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第71話 帝国暦 -side零司

新章に突入します。 久々に主人公の視点に戻ります。

「ウフフ、おワタクシィ、オ・ト・ナの階段を昇っちゃったカモぉ」


 気色悪いコトを呟くのは、キモヲタデブオヤジ【オヤジウス・オッサンディア】だ。

 本名は“桜野圭一”という。

 非常に残念なことに、オレの親友である。


 オトナの階段とやらは、()()()()を言っているのだろうか。


「はは…… ()()は地獄絵図だったな。 思い出しただけで身の毛がよだつわ。 ひとりも死人は出さないようにしたみたいだが、あの賊ども『殺してくれ』みたいな顔をしていたからな……」


 蜘蛛の子と呼ばれる賊集団から、連れ去られたルブロ村の女子供たちを奪還するため、オレとオヤジウス(桜野)のふたりは蜘蛛の子の拠点へと向かった。

 オヤジウスには賊を引き付けてもらう役目を負ってもらい、オレは蜘蛛の子の一員だったブルカノ・ブルカンから訊いた隠し通路を使って蜘蛛の子の拠点へ潜入することとなる。


 そして女子供たちを救出したのち、賊集団を全てぶちのめすと、助け出したうちの一人である新米冒険者レシーカとともに、拠点の正面玄関からから堂々と出て来たのだが……。


 そこでオレたちが目の当りにした光景は、一言では言い表せないほど、()()()()で凄惨な光景だった。



 辺り一面に賊どもが倒れていて、その場にいた賊たち全員、息絶え絶えといった状態だったのだ。

 それどころか、何故か倒れていた男たちは半裸、もしくは全裸になっていたのだった。


 オヤジウスから聞いた内容によると、オレから合図の連絡を受けてから、オヤジウスは拠点の真正面から突入し、拠点正面にある開けた場所で賊どもを相手に戦ったらしい。

 EFスキルを使用して防護フィールドを展開したまま、ずっと敵の攻撃を回避したり防ぎながら、多数に無勢をものとせず翻弄しつづけたそうな。

 

 しかし、わからない。

 どうして、倒れていた賊どもは、みんな半裸もしくは全裸の状態だったのだろうか?

 詳細を訊きたいような聞きたくないような……。


 意を決し、オレは訊いてみることにする。


「なあ、オヤジウス。 ちょっと訊いていいか?」


「ウフッ♪ 何が尻体? いえ、知りたいのかヨン♡」


 一瞬、言語変換のミスを感じたが、気にせず続ける。


「オレたちが拠点の正面入口から出て来たときの話なんだけどさ…… 何故、倒れていた連中は裸だったんだ?」


 オレに続き、レシーカが口を挟む。


「あ、アタシもそれは気になった。 オヤジウスさん、あれだけの数を相手にしてスゴイとは思ったけど。 どうして倒れていた賊連中が服を脱いでいたのか…… 意味不明だったから気になっていたんですアタシ」



 オレたち3人は、貨物馬車に揺られながら移動中だ。

 レシーカは若い女のコなワケだし、エリスか侍女たちの馬車に乗るよう勧めたのだが、彼女の強い希望でこっちの貨物馬車に乗ることになったのだ。

 ひょっとしたら、レシーカは人見知りなのかもしれない。


 オレとレシーカの質問を受けて、オヤジウスはニタリ、と口の端を吊り上げながら語り出す。



「ウフフ、おワタクシ、基本的に法術師(テクノプリースト)だしぃ、相手を傷つけるのはあまり気が進まなかったのヨン。 だからぁ、おワタクシ考えたのヨン」


 オレとレシーカは『『な、なにを?!』』と思わずハモってしまう。



「フフッ、あのね、おワタクシ気付いたの。 どうやったら暴力を通さず、人と人が…… いいえ、男とオトコが分かり合えるかって」


 オヤジウスはウットリとした表情を浮かべながら言った…… 気がした。


「あのねぇ、肌と肌をくっつけてぇ、しっかりと抱きしめて耳元で語り掛ければぁ、きっとおワタクシの慈愛…… いいえ、深愛が伝わると思ってねぇん♡」


 

 熱っぽい視線をこちらに向けながら、ウィンクを飛ばしてくるオヤジウス。

 ウィンクを食らった俺たちは思わず……。


「「ヒエッ!」」


 という具合に、仲良くハモりながら後ずさりしてしまう。 

 


 気を取り直し更に深く追求したところ、オヤジウスは集団で向かってくる敵に飛び込み、男たちの集団相手にくんずほぐれつしているうちに気分が高まってしまったそうだ。


 ちなみに、どんな気分だったかまでは訊かなかった。


 それからアーマメントのパワーに任せて賊たちの鎧を壊し、衣服を破き、本人曰く、愛の伝道師ごっこを愉しんだということらしい。


 当初、賊たちは一斉に襲い掛かってきたが、徐々に倒されていく仲間を見て恐怖を覚えたのか、逃げ出そうとした賊たちを、オヤジウスはEFスキルとサブウェポンを駆使して、一人も逃がさないよう苦心したらしい。


 賊のたぐいは基本的に同情する価値すら無い連中だと思っていたが、連中が体験した状況を想像すると、ほんの少しだけ哀れんでもいい気がしてくる。


「ウフフ…… 今回の戦いでおワタクシ、とても成長したのヨン! オトコの魅力を体験できたヨン♪

 おワタクシ、ひょっとしたら“ファッションホモ”から“ホモ”にレベルアップするかもっ!」


「するなっ?! 落ち着けっ! 戻ってきて! いや、マジで」


 思わず声を荒げてしまうオレ。 ネタで言っているうちはいいが、本気になるなら流石に止めなければ。



 本人は『冗談だヨン、ウフッ♡』と怪しい雰囲気を醸しながらのたまうが、本当に大丈夫なんだろうな?



「あ、あの、姐さん。 オヤジウスさんって…… か、変わった人なんだね」


 レシーカは引き気味にこわばった顔をしながら、オヤジウスについて感想を述べた。


 何故、レシーカがオレたちに付いて来たかというと、彼女はオレたちの雇い主である“エリス・エアリス”が向かおうとしている領地“アスターシャ”で活動する冒険者だからだ。


 レシーカは父親を蜘蛛の子の襲撃で亡くし天涯孤独の身となった訳だが、気丈にも早く仕事に戻りたいという彼女の意思を汲み取り、エリスが特別に同行を許可したのだ。

 同行するついでに護衛の依頼もしたと聞いている。


 まったく、本当にエリスのお人好しには頭が下がる。



 なお、蜘蛛の子はというと、完全に壊滅した。


 総長から幹部、その下の構成員まで全員捕縛され、サンスロティ領の冒険者ギルドに引き渡された。

 恐らく蜘蛛の子と関係があったであろう、ヴリカ子爵は黙らざるを得なかった。

 冒険者ギルドには帝国の後ろ盾がある為、領主といえど圧力をかけるのは難しいからだ。

 あんなご立派な拠点があるのを、何年も知らなかったハズはないのだが、冒険者ギルドから派遣された職員の質問にも、子爵は知らぬ存ぜぬを貫き通したらしい。


 いずれ帝国本土に報告され、のちに何らかの沙汰が下るだろうが、オレたちには関係のないことだ。



「姐さん、そういえば妹さんを探しているんだよね? 何か()()はあるの?」


 唐突にレシーカがオレに莉亜についての話題を振ってくる。


「いや、まったくない。 アテが無いからこうして護衛の仕事をしながら情報を集めているわけだよ。 エリス嬢の目的地、アスターシャみたいな人が集まる場所に行けば、何らかの情報も手に入るかもしれないし」


 

 そうだ、アスターシャのような都会に行けば何らかの情報は手に入るハズだ。

 莉亜、毒島、高場、KOSAMEさん。 この四人がこの世界にいるのならば、何かの足跡を残している可能性はある。 桜野だってこうして出会えたのだから、情報屋などと接触して手に入れられることはできるだろう。



「そうだな…… そろそろ覚悟を決めるときかもしれない」


「ふぉっ?」


「え、なに? どうかしたの姐さん」


 ふたりは不思議そうな顔をしながら、オレの顔を覗き込む。


 これまでのオレは無意識に、現在のゼルフィア大陸の現状を積極的に知ろうとはしなかった。

 特に、オレの故郷についてはまったく誰にも訊かなかった。


 もし、知ってしまえば昔のオレに戻ってしまうのではないか、そんな怖さがあったからだ。


 でも、もうそんなことは言ってはいられない。


 いや、違うな。 本当は分かっていたんだ。

 前世の世界に、CULOのアバターになって転移するという異常な状況に置かれたら、知らぬ存ぜぬで過ごし続けることなどできないことぐらい。


 だからこそ、訊かなければならない。

 今が、帝国歴何年なのか。

 

 オレが死んでから、今現在においてどれぐらいの時間が過ぎているのか。



「レシーカ、今、何年だ?」


「へ? 姐さん、なに? どうしたの?」


「だから、今は帝国暦何年か訊いている」


「は? え、なに、何なの? 何かの冗談?」


 突然、突拍子の無い事をを訊かれレシーカは目をパチクリさせていた。

 ま、当然だ。


 オレだって日本で同じことを訊かれたら、同様の反応をするだろう。

 それでも訊かなければならない。

 知らなければならない。

 向き合わなければならない。



「たのむ、いいから教えてくれ。 今、帝国歴何年だ?」


 レシーカの目をみつめ、真剣な面持ちで向き合う。

 彼女は一瞬だけ目を伏せると、再びオレに向き直り、おもむろに口を開く。



「えっと…… その、帝国歴578年だけど…… それが何か?」


「え……」


 オレは思わず言葉を失った。 予想とまるで違ったからだ。


 何故なら…… オレが死んで、わずか四年しか経過していないのだから。


 


 


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