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大影帝国記【完結!】  作者: aberia
第三章 後宮編
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第四話 四狛参上

第四話 四狛参上



「あそこが教堂、あそこが厠。一応女子用もある」

 歩きながら指さしつつ説明する孫俊煕の後ろを、季翠は小走りでついていく。  



「授業は辰の刻(午前八時)から申の半刻(午後五時)まで。余程のことがない限り、教舎からの途中退場は禁止されている。何か雑用があれば、あそこにいる茶色の衣の者たちに頼めばいい」



 俊煕が指した方を季翠も見る。

 一人、見覚えのある男がいるような気が……。

 なんか、手振ってないか。



「次は」

 ちょっと待て。

やっぱり見過ごせない。



 そのまま先に進もうとする俊煕から離れ、季翠はその茶色の集団の所にすっ飛んで行った。



「な、何してるんですかっ⁉」

 一人の青年の腕を掴み、回廊の隅に引っ張る。

 後ろで俊煕や他の者が怪訝そうな顔をしているが、今は置いておく。



四狛(しはく)殿‼」

「いやー、さっきぶりですね!季姫様!」

 わざとらしく偽名で呼ぶな。



 皇宮から学塾前まで送ってもらい、そこで別れたはずの護衛武官がなぜかそこにいた。



「張副宰相が、張家の護衛を配備するとは言ってくださったんですけどね。ほら俺、一応姫様直属の護衛武官じゃないですか」

「と言うわけで、張子学塾の用心棒兼雑用係として、雇ってもらったわけです」



 そう話す四狛の装いは、確かに常の武官姿とは異なる、周囲と揃いの茶色装束だった。

用心棒も兼ねているからか、一人だけ簡易な鎧のみは着けているようだが。



「だからって」

「おい。さっきから何をしているんだよ」

 堪忍袋の緒が切れたのか、俊煕が季翠の肩を掴む。

時間を取られて不快そうだ。



 どうする。

何て誤魔化す。

「し、親戚が居たもので!」

「そうそう。偶然だな~、大きくなっててお兄ちゃんびっくりしたわー」


 

 馴れ馴れしく頭を撫でてくる手をぴしゃりと払い落す。



「親戚?」

 俊煕が胡乱気な顔を四狛に向ける。



 彼はしばらく黙ったのち。

「確か伯家の遠縁の出とかだったか。あの家なら、平民紛いの家に娘を嫁に出してもおかしくないだろうな」

 ……これは季翠と四狛をまとめて馬鹿にしているのだろうか。

 

 

 確かに四狛の今の姿を見ると、明らかに平民に見える。

一応季翠は下級貴族の娘ということになっているが、平民の親戚がいる貧乏貴族と思われたのかもしれない。



「(……張副宰相はああ仰ったけど)」

 確かに人を知るのも悪くはないと思ったけれど。 

 


 孫俊煕。

彼を理解し、尚且つ仲良くなる未来は、今の季翠には遥か遠くに思えた。



 呑気に手を振って見送ってくる四狛を背に、季翠は引き続き俊煕に従って説明を受けた。

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