23話 エルフ
聖都オルデアを後にし、ミモザと別れたブレイズとヘルガ。オルデアを離れてすでに数日が経っていた。
ミモザのいない二人での旅は久々だったため、二人は少し物足りなさ、寂しさを感じていた。しかしそれにも数日で慣れて、また二人での旅を楽しんでいた。
二人は王都までの道を歩きながら、時折襲ってくる怪物や獣を倒しながら進んでいた。
すると街道の途中に馬車が駐まっていた。二人が馬車に近づくと、近くに怪我人がいるのを発見した。
二人はその人物に駆け寄った。そして二人は怪我をしている人物を見て驚いた。その人は、正確には、その人物は人ではなかった。
長い耳に美しく気高さを感じる見た目、それはエルフだった。
「すごい、エルフなんて初めて見た……」
ヘルガは人生で初めてエルフを見た。そのため感動が先に来ていた。ブレイズもエルフを見るのは久しぶりだった。
しかし今はそんなことを思っている場合ではなかった。ブレイズはすぐにエルフの男性に近づくと、手当てを始めた。
「大丈夫か? 今包帯を巻くからな」
「あ、ありがとうございます」
エルフの男性には大きな切り傷があった。そこから血を流していた。ブレイズは手持ちの酒で傷口を消毒し、そこに包帯を巻いた。
「話せるか? 何があったんだ?」
ブレイズは手当てを終えると、エルフの男性に何があったのか聞いた。するとエルフの男性は朦朧としながら質問に答えた。
「賊か人攫いか何かわかりませんが、急に襲われたのです。どうかお願いします! セシリア様をお救いください!」
エルフの男性は必死の思いでセシリアという女性を助けるように二人に頼んだ。
「わかった、助けてやる。人攫い共がどっちに行ったかわかるか?」
「あちらの方向に行きました。どうかお願いします……」
ブレイズとヘルガはエルフの男性を馬車の中に寝かせると、示された方向に向かった。森の中に入るとそこには足跡があった。
人攫いのものと思われる痕跡を見つけた二人は、その後を追っていった。
※
森の奥にある廃墟、そこで人攫いたちは笑みを浮かべていた。偶然襲った馬車にエルフが載っていたのだ。金塊が手に入ったのと同じほどの喜びだった。
「本当ならあいつらに卸すはずだったが、計画変更だ。これは別ルートで売ろう」
人攫いのボスはエルフを、どこを通して売るかを考えていた。エルフは妖精のように美しいため、非常に高値で売れるのだ。
エルフは奴隷市場ではかなり珍しいのだ。なぜならエルフは基本自分たちの国から出てくることがないからだ。
それが今回はエルフが三人も手に入ったのだ。しばらくの間遊んで暮らせるほどの大金が手に入りそうだった。
人攫いのボスはエルフを見て舌舐めずりをした。それを見たエルフの女性は大声を出した。
「今すぐ私たちを解放しなさい! 私を誰だと思っているの!」
「お前たちが誰かなんて知らないね! 怪我したくなかったら、大人しく黙ってるんだな」
エルフの女性、セシリアは人攫いたちに対して気丈に振る舞った。しかし人攫いたちはそれを無視した。
「なぁボス、一人味見してもいいか?」
すると人攫いの一人がエルフの味見をしたがった。
「ダメだ、手を出したら商品価値が下がっちまう。我慢するんだ」
「ちぇ、わかりました……」
人攫いのボスは、部下がエルフに手を出そうとするのを止めた。なぜならお手付きだと商品価値が下がってしまうからだ。
人攫いは残念そうにエルフたちから離れた。
「お前ら、明日にはここを出発して市に行くぞ! 準備しとけ!」
「へい! わかりました!」
人攫いのボスは明日にはここを去るため、部下に撤収の準備をさせた。セシリアたちエルフは刻一刻と迫る期限に怯えた。
※
ブレイズとヘルガは足跡を追い、人攫いの拠点の近くに来ていた。近くまで行くと、女性の怒鳴り声と男たちの笑い声が聞こえた。
「どうやらここが人攫いの拠点らしいな」
「そうね。どうする? こっそり行く?」
「もちろん、正面から行くぞ」
「やっぱり! そう言うと思った!」
ブレイズとヘルガは人攫いの拠点に堂々と正面から侵入した。
「だ、誰だ!? お前ら!?」
突然現れたブレイズとヘルガに人攫いは驚いた。そんな驚く人攫いに対して、ブレイズは容赦なく大太刀で斬撃を浴びせた。
人攫いは断末魔を上げて、真っ二つになった。その声を聞いた人攫いたちは続々と武器を持って拠点から出てきた。
「止まれ! これ以上進ませねぇぞ!」
人攫いは棍棒や剣でブレイズとヘルガに攻撃してきた。しかし所詮は人攫い。歴戦のモンスタースレイヤーである二人には敵わなかった。
二人はどんどん廃墟の奥に進んでいた。するとそこには人攫いのボスと数人の部下、そして見目麗しいエルフがいた。
「てめぇら、よくもやってくれたな! おいお前ら、男は殺せ。嬢ちゃんはなかなかの上玉だ。生け捕りにしろ!」
「へい!」
人攫いのボスは部下に指示を出した。そして戦闘が始まった。正確には戦闘ではなく、一方的な虐殺だった。
ブレイズは大太刀を振るって人攫いを切り刻み、ヘルガは槍で正確に急所を貫いていた。
そしてあっという間に人攫いたちは殲滅された。人攫いが動かなくなったことを確認したヘルガは、セシリアたちエルフに優しく声を掛けた。
「もう大丈夫よ。さあ、行きましょう」
ヘルガはエルフを縛っていた縄を切ると、手を差し伸べた。その手を取ってセシリアたちは立ち上がった。
そしてブレイズとヘルガは無事にエルフたちを救出して、馬車まで戻った。
※
セシリアたちエルフを連れて、ブレイズとヘルガは馬車まで戻って来た。馬車の横にはエルフの男性が立って待っていた。
「ギルバート! 大丈夫なの!?」
それを見たセシリアは急いでギルバートと呼ばれたエルフの男性に駆け寄った。
「私は大丈夫です。セシリア様、お怪我はありませんか?」
「私たちは大丈夫よ! この人たちが助けてくれたから!」
セシリアとギルバートはお互いが生きているとわかると、ほっとした様子だった。
「今怪我を治すわね」
そう言うとセシリアはギルバートに対して回復魔法を使った。淡い緑色の光に包まれると、ギルバートの怪我はみるみる治っていった。
怪我が治り、落ち着いたところでエルフたちは自己紹介を始めた。
「危ないところを助けていただきありがとうございました! 私はセシリア。グラス連邦の貴族です」
彼女たちエルフはグラス連邦、通称亜人の国の貴族だった。
「私はブレイズ。こっちはヘルガです」
「よろしくね!」
ブレイズたちは目上の人用の挨拶をした。
「王都に向かう途中で襲われてしまい、もうダメだと思いました。それを助けていただき、何と感謝したらいいか……」
彼女たちはネクス王国の王都に向かう途中に、運悪く人攫いに襲われたようだった。
「いいんです、困ったときは助け合うものですから」
「寛大な対応、感謝いたします」
「ところで、私たちも王都に行くのですが、道中ご一緒しましょうか?」
ブレイズは目的地が同じなため、一緒に向かうことをセシリアたちに提案した。
「よろしいのですか? それはこちらとしてもありがたいです。どうやらこの道は安全とは言えないようなので、あなた方のように強い方が一緒だと心強いです」
「それでは、荷物を整理したら出発しましょう」
こうしてブレイズとヘルガはセシリアとギルバートを始めとしたエルフたちと王都を目指すことになった。
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次回更新は6月29日の0時の予定です。




