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第70話 毒島家の御神刀 -side莉亜

申し訳ありません。後半の部分に今後の展開と矛盾する部分の修正と、加筆したため再度上げなおします。

ご迷惑をお掛けします。

「何たる不覚」 「完全にダウン」


 普段、無口なカントさんとケントさんが珍しくコメントした。

 ベヒーモス相手に、あまりカッコよく活躍できなかったからなのかな。



「クソッ…… 上位冒険者パーティ“ルルエラの剣”がなんたるザマだよ。特別推薦枠とはいえ、新米冒険者の前だというのにもかかわらず…… おい、ホラ、ふたりとも動くなよ。ちゃんと回復させるからな」


 ジャックさんはイライラしつつ不満気な様子だけど、きちんと仲間を治療していた。



「みんなボロボロね、私もだけど。 それにしても…… ベヒーモスか、とんでもない相手だったわね……。

 生きているのが不思議なくらい。 ユージィちゃんと()()()()()がいなかったら死んでいたわね……」



 ちょっとアンナさん! なんで、あたしの名前は挙げないワケ? あたしだって弓を射って援護してましたよ? とゆーか、なんで武子ちゃんだけ「さん」付けなのさ? 

 どうみたって武子ちゃんは22歳のアンナさんより年下なのに。 どうして武子ちゃんにだけ敬称付けるのよー。


 カントさんとケントさんの治療を終えたジャックさんがこちらに近づいてくると、興奮冷めやらぬといった雰囲気をまといながら、にこやかな笑顔を向けて武子ちゃんに話しかけてくる。



「まったくだよ、()()()()()がいなかったら、もっと苦戦していただろうし、下手を打てばやられていたかもしれない。たった一匹とはいえ、やはり、狂獣は侮れないな。

 タケコさん、凄かったよ! あの頑強なベヒーモスの首を一刀両断するなんて! それも一撃で! すごい技ですね!」


 興奮気味に武子ちゃんを称賛するジャックさん。

 でも、武子ちゃんは特におだてられて調子に乗ることもなく、静かな口調で答える。


「いえ、褒めて頂いたのは嬉しく思いますが、私はまだまだ修行中の身であります。 先ほどの技も、躰捌きからの真向斬り、という名の基本の技です。

 剣術に必殺技とか特別な技というものはないと思っております。

 日々の厳しい稽古のもとで身に付いた技が、状況に応じ、ごく自然に繰り出される事。 それこそが技という概念において肝要だと思っております」



 武子ちゃんは謙遜しつつ、冷静にかつ淡々と答えた。 その応答を聞いて、ジャックさんは武子ちゃんとの温度差にあっけにとられたのか、彼の中にあった興奮は引いていったみたい。


 その場の空気がシラけそうになったのを感じたのか、アンナさんは武子ちゃんに話しかける。



「そっ、その片刃剣、すごい切れ味ね。タケコさんって確か“クリーヴ”の出身だったわよね。 クリーヴの剣士は“カタナ”という切れ味の鋭い剣を使っているけど、タケコさんのカタナは輪をかけて凄いわね。

 ひょっとして、そのカタナは何か特別なのかしら?」



 アンナさんは武子ちゃんの刀に興味を持ったのか、質問するアンナさん。


 つづいてカントさんとケントさんも『凄い刀だ』『ナイスブレード』といったカンジで興味があるみたい。


「私の家に代々伝わる刀です。なにか特別な力があるかは不明です」


 せっかく気を利かせてアンナさんが話しかけてくれたのに、そっけなく返答する武子ちゃん。相変わらず可愛げがないなあ。

 

 これはアレだね。 武子ちゃんのパッシブスキル“人見知り”が発動しちゃってるね。 これさえ無ければ武子ちゃんは学園でも、もっと人気者になれるのになあ。


 それはともかく、ルルエラの剣のみんなは武子ちゃんの愛刀【空名】に興味津々みたい。


 この日本刀【空名】がどのような製法で作られて毒島家に伝わったのか、そんな由来をあたしはまったく知らない。


 でもね、どれくらいの性能を持っているかは知っている。

 それもとてつもない威力の刀だってことをね。


 ただ、それは()()()()CULO(ゲーム)の基準ですけど。



 知るに至ったきっかけは、この世界にきて間もない頃、初めてアーマメントという、この身体の変身と解除について調べていたときだ。


 あれは、たしか宿屋だったような……。






◇  +  ◇  +  ◇  +  ◇ 




「い、意外に簡単に変身できるのだな……」


「どういう理屈なのかは知らないけどね。魔法少女的に変身できるんだったら、もっと可愛くてカッコイイ台詞がよかったんだけどね」


 CULOアバターへ変身するやり方を教えてあげると、そのアッサリとした手順に武子ちゃんは拍子抜けしたみたいだ。



「ハッ!? く、空名ッ! 私の大切な愛刀をかえしてっ!!!」


 そんなに必死に向かって来なくても…… ちゃんと返しますよ。

 武子ちゃんが刀を持ったままアーマメントに変身しちゃったら、取り込まれて無くなっちゃうので、あたしが一時的に持っていたんだよね。


「ハイハイ返しますよ…… あっ?! ちょっと待って!」


「えっ?! だにゃっ!?」


 刀を奪い取ろうと突進してきた武子ちゃんを、あたしが華麗に回避したせいで、ヘンな声を上げながらスっ転ぶサムライJK毒島武子ちゃん。


 焦ってコーフンしていたとはいえ、剣の達人がシロートのあたしから奪い返せないとはね。

 ウフフ…… 武子ちゃんや修業が足らないゾよ。


「い、イタタ……。 リアちゃん、酷い…… 何故ゆえ、こんなことを……」


 泣きそうな顔であたしを見上げる武子ちゃん。オホホ、カワイイのう。

 う~ん、あたしに悪気が無かったとはいえ、なんかすっごく悪い事をした気がしてきたな。


 とりあえず武子ちゃんの質問に答えることにする。

 

「ちょっと思いついたんだけどさ。武子ちゃんの刀をアーマメントのアイテムサックに入れたらどうなるのかな~ ってね。

 この刀はあたしたちの世界から持ち込んだものでしょ? それをCULOみたいにアイテムの詳細を閲覧できたらと思ってさ」


 CULOでは、自身のプレイヤーキャラクターが持つアイテムサックに入っている任意のアイテムにカーソルを合わせることで、そのアイテムの詳細を調べることができるんだ。


 武器だったら、攻撃力の数値やIG(アイテムグレード)、武器の属性とか装備可能条件とか、その他いろいろね。



「え、何なのだそれは? えっ? ちょ、ちょっとリアちゃん?!」


 あたしは武子ちゃんの愛刀【空名】を持ったまま視界の中にある【アイテムの出入】を選ぶと、突如出現した真っ黒な亜空間が、刀を持っていた手の近くに現れた。


「おお~ なんて都合のいい! 便利だねっ」


「え?!」



 あたしは早速、その空間の中に刀を突っ込む。

 武子ちゃんが悲鳴を上げたような気がしたけど無視無視。

 この【アーマメント】の能力を知るほうが大事だからね。


 視界内に表示されているアイテムサック欄には、新しく追加された武子ちゃんの刀が表示されていた。

 さっそく刀を表すアイテムアイコンにカーソルを合わせて、ポップメニューからアイテムの詳細を選ぶ。 これで武子ちゃんの愛刀【空名】の性能が分かるね。


 【空名】の武器性能が記された情報ウィンドウが表示されると、あたしは驚愕した。

 CULOの常識ならば、ありえないことだったからだ。



「え…… なにこれ? ウソでしょ?!」


「な、なにがだっ!」



 すっごくお怒りの武子ちゃん。


 あたしは視界内に表示された【空名】のスペック表示に釘付けだったので、武子ちゃんの抗議はまるで耳に残らない。

 なんか『小悪魔』とか『腹黒少女』とか『悪巧者』とか言われた気がするケド、今はそれどころじゃないのでゴメンね、武子ちゃん。


「ごめん、今それどころじゃないんだよ! だって、ただの古い日本刀だと思っていたら、スゴイ性能を持っているんだよ! 武子ちゃんの愛刀はさっ!!」



 だってさ、驚くのもムリないよ。 マジで凄いんだこの刀。



 CULOでは製造武器と課金武器というものがある。

 製造(クラフト)武器はプレイヤーが時間と労力をかけて作る武器で。 課金武器はその名のとおり、リアルマネーを出してショップから買う武器だ。


 CULOは新たなシーズンごとにIG(アイテムグレード)が上がって、強い武器を製造(クラフト)できるようになる。

 製造(クラフト)武器と課金武器を比較した場合、性能は製造(クラフト)武器のほうに軍配が上がる。 素材集めの意欲をプレイヤーに失わせないためなんだって。 あざとい。


 時間がないプレイヤーは一段階劣る課金武器を買ってまったりプレイ。

 廃人さんはシーズンごとに特定の高難易度クエストやミッション、またフィールドやダンジョンに出現するランダム要素でしか出現しない希少な素材とかを集めたりして、そのシーズン最強装備を作るワケだ。


 トーゼン、あたしの装備している弓は、CULO最終シーズン最強武器だ。

 ホント、製造(クラフト)するのに苦労したゼ。

 

 れーにぃたちが引退してからというもの、毎日コツコツ野良で姫プレイして、いろんなプレイヤーさんに手伝ってもらいながら全部の最強装備を集めたんだよね。

 いやいや、大変でございました。


 あ、それは別にいいや。



 そうだよ! この武子ちゃんの愛刀【空名(くうめい)】千年くらい続くと言われる毒島家に代々受け継がれた御神刀。


 これをアイテムサックに入れたあと【アイテムの詳細】で性能を確認したら、とんでもない数値が出て来たんだ!



 基本的にCULOにおいて武器の威力は、職業(ジョブ)ごとに差はあるけど、あくまで職業(ジョブ)の特性上の差に過ぎない。

 武器と武器を比較した場合、極端なまでにIG(アイテムグレード)に差が無い限り、攻撃力数値にそこまでの差はないんだ。


 最終シーズンの製造(クラフト)武器だと、単純な攻撃力最強が戦士(ウォーリア)職業(ジョブ)の大剣だった気がする。


 たしか攻撃力数値が1800くらい。 ちなみに、あたしの最終シーズン最強の弓【アポカリプスボウ】で1568だ。



 そして、問題の武子ちゃんの愛刀【空名】の攻撃力数値なんだけどさ……。



――なんと、軽く5000オーバー!


 は? なにコレ?! と疑いたくなる程の攻撃力数値が、アイテム情報詳細ウィンドウに記載されておりました。


 どう見てもチート武器です。 本当にありがとうございました。




◇  +  ◇  +  ◇  +  ◇ 




「……はぁ、あたしの素材集めの苦労はなんだったのかなあ。 まぁ、姫プレイだけどサ」



 回想をやめて周囲を見回すと“ルルエラの剣”のメンバー4人が、困惑する武子ちゃんに集まっていた。


 みんな武子ちゃんの強さに惚れ惚れしているみたい。 そっけない武子ちゃんの素振りにも気にせず、皆めげずに話しかけていた。


 最初は引き気味だった武子ちゃんだったケド、徐々に慣れたのか満更でもないみたいだ。


 ユージィはひょこひょこペンギン歩きをしながら、周囲の川辺を軽く散歩しつつ、たまに可愛い仕草をしながらこっちにアピールしていた。 フフ、あざといヤツめ。



「あー なんかあたし、疎外感を感じます……」


 あたしは一人、ちょっとイジけそうになっていた。

 だって、あたし、あんまり目立っていないんだもの。

 弓の命中精度もなかなかだったと思うし、わりとみんなをサポートしていたんだけどなぁ。



 そのあと、あたしたちはクートゥア伯爵に討伐の結果報告をしにいった。

 

 伯爵さんはとても感謝してくれた。

 個人的にお礼をしたいということで、お金や貴重なアイテムまで貰っちゃった。 


 帰り際、“スウェッツェン”の漁業関係のおじさんたちから、とっても感謝された。


 月並みな感想だけど、人のために仕事をするというのは、気分がいいな。

 心からそう思った。


 そのあと、4日かけてアスターシャへ戻り、1日休んだあとエルメリアさんのもとへ行く予定だったのだけど……。


 エルメリアさんは一刻も早く“ゼーヴェパウダー”の作製に取り掛かりたいらしく、あたしたちは暫く待機することに。


 ジャックさんたちだけ、今回入手したゼーヴェパウダーの材料である“ベヒーモスのツノ”と“ベヒーモスの核”を真っ先にエルメリアさんの元へ届けるみたい。


 あたしたちには後日、直接会って改めてお礼をしたいんだって。


 エルメリアさんって、本来なら身分がスッゴイ高くて、庶民のあたしたちとは住む世界の違う人なんだよなあ。

 なのに、権力を振りかざしたりしないし、優しいし、キレイだし、律儀なうえに飾らなくてホント、ステキなお姉さんだよねえ。

 あたしもあんな大人になりたいもんだ。とくに胸とかバストとかオッパイとかねっ!



 そんなワケで、あたしたちは、暫くの間ヒマを持て余すことになった。


 そこで、あたしと武子ちゃんとユージィの3人は、エルメリアさんから呼び出しがあるまで、アスターシャ観光をすることにしたんだ。


 アスターシャはとてもじゃないけど2、3日じゃ回りきれないくらい広いんだ。時間は結構あるんだしゆっくりと楽しもうっ!


 あ、そうそう。お金はアンナさんたちがくれた。

 前にバジリスク討伐を手伝った際の分け前だって。


 この世界のお金のレートとかよくわかんないケド、聞いただけならスゴイ額を分けてくれるみたい。

 ホントにいいのかな? アレってユージィが倒したワケだしぃ?


 でも、まぁ貰えるものは貰っておくのがあたしの流儀だ。遠慮なく頂くことにした。


 とりあえず必要な分だけ、12万ゼルだけ貰うことに。

 アイテムサックに入れておけば多分落とすことはないだろうけど、念のためね。たくさんあったらムダ遣いしそうだし。


 とくに、今はれーにぃがいないワケだし、誰も注意してくれる人がいないからね。


 あたしたちは、この世界に少し慣れてきたのかちょっとウキウキ気分だった。そんな気分でいられたのも、この世界のキレイで良い部分だけしか見えなかったからなんだと思う。



 でも、まさか。

 あんな事が起きるなんて思ってもみなかった。


 あたしはそこで初めて、人が殺されるのを目にしてしまったんだ……。


 

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