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大影帝国記【完結!】  作者: aberia
第二章 北の大地編 
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第一話 北の大地へ

第一話 北の大地へ


「まさか帝都に着いて早々に北に行くことになるとは思いませんでしたね」

 馬に荷を積みながら四狛(しはく)がぼやく。



季翠(きすい)たちが出立の準備をしているのは、皇族用の門・()の門の城内側だった。



「姫様を扱き使うなんて、実は帝都は人手不足なんですかね」

「せっかく兄上が私を取り立ててくださったのです。そんな風に言うのは良くないですよ」

 同じく季翠も馬車に荷を積みながら返す。



「しかしですね。俺は普通に書簡とか伝令を各地に届ける役目だけだと思ってたんですよ。それが皇家の縁談と大貴族のお家騒動を収めろなんて、職務以上ですよ」



 まあ確かに。

帝都に戻って間もない、しかも皇族としての振る舞いもまだ備わっていない者にさせるには、少々荷が重い案件である。

 


 すると、その話に少し神経質そうな男の声が割って入る。

「本当です!こんな大事を、年端もいかぬ幼い姫に任せるなど。もしも我が姫様の縁談に差し障りでもあったらどうしてくれるのか!」



 声がした方に季翠と四狛が振り向くと、従姉の蒼鈴(そうりん)が従者と共にこちらに歩いてくるところであった。



英起(えいき)。季翠ちゃんに失礼よ」

従姉上(あねうえ)



「季翠ちゃん。今回の旅はよろしくね」

「はい。至らぬところもあるかもしれませんが、従姉上をお守りさせていただきます」

 少し畏まった風に言う季翠に、蒼鈴は可笑しそうに笑う。



「そんな気負わなくていいのよ。護衛もたくさんいるのだから。二人でお話しながら楽しい道中にしましょう」

「姫様!そのような軽いお気持ちでどうするのですか!」



 先ほど英起と呼ばれて窘められていた男は、楽しそうに笑っている主に喰いつく。



「せっかく巡ってきた良縁なのですよ‼()将軍は公明正大で賢人と名高い御方。皇帝陛下の御信頼も厚く、葵家はこれから益々栄えるでしょう。これを逃す手はありません!」

「もう、英起ったらそればかりね」

 声を荒げる従者に、蒼鈴は呆れたようにため息をつく。



「季翠ちゃん、気にしないでちょうだい。もしこの縁談がうまくいかなかったとしても、わたくしは妾腹の姫だもの。他のお姉さまたちと同じようにうまくいかないのは当然だわ」

「姫様!何を仰るのです!」

 そのまま言い争いをしそうな二人に、季翠は話を変えようと蒼鈴に話を振る。



「あの、従姉上。こちらの方は」

「あ、そう言えば紹介がまだだったわね」



「わたくしの従者の楚 英起(そ えいき)よ。幼い頃から仕えてくれているの」

「……楚英起でございます」

 蒼鈴からの紹介に、楚英起は言い足りないのを渋々耐えながらだろうが、季翠にお手本のような拱手をした。



「季翠と申します。道中、よろしくお願いいたします。こちらは私の護衛武官の「四狛だ」」

 季翠の言葉に割って入り、四狛がぶっきらぼうに名乗る。

見ると、不機嫌そうに英起を睨んでいる。



一瞬、二人の間にバチリと火花が散った気がした。



「……精々我が姫様の縁談がうまくいくように御助力願いますよ」

「そっちこそな」



 季翠と蒼鈴は思わず顔を見合わせる。

出立前に先行きが不安になってきた。



 不穏な顔合わせ後、順調に準備を終えいよいよ出立の時がきた。



「――――季翠」

「‼姉上!」



 城門を振り返ると、姉の碧麗(へきれい)が見送りに来ていた。

季翠は慌てて馬車から降り、姉の傍に駆け寄る。



「見送りに来てくださったのですか?」

「ええ。まさか昨日の今日で出立とは思わなかったわ」

 


 碧麗は美しい眉を寄せ、季翠の手を優しく取る。

「北はまだ寒さが残ると聞くわ。どうか道中体に気をつけて。兄上が何を仰ったかは分からないけれど、無理はしないようにするのよ」



「いいえ」

「私も皇族の一員です。少しでも国の為になるように尽力します」



 季翠は姉の手を握り返すと、不安を振り切るように踵を返す。

「出立しましょう」

 目指すは北の都・北陵(ほくりょう)

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