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11話 新たな一歩

 ブレイズとヘルガがネクス王国に着いた同日、マリーは侯爵家のサロンにいた。そこは豪華な内装で、またたくさんの絵画が飾られていた。室内には大きな壺や花瓶に綺麗な花が生けられており、美しく彩られていた。


 しかしそんな室内は絵画や壺などの調度品では誤魔化せないほど、重苦しい空気で満ちていた。


 室内には侯爵と執事やメイド、そしてマリーがいた。


「旦那様、申し訳ありません。ブレイズの暗殺に失敗し、逃げられてしまいました……」


 マリーからブレイズの暗殺が失敗したという報告を受けた侯爵は、苦虫を噛み潰したような顔をした。


「そうか、失敗したか」


 侯爵は重い口を開いた。それを聞いたマリーはどんな罰でも受ける覚悟だった。


「マリーよ、それで奴はどこに逃げたかわかっておるのか?」


「はい。ブレイズは船でネクス王国へと向かったようです」


「なるほど、国を出たのか……」


 侯爵は顎に手を当て、何かを考えるような仕草をした。


「マリー、此度はお前に処罰はない」


「寛大な処置、ありがとうございます」


「しかしこのままでは儂の腹の虫が収まらん!」


 ブレイズへの怒りが収まらない侯爵。しかし侯爵はマリーに罰を与えなかった。その代わりにマリーに新たな任務を与えた。


「マリー、お前もブレイズを追ってネクス王国へ向かうのだ! そして必ず奴の息の根を止めるのだ!」


「はい! 承知しました!」


 一度はブレイズを逃した侯爵とマリーの憎悪の炎は、ブレイズがこの国からいなくなっただけでは消えなかった。



          ※



 数日の船旅の末、ネクス王国の港町であるカジャに辿り着いたブレイズとヘルガ。船を降りたヘルガは初めて足を踏み入れる外国にはしゃいでいた。


 そしてヘルガは露店に並ぶ珍しい商品に目を惹かれていた。ブレイズはそんなヘルガを引っ張り、まずは宿を取るために街中を散策した。


 カジャの街は交易都市のハーラほどではないが人も多く賑わっていた。そのため旅行者や商人で宿の多くが埋まっていた。


 二人は何とか宿を取ることが出来た。船に乗るために多くの路銀を使ったせいで、グレードの高い宿ではなかったが、それでもベッドで寝られるだけましだった。


 宿を取ることが出来た二人は、今日はもう遅いこともあり休息を取ることにした。ソルランド王国を離れられたブレイズは、ようやく安心して眠ることが出来るようになった。追手を気にせず眠れることにブレイズは喜びを感じていた。


 そして安眠を噛みしめたブレイズは、翌朝ヘルガと合流した。二人は宿の一階で朝食を食べながら、これからのことを話し始めた。


「とりあえず、当初の目標だったソルランド王国を離れることは出来たな」


「そうね。それでこれからはどうするの? 私としては、このまま冒険者として暮らすのも悪くないと思うけど」


 ブレイズの第一目標、それは侯爵の追手や賞金稼ぎを撒くためにソルランド王国から離れることだった。それが達成された今、次の目標は何かヘルガは気になった。


 ヘルガとしては、このままネクス王国のどこかの街で冒険者として暮らすことも悪くないと考えていた。


 しかしブレイズは安定して、大きな額を稼げるようになりたかった。そのため冒険者のままでいるという選択肢はなかった。


 そこでブレイズは第二の目標を話し出した。


「このままネクス王国の王都に向かおうと思う。それで王宮のモンスタースレイヤーとして雇ってもらおう」


 ブレイズはネクス王国の王都で再就職をするつもりだった。ブレイズは前と同じく、王宮付きのモンスタースレイヤーとして雇ってもらおうと考えていた。


「王宮付きのモンスタースレイヤー!? それは難しいんじゃないの? どうやってなるつもりなの?」


 ヘルガはブレイズの提案に驚き、あまりの突拍子の無さに不安を覚えた。


「それは簡単だ。これから王都までの旅路で功績や武勲を上げていくんだよ。例えば怪物を倒したり、人を助けたり。そうやって名声を稼いでいって、王宮まで俺たちの名を轟かせるんだ!」


「そう簡単にいくものなの?」


 ヘルガはブレイズの言うことを半信半疑に思った。そしてそれはあまりに計画性がなさ過ぎるとも思った。


「大丈夫だ、前に王宮に登用されたときも同じやり方で成功したんだ」


「本当に大丈夫かなー?」


 不安がるヘルガ。一方でブレイズは自信満々な様子だった。ブレイズはソルランド王国の王宮付きのモンスタースレイヤーに一度なれているという実績から、特に不安な様子はなかった。


 こうしてブレイズとヘルガの当面の目標が決まった。



          ※



 朝食を食べ終え、今後の方針も決まったブレイズとヘルガは、一旦カジャの街のギルドへと向かった。船に乗るために路銀のほとんどを使い切ってしまっていたので、また一から路銀を稼ごうとしているのだ。


 ギルドに入るとき、ブレイズは念のため仮面を付けていた。いくら外国に逃れたと言っても、まだまだソルランド王国に近い場所に位置しているのだ。もしかしたら偶然ブレイズのことを知っている人物がいるかもしれない。そのため仮面を付けたままにしているのだ。


 ギルドに入ったブレイズとヘルガは依頼の張られた掲示板の前に行き、依頼を吟味した。なるべく高額な依頼を受けようとした二人は、グリフォンの討伐依頼を受けることにした。


 近くの村で人や家畜がグリフォンに襲われているらしい。それを解決するために二人はギルドを出発した。


 ギルドを出発した二人は数時間歩き、ようやく件の村に到着した。村に着いた二人はグリフォンのことを聞きに村長の家に向かった。そして白髪の老人に話を聞いた。


「ここの村の村長だな? グリフォンの討伐依頼を受けた者だ。話を聞かせてくれ」


「おお、助かります! グリフォンは東の森から来ます。最初は家畜が襲われるだけでしたが、最近では人も襲うようになったのです。どうか奴を倒してください」


「わかった。任せてくれ」


 話を聞いたブレイズとヘルガは村に滞在し、グリフォンが現れるのを待った。そしてその日の夕方、鳥のような甲高い鳴き声と共にグリフォンが現れた。


 グリフォン、それは空の支配者。鷹の顔と翼、爪を持ち、獅子の体をしている怪物だ。空を縦横無尽に飛び回る姿は畏怖の念を抱かせる。


 グリフォンは危険な怪物で、強靱な膂力に加えて鋭い爪を持ち、場所によっては敵無しなのだ。


 ブレイズとヘルガはそんな危険な怪物の前に立ち塞がった。グリフォンは上空から二人を見つめると、獲物と見なして襲いかかって来た。


 グリフォンは滑空しながらその鋭い爪でヘルガを掴もうとした。しかしヘルガはそれをスルリと避けた。そしてヘルガはカウンターで槍をグリフォンに突き刺した。


 槍を刺されたグリフォンは悲鳴のような鳴き声を上げた。そして地面に落ちた。陸に落ちた空の支配者は反撃されて怒っていた。


 地に落ちたグリフォンは体勢を立て直すと、ブレイズとヘルガと対峙した。ジリジリとお互いが睨み合った。


 そしてその均衡をブレイズが破った。ブレイズは大太刀を構えてグリフォンへと肉迫した。近づいてくるブレイズにグリフォンは翼を広げて威嚇した。しかしそんなものはブレイズに効果はなかった。


 ブレイズは怯まずにグリフォンに近づいて大太刀を振るった。そして大太刀は一振りでグリフォンの首を両断した。首を失ったグリフォンはそのまま地面に倒れ伏した。


 こうして二人は苦戦することなくグリフォンの討伐を完了した。



          ※



 グリフォンの脅威がなくなった村人たちは、それを取り払ってくれたブレイズとヘルガに感謝した。そしてその日は村を上げての宴会を開いてくれた。


 村人から感謝され、また酒も入り気持ち良くなったブレイズは、仮面を外して堂々と名乗った。


「俺はブレイズだ! この名前を覚えておいてくれ! いつかこの国中で聞くようになる名前だ!」


 ブレイズはレイという偽名ではなく、本名を名乗った。勇ましく名乗ったブレイズに宴会の場は湧いた。その様子にヘルガはやれやれといった感じだった。


 二人はこうして村を上げての宴会を楽しんだ。


 翌日、村を出発した二人はカジャの港町へと戻った。そしてそれから二人はまとまった額の路銀を稼ぐためにカジャの街のギルドで、依頼をたくさん受けた。


 怪物の討伐から、霊薬の材料になる希少な素材の採集などを受けた。そしてある程度路銀を稼いだ二人は、カジャの街を出て行った。


 目指すはネクス王国の王都。こうして二人の新たな旅は始まったのだった。


読んでいただきありがとうございます。

次回更新は6月15日の0時です。

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