3
キスをすればするほど、悲しくなった。
僕たちの関係に、切なくなった。
彼女の目から一粒の涙が零れ落ち、頬を伝う。
「好き。」
彼女は、泣きながらその一言を言った。
愛を伝える一言を。
僕は嬉しかった。……同時に、悲しかった。
「でも……。」
そう言い、彼女は、横を向く。
僕は、彼女が見ている方に目を向ける。
彼女は、棚の方にある家族写真を見ていた。
僕と、彼女が写っている。その距離は近くもなく、遠くもない。
微妙な距離。
それから3年たった今も、その距離は、変わっていない。
これから先も、きっと変わることはない。
だから、僕がこれからすることには、なんの意味もない。
キスしようと、身体の関係を持とうと、僕たちが姉弟であることは、絶対に変わらない。
でも、それでもいい。
それでも、彼女と繋がりたい。
彼女を、もっと愛したい。
誰も、僕たちの間に入り込めないくらいに。
僕は、彼女のシャツのボタンに手をかける。
「……いい?」
僕は彼女に尋ねる。
彼女は、無言で頷く。
ボタンを一つ一つはずしていく。
彼女が身に着けている、水色のブラジャーが露になる。
神秘的で色白な彼女には、水色がよく似合う。
彼女は恥ずかしいといったように、僕と目を合わせてくれなかった。
腕で、赤く染まった顔を隠すようにしている。
いつもは、淡々としていて、凛としている彼女が、僕だけに見せる姿。
透き通るように白い肌も。長くてきれいな黒髪も。グレイがかった澄んだ瞳も。
長くて細い指も。淡いピンク色の唇も。透き通るように白い肌も。
かすかに香る、香水の匂いも。
すべて、僕のもの。
夜は、すべてを隠してくれる。
僕たちが、姉弟であるということも。
僕と彼女が、これからすることも。
これは、夜がくれた秘密の時間。
僕と、彼女だけの……。