17話 伯爵
人狼を斬り伏せたブレイズとヘルガ。倒れた人狼は徐々に人の姿に戻っていった。そして人に戻った姿を見たカイルは驚きの声を上げた。
「そんな!? まさか!? この方は伯爵様です!」
「伯爵だって!?」
人狼の正体を聞いたブレイズとヘルガは驚いた。カイルも自身の目を疑った。しかし何度見ても、その顔は伯爵そのものだった。
「何だって伯爵が人狼になってるんだ?」
「わ、わからない……」
三人は困惑した。そしてただ伯爵を見つめることしか出来なかった。
「とにかく、手当てをしよう。話を聞くのはそれからだ」
幸運なことに伯爵はまだ息があった。ブレイズとヘルガの攻撃を受けて生きていられたのは、ひとえに人狼の高い回復能力があったからだった。
「伯爵の屋敷に連れて行こう。そうすれば治癒師が怪我を治してくれるはずだ」
伯爵に応急処置を施した三人は、とりあえず森から離れ、伯爵の屋敷に向かうことにした。ブレイズが伯爵を背負い、ヘルガが露払いをして、カイルが屋敷までの道案内をした。
血の匂いにつられてグールなどが寄ってきたが、それはヘルガによって駆除された。そして三人は森を抜けた。
三人は街中を駆け抜けた。そしてあっという間に伯爵の屋敷に到着した。屋敷の前に着くと、門番が三人を止めた。
「止まれ。ここは伯爵様の屋敷だ。勝手に入ることは許されぬ」
「俺だ、カイルだ! 伯爵様が森で怪我を負ったんだ! 今すぐ治療が必要だ! ここを通してくれて!」
カイルは門番と知り合いなようで、門番に通してもらうように言った。門番はブレイズが血塗れの伯爵を背負っているのを見ると、血相を変えて急いで門を開けた。
そして三人は伯爵を屋敷の中に運んだ。血塗れの伯爵が運び込まれると、すぐに伯爵家専属の治癒師が呼ばれた。
伯爵をベッドに寝かせると、治癒師が回復の呪文を唱え始めた。淡い緑色の光が伯爵を包み込んだ。すると伯爵の体に付いた傷が癒えていった。
傷が治ると伯爵は意識を取り戻した。しかしまだ朦朧としていて話すことは出来なそうだった。
ブレイズとヘルガ、カイルは別室に通され、そこで待機させられた。そして一時間ほど待つと、伯爵が喋れる程までに容態が回復したようで、三人は伯爵の部屋に呼ばれた。
部屋には伯爵と執事長と治癒師の三人がいた。部屋に入ると、まず伯爵がブレイズとヘルガ、カイルに礼を言った。
「冒険者のお二人、そしてカイル、助けてくれてありがとう。そちらのお二人、名前を聞いてもよろしいか?」
「私はブレイズ、こっちはヘルガです」
ブレイズはいつもの粗野な話し方ではなく、貴族向けの丁寧な話し方をした。王宮勤めだったこともあり、ブレイズは最低限の礼儀は叩き込まれていたのだ。
ブレイズが頭を下げると、ヘルガもそれに倣って頭を下げた。
「ブレイズとヘルガ、そしてカイルよ、私を助けたときのことを聞かせてくれるか?」
伯爵はここに運び込まれる前の記憶がないようで、三人に当時の状況の説明を求めた。そのためカイルが説明を始めた。
「まず私が掲示した密猟者の撃退の依頼を、ブレイズとヘルガが受けたことが始まりです。私たちは森の中に入り密猟者を探しました。すると人狼に殺された密猟者を発見したのです。それからブレイズとヘルガが人狼と戦い、人狼を倒したところ、伯爵様の姿になられたのです」
カイルは状況を丁寧に説明した。話を聞いた伯爵たちは深刻そうな顔をした。
「そうだったのか……。そこまで知ってしまったのなら、秘密にしておくことは出来ないな。ブレイズとヘルガ、カイルよ、ここから話すことは他言無用で頼む」
すると伯爵は自身の秘密を話し始めた。
「私は人狼になる呪いを掛けられているのだ。自分では制御が出来ず、人狼になると理性がなくなり街や屋敷の者たちを襲ってしまうのだ。察しの通り、街を騒がせている怪物の正体も私だ」
伯爵は話を続けた。
「以前に森に狩りに入ったところ、そこで呪いを掛けられたのだ。そして今回私は呪いの根源を絶つために一人で森に行ったのだが、運悪く人狼になってしまったようだな……」
伯爵は単身森に向かい、呪いを解こうとした。しかし人狼になり、また人を襲ってしまったようだった。そしてそこにブレイズたちがやって来たのだ。
「ブレイズ、ヘルガ、カイル、無理を承知で頼む。どうか私の代わりに呪いの根源を絶ってはくれないだろうか」
伯爵は三人に頭を下げた。伯爵は回復はしたが、まだ動ける状態ではなかった。そのため自分の代わりに森に行ってくれないかと三人に頼み込んだ。
「報酬はいくらでも払う。請け負ってもらえないか」
三人は伯爵の頼みを聞いて顔を見合わせた。そして三人を代表してブレイズが伯爵の頼みに応えた。
「任せてください。私たちが呪いを解いてみせます」
「そうか! ありがたい!」
伯爵は三人が頼みを聞いてくれたことをたいへん喜んだ。
「呪いを掛けてきた怪物は森の奥深くにいる。気をつけてくれ」
伯爵から呪いの根源の場所を聞いた三人は装備を整えると、再び森へと向かった。
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