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24話 王都コヴィル

 セシリアとギルバートを始めとしたエルフを人攫いから助けたブレイズとヘルガ。二人はそのままエルフの一行を護衛しながら、王都を目指していた。


 護衛をしながらと言っても、その後は特に大きな戦闘は起きず、無事に王都の前まで来ることが出来た。


 しかし護衛がいるといないとでは旅の安心感が違った。


「二人が一緒にいてくれたおかげで、安心して旅が出来ました。本当に感謝しています」


 セシリアはブレイズとヘルガにお礼を言った。


「何、大したことはしてないさ」


 ブレイズは謙遜して言葉を返した。


 そしてブレイズたち一行は王都に入るための検問の行列に並んだ。


「ずいぶんと長い列だな。これは王都に入るまで時間が掛かるな」


「何でこんなに並んでるのかしら?」


 ヘルガはここまでの行列が出来ているのを不思議に思った。それはブレイズも同じだった。そのためブレイズは前に並んでいる行商人に、買い物をするついでに話を聞いた。


「なぁ、何でこんなに並んでるんだ?」


「今はとても厳しく検問を敷いているのですよ。そのため時間が掛かっているらしいんです」


 行商人は買い物をしてくれたブレイズの質問に答えてくれた。


「そんな厳しくする事件でもあったのか?」


「何でも、違法な魔術を使う黒魔術師が王都に入り込もうとしているらしいんです。近くの街で目撃されたので、検問を強化しているんだとか」


「そうなのか、教えてくれてありがとう」


「いえいえ、こちらも話せてよかったです」


 行商人の話によると、この検問は黒魔術師を王都に入れないためのものらしかった。


 黒魔術師、それは危険で違法な魔術を使う連中の総称だ。倫理観や慈悲の心がない黒魔術師は、たびたび危険な魔法を使い、市民を巻き込んで事件を起こしている。


 この検問はそんな危険分子を弾くためのもののようだ。


 そしてしばらく待つと、列が進み、ブレイズたちの番になった。ブレイズたちは荷物を開き、中身を兵士に見せた。


 ヘルガやセシリアたちはすんなりと検問に通った。しかしブレイズの荷物を見た兵士はブレイズのことを止めた。


「おい、貴様。この仮面はなんだ? まさか黒魔術師の仲間じゃないだろうな?」


「何のことだ?」


 兵士はブレイズの荷物から仮面を発見した。この仮面は以前にブレイズが顔を隠すために付けていたものだった。


「黒魔術師はその顔を隠すためにマスクや仮面を付けている。貴様、黒魔術師の仲間か?」


「違う、俺は黒魔術師の仲間じゃない。この人たちが証明してくれる」


「この男の言うことは本当か?」


 兵士は先に検問を通ったヘルガやセシリアに話を聞いた。


「ブレイズは黒魔術師の仲間じゃないわ。あたしはずっと一緒に旅をしてきたのよ。ブレイズのことはよく知ってるわ」


 ヘルガはブレイズの無実を主張した。


「その方は黒魔術師ではございません。私たちが保証します」


 セシリアもブレイズの身元を保証してくれた。貴族であるセシリアたちの言葉で、ブレイズへの疑いは晴れた。


「勘違いして悪かった。通っていいぞ」


 兵士はブレイズに荷物を返した。そしてブレイズも無事に王都に入ることが出来た。


「お助けいただき、感謝します」


「ふふ、困ったときはお互い様です」


 王都に入ったブレイズとヘルガ、セシリアたちは門をくぐるとそこでお別れとなった。


「この度はお助けいただきありがとうございました。このご恩は忘れません」


「こちらこそ、ありがとうございました」


「機会があれば、またお会いしましょう。それではご機嫌よう」


 別れの挨拶を交わすと、それぞれの目的地に向かって歩き出した。


 セシリアたちと別れたブレイズとヘルガは、王都で過ごすための宿を探しに行った。王都にはほとんど住むことになるため、なるべく良い宿に泊まりたかった。


 王都は広く、人で溢れ、活気に満ちていた。そのため宿屋もたくさんあった。そして二人の希望に合う、少しグレードの高い宿もすぐに見つかった。


「二部屋借りたい。少なくとも一ヶ月は借りたいんだが、大丈夫か?」


「はい大丈夫ですよ。代金は前払いになりますがよろしいですか?」


「あぁ、これで頼む」


 ブレイズはこれまでに稼いだ路銀で宿代を払った。そして部屋を取ると二人はそこに荷物を置いて、さっそくギルドに向かった。


 ギルドに入った二人は依頼の貼られた掲示板の前に行った。そこで依頼を吟味した。ブレイズは自分たちの存在をアピールするために、高難度の依頼を受けようと考えた。


 二人は話し合い自分たちに合う依頼を見つけた。そしてその依頼を受付カウンターに持って行った。


「あのもしかして、モンスタースレイヤーのブレイズさんとヘルガさんですか?」


 受付嬢に依頼書を見せて手続きをしていると、受付嬢が二人に話しかけてきた。


「そうだ」


 ブレイズは受付嬢の質問に答えた。すると受付嬢は驚いたような顔をした。


「お二人のお噂は聞いていますよ! 各地で色々な怪物を倒して功績を挙げてるんですよね!」


 受付嬢はブレイズとヘルガが本人だとわかると興奮していた。


「ぜひ今度、お二人のお話を聞かせてくださいませんか?」


「いいわよ!」


「ありがとうございます! 私、ギルドに来る人のお話を聞くのが大好きなんです!」


 ブレイズとヘルガの噂はどうやら王都まで轟いているようだった。受付嬢との会話を聞いていたのか、ギルド内にいた傭兵などもブレイズとヘルガの存在に気付いたようだった。


 そして依頼の受付が終わったブレイズとヘルガの周りには人だかりが出来ていた。


「あんたらがあの有名なモンスタースレイヤーなのか!」


「『氷霜の魔女』を捕らえたって本当か?」


「あんたらのパーティーに入れてくれないか?」


 二人の周りには、怪物討伐の話を聞こうとする者や仲間になりたい者など、色々な人物が集まった。


「また今度、ゆっくり聞かせてやるよ」


 そう言うとブレイズとヘルガは、群がってくる人をあしらって、ギルドを後にした。


 ブレイズとヘルガは自分たちの名が予想以上に広まっていることに驚いていた。


「これなら王宮から声がかかるのも時間の問題だな」


「そうね!」


 そして二人は王都のギルドで依頼を受け続けた。自分たちの名がさらに広まるように。


 そんな生活を二人は二週間ほど続けた。



          ※



 ネクス王国の王都、そこにある王城の一室。そこで大臣の一人が部屋の中をうろうろと歩きながら考え事をしていた。


 大臣は眉間に皺を寄せ、難しそうな顔をしていた。


「いったいどうすれば良いのだ……」


 大臣はあることに困っていた。王家の霊廟に悪霊が住み着いてしまったのだ。大臣はその解決を王に命じられていた。


 王に命じられて一週間が経っていた。しかし問題は解決するどころか悪化の一途を辿っていた。


 大臣はこれまでに何度も城の兵士に討伐を命じてきた。しかし何度兵士を送っても、失敗して帰ってくるばかりだった。


 兵士が帰ってくるのなら、まだマシな方だった。何度かは兵士が全滅して帰ってこなかったこともあった。


 このため兵士たちは霊廟に行くのを拒むようになっていた。みすみす死地に送られるのは嫌なのだ。兵士たちの士気は下がりに下がっていた。


 この現状を打破するために大臣は、腕のいい傭兵などに討伐を頼むことを考えた。しかし神聖な霊廟に信頼できない者を入れるわけにいかない。


 大臣は傭兵などに伝手がなかった。そのため大臣は王都のギルドマスターに相談を持ちかけた。ギルドマスターなら信頼に足る人物を知っていると思ったのだ。


 大臣は城の一室にギルドマスターを呼び出した。


「大臣よ、急に呼び出すとはどうしたのです? 何か困り事ですか?」


「そうなのだ、マスターよ。実は王家の霊廟に悪霊が出たのだ!」


 大臣はギルドマスターに事情を説明した。城の兵士では相手にならないこと、腕の良い傭兵を探していることを聞いたギルドマスター。


 するとギルドマスターはある二人を大臣に推薦した。それはブレイズとヘルガだった。


「ブレイズとヘルガというモンスタースレイヤーはどうでしょう? 実力は保証できます」


「その二人は信頼できる人物なのか?」


「はい、この二人はかなりの功績を挙げております。伯爵領の街での怪物討伐、お尋ねの者の『氷霜の魔女』の捕縛、そして関所の開放など。ギルドの者の話だと、正義感も強いようです」


 ブレイズとヘルガの噂はギルドマスターの耳にも届いていた。そのためギルドマスターはこの二人なら信頼できると太鼓判を押した。


「そうか、ならその二人に頼もう! マスター、その二人を呼び出してくれるか?」


「承知しました」



          ※



 王家の霊廟、普段ならそこは神聖な空気で満ちているはずだった。しかし今は死臭に溢れ、見る影もなかった。


 霊廟には悪霊に戦いを挑んだ兵士たちの死体が転がっており、その死体を食らうためにグールが徘徊していた。


 血と死体に満ちた暗がりの最奥、そこには一体の悪霊が次の獲物を待って鎮座していた。

読んでいただきありがとうございます。

次回更新は7月6日の0時です。

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