02話 転生
「ーーあれ?」
俺はふかふかの布団の中で起きる。
あー病院か。たしか階段で足を滑らせたんだっけ?
だがそれにしてもなんか、俺の体が若々しい。つやつやの肌に小さい手。ん? おれこんな手小さかったっけ?
てかどこの病院だろう。辺り一面金の装飾品だらけ。やけに豪華な家具で揃えられている病室だな。
……いやまてまてまて。え、なんかVIP病室みたいなとこに運ばれてない? 俺にそんな金があるようにみえるか? そんなのないに決まってんだろ! 昼食をおにぎり2個ですます限界サラリーマン舐めんな!
ナースコールでもしてすぐに一般の部屋に変えてもらおう。
「ナースコール、ナースコール……」
んーない。ナースコールがない。いやそんなことある? VIPは病室にナースコールをおかないのか?
じゃあとりあえず人探すか。
「よいしょっと」
ベットからおりると体が軽く感じた。
心做しか声も高く、目線も低い気がするがまあいいか。
しかし、
「え?」
俺は気づいた。髪の毛が長い。さらさらのロングヘアが俺の頭から生えているのだ。
うん……どゆこと? まさか俺が倒れてる間にすごい長い年月が経過してたとか?
分からなすぎる。じゃあ今西暦何年?
この部屋、カレンダーもなければ時計もない。もちろんスマホもないため現状の把握のしようがなかった。
もう俺は考えるのをやめて外の景色でも見ようと窓を覗いたそのとき、
「…………」
俺は唖然とした。
薄暗い空に枯れた木々、焦土と化した地面。
例えるなら地獄だろう。
だが俺はこの景色に見覚えがあった。
ストファンのアグリスの故郷、魔界にそっくりなのである。
分からん。頭が全く追いつかない。
しかしこのストファンの魔界そっくりな景色を見た俺の頭にひとつの可能性がよぎる。
この体、この髪、この声。思えば全て身に覚えがあった。
「俺、アグリスになってないか?」
信じられないが信じるしかない。何年間も見続けてきたアグリスを俺が間違えるはずがない。
え?
てことは…………?
ってことは………………?!
「うおおおおおおおーーー!!!」
あのストファンの世界に転生したのだと分かった俺は発狂した。
「これって異世界転生だよな?! そうだよな?!!」
あまりの嬉しさに興奮が抑えられない。
望むなら別のキャラクターとしてアグリスを一生眺める人生を送りたかったが、嬉しすぎる。
だが俺は思った。
俺って死んだんだな。