「は、はい。わかりましたっ」


 ブレイズは若い兵士にそう言い残し、ヘルガと霊廟の中へと入って行った。


 霊廟の中は昼間だというのに薄暗かった。光があまり入らないためだ。二人は壁に掛けられた松明に火を灯しながら進んだ。


 霊廟が明かりで照らされると、中の凄惨さが際立った。神聖なはずのそこは、今は兵士の死体や血で汚れていた。またそれらがグールに食い荒らされて、さらに酷いことになっていた。


 ブレイズとヘルガはグールを処理しながら、霊廟の奥へと進んだ。霊廟の奥に進むにつれて寒さが増してきた。おそらくは最奥にいる悪霊のせいだろう。


 そして二人は最奥と思われる場所に到達した。そこには兵士の死体の山と、その上に鎮座する何者かがいた。


 二人はそれがこの霊廟に巣くう悪霊だと理解した。二人は武器を構えて悪霊に近づいた。悪霊は二人を認識すると、甲高い叫び声を上げた。それが戦闘開始の合図になった。


 ブレイズは先手を取るために、叫び声に怯まずに一気に悪霊に近づき斬りかかった。しかしブレイズの大太刀は空を切った。


 悪霊は一瞬で姿を消してしまったのだ。ブレイズは辺りを警戒した。


「ブレイズ! 後ろ!」


 ヘルガの大声を聞きブレイズが後ろを振り向くと、悪霊が剣を振り上げていた。ブレイズは間一髪で悪霊の攻撃を防いだ。


 そしてヘルガが悪霊を槍で貫こうとした。しかしまた悪霊は一瞬で姿を消してしまった。


「クソっ! こいつ瞬間移動が出来るのか!」


 ブレイズは何故王城の兵士たちがこれほどまでにやられたのかを理解した。この瞬間移動に翻弄されて、手も足も出なかったのだ。


 ブレイズとヘルガは突然現れる悪霊に攻撃を当てようとしたが、全てを躱されてしまっていた。


(厄介だな……、これじゃあジリ貧だ)


 二人は突然現れる悪霊に意識を集中しており、精神と体力を消耗してきていた。このまま持久戦に持ち込まれれば、悪霊に分があるだろう。


「おい、ヘルガ! 俺と背中合わせになれ!」


「わかったわ!」


 ブレイズは死角から現れる悪霊対策にヘルガと背中合わせになった。これで死角を減らして対応しようとしたのだ。


 二人が背中合わせになると、悪霊は姿を現さなくなった。二人は油断せず、悪霊が出てくるのを待った。


 すると悪霊は二人のちょうど死角となる真上から現れた。しかしブレイズはそれを待っていた。悪霊の気配を感じ取ったブレイズは、真上に向けて大太刀を振るった。


 振るわれた大太刀は悪霊を切り裂いた。両断された悪霊はそれでもまだ動こうとしていた。しかし悪霊はすでに実体を保てないほどのダメージを負っていた。


 霊廟の床に倒れ伏してなお動こうとする悪霊に、ブレイズは教会で手に入れた聖水を掛けた。するとそれがトドメとなり、悪霊は浄化されて祓われた。


 ブレイズとヘルガは大きく息を吐き、緊張を解いた。そして松明を持ち、霊廟の入り口へと戻った。



          ※



 ブレイズとヘルガが霊廟から出ると、日が傾き始めていた。霊廟の入り口付近で待っていた若い兵士は、二人が戻って来たのを見て驚いた。


「無事だったんですね! それで悪霊はどうなりました?」


「なんとか祓ったぞ」


「ありがとうございます! これで仲間の兵士を弔うことが出来ます!」


 報告を聞いた兵士は嬉しそうにしていた。そしてブレイズとヘルガ、兵士の三人は王城に戻って討伐完了の報告をした。


 すると王城からたくさんの兵士が霊廟に派遣された。霊廟の中で死んだ仲間の死体を回収し、霊廟の中を掃除するためだ。


 こうしてブレイズとヘルガは王城からの依頼を無事に解決した。

読んでいただきありがとうございます。

次回更新は7月13日の0時です。

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