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第67話 ゼーヴェパウダー -side莉亜

前話である、66話の後半を大幅に加筆修正した結果、こちらの話も大幅修正した為、もう一度上げなおします。

ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

「ペイペイッ♪」


「まあ! なんて可愛らしいのでしょう! わたくし、これほど可愛い獣さんを見たことがありませんわっ!」


 あたしの目の前で、エルメリアさんはユージィの前で膝をつき、彼女の左右の手とユージィの左右のフリッパーとでニギニギ握手をしていた。

 いやー なんとも微笑ましい光景だねっ。


 あたしと武子ちゃんとユージィ、そしてアンナさんの三人と一匹は、エルメリアさんが住む大きなお城に遊びに来ていた。


 エルメリアさんが懇意にしている冒険者チーム“ルルエラの剣”を、あたしたちは助けてあげた。正確にはユージィが“ばじりすく”っていう大きな蛇をぶっ飛ばしたんだけどね。


 それを聞いたエルメリアさんは、あたしたちに是非お礼を言いたかったんだって。


「それにしても本当に可愛らしい獣さんですね。とっても大人しいし、リアさんと意思が通じているなんて! 獣使いの方を何人か知っていますが、これほど知能の高い獣さんをわたくし見たことがありませんわ」


「ユージィは頭いいんだってさ。よかったね♪」


 あたしはユージィに笑いかけると、ユージィも嬉しそうに答えてくれる。


「ペイッ♪」(あツし、かしこイ)


 ユージィはエルメリアさんのことを気に入ったらしく仲良く遊んでいて、とってもご機嫌だ。

 

 エルメリアさんは“こうしゃくけ?”の“ごれいじょう?”らしい。スーパーお嬢様ってことかな?

 大人の女性に歳を聞くのは失礼だから訊かないけど、見た目は20代前半くらい。輝くようなメチャ綺麗なフワフワ金髪ロングヘアが特徴的で、真っ白で肌の露出がほとんど無い清楚なドレスを着ている。

 ドレスのデザインは何処か修道服っぽいのに、エルメリアさんが着ているせいか、地味どころかエレガントかつ可憐だった。


 そして肌をほとんど見せていないのにもかかわらず、服の上からでも分かる程エルメリアさんは抜群のスタイルの持ち主だ。オッパイは武子ちゃんと同じくらいありそう! 身長は武子ちゃんより少し高いかな。

 胸が大きいのにスレンダーなモデル体型なんて、なんてうらやましい! キイーッ! 

 あ、ちなみにアンナさんはあたしの仲間ね。背は高いしモデルさんみたいにキレイだけど、胸はあたしのように平坦です。


 

「あらやだ、わたくしとしたことが、なんてはしたない。お客様がいらしているにもかかわらずなんということでしょう」


 エルメリアさんはユージィと遊ぶのをやめて立ち上がると、あたし達を応接室の奥にある部屋へと案内してくれた。あたしたちはエルメリアさんに続いて部屋に入る。


「さあ、どうぞ。こちらがわたくしの私室です。ご遠慮なさらず」


 あたしは思わず部屋をキョロキョロと見回してしまった。とっても素敵な部屋だったからだ。


 部屋の中には広く開放的で、天井や壁紙や調度品などは白一色だ。この部屋が白を基調としていることにあたしは気付く。


 生成り色の壁紙はどこかほんのりと温かみを感じる。ソファーやテーブルは流石に白ではないけど、モダンなデザインでとてもオシャレだった。素人目にも価値が高そうな絵画や彫刻も飾られていて、お値段はスゴそうだけど、決して嫌味な感じはしない。

 テーブルの上には白い陶器っぽい一輪挿しの花瓶が置かれていて、綺麗な白い花が生けられていた。天井から垂れ下がったランプシェードも白色でシックなデザインだ。


 さすがスーパーお嬢様なエルメリアさんのお部屋だ、センスは抜群だね。ベッドはないけど、きっと寝室は別にあるんだろうね。これだけ大きなお城だしさ。


 あたしたちが部屋に入ってからすぐ、アンナさんがエルメリアさんに声をかけてくる。


「え、あのエルメリア様。よろしいのでしょうか? リアちゃん…… いえ、私や彼女らのような者を私室に入れるなど……」


 それ以上の言葉はつぐむアンナさん。


 ()()()()()って何さ、()()()()()って! プンプン! あたしはちょっと不快モードだよ。

 アンナさん、そんな言い方ないんじゃないの?


「アンナさん、今の物言いは無礼ですよ。あなた方の命の恩人に向かってそれはないでしょう?」


 あたしの意見を代弁するかのように答えてくれたエルメリアさん。ヤダ、気遣いできるお姉さんステキ。


「いえ、そんなつもりじゃ…… はい、その通りです。リアちゃ…… いえ、リア・ニゴレイアル様、無礼をお詫びいたします」


 アンナさんはご主人様に叱られた犬のように、しょんぼりとした顔であたしたちに謝ってくれた。なんか、イヤだなあー そういうの。ムズムズするよ、ヘンなカンジだ。


「あ~ 大丈夫だよ。気にしてないから、あとアンナさん今まで通りリアちゃんでいいよ」


「え、いや、しかし……」


 エルメリアさんを横目にうかがいながら困った様子のアンナさん。すると、エルメリアさんがさり気なくアシストしてくる。


「そうだわ、リアさん。リアさんのことを“リアちゃん”とお呼びしてもよいかしら?」


「あ、うん。いいですよ、そのほうが呼ばれ慣れているし。どーぞ、ドーゾ」


 あたしは喜んでエルメリアさんの提案を受け入れる。


「では、リアちゃん。それからお二方もどうぞそちらに掛けてくださいな」


 エルメリアさんに勧められたので、()()ともソファーに掛けることにした。白ではないけどベージュ色の上品な本革のソファーだ。とても座り心地がいいね、これもすっごく高そうだなあ。

 あたしはソファーに座るとユージィをひざに呼ぶ。


「ユージィ、おいで」


「ペイッ」(あいヨ)


 ぴょんとユージィは飛ぶと、あたしのひざに着地する。そしてユージィを前に向かせてそのまま後ろから抱きかかえた。エルメリアさんは、その光景がツボに入ったらしく、しきりに『ああ、可愛いですわ。とても可愛いですわ……』という感じでウットリしていた。


 やっぱペンギンの可愛さは誰でもわかるんだなあ。そういえば、この世界ってペンギンいるのかな? エルメリアさんは“獣”って言っていたよね? 知らないのかな?


 あたし達が座ったのを確認すると、エルメリアさんは本革のバンドで吊り下げた卓上ベルを鳴らす。それほど大きな音が鳴ったわけではないのに、しばらくすると廊下へ出ることができるもう一つの扉からメイドさんがお茶と茶菓子を運んできた。


 この卓上ベルって普通のものではないのかな? 魔法のベル? この世界、フツーに魔法とかあるらしいし。あ、昨日アンナさんたちと食事したとき、この世界の話をうまいこと訊き出したんだ。細かいところまで知ることはできなかったんだけどさ。


 メイドさんが運んできたお茶は美味しかった。お菓子もスコーンみたいなお菓子で上品なお味だ。でもやっぱりこの“あーまめんと”とかいう今のあたしの身体だと、イマイチおいしさが足りない。味はわかるんだけど、満足感を感じないんだよねー


 あたしたちはお茶菓子を楽しみつつ、雑談をしながらしばしの時間を過ごした。


 雑談の内容はとりとめのない事についてだ。ただ、その中でちょっとドキリとすることがあった。

 それはあたしたちの出身について訊かれた時のことね。


 咄嗟に訊かれて、あたしは慌てふためいてしまったんだ。宿屋で武子ちゃんと相談したんだけど、やっぱりあたしたちのコトは秘密にしたほうがいいという意見で落ち着いた。特にこの身体がもつCULO(ゲーム)のような力がバレるのは良いことではないからね。


 慌てていたあたしをアシストしたのは意外にも、いや、当然ではあるんだけど武子ちゃんだ。武子ちゃんはエルメリアさんに出身を訊かれ“北方にあるニホンという村の出身”と答えたんだ。


 武子ちゃんの答えを聞いたエルメリアさんは、納得したらしく『そうですか“クリーヴ”の出なのですか…… あなたの美しい黒髪やその顔立ちも頷けます』と言ったんだよね。クリーヴって日本人っぽい人たちが住む国なのかな?


 そして、頃合いだと感じたのかエルメリアさんはおもむろに口を開く。


「今日、皆様をお呼びしたのはお礼を申し上げる為だけではありません。わたくしの今回の依頼であったバジリスクの討伐。その真意をお話するためです」


「真意? なんですそれは?」


 武子ちゃんが問いかけた。エルメリアさんはあたしたちを見つめながら答える。その目にはさっきまでユージィと遊んでいたときのような優し気な眼じゃない。

 何か、強い意思があるような、そんな眼をしていたんだ。


「はい、わたくしがルルエラの剣の皆様に速やかにバジリスクの討伐を依頼したのは理由がございます。それは希少な素材の塊であるバジリスクを、他の冒険者などに横取りされないようにする処置を講じるためです。わたくしは父の病を治す薬の為、どうしても希少な“バジリスクの核”が必要だったからです。

 でも、もう一つ隠していた事があるのです」


「もうひとつって?」


 あたしが問いかけると、エルメリアさんはあたしのほうを見ながら答えてくれる。


「それは、“ゼーヴェパウダー”と呼ばれる薬を作るため“バジリスクの核”が必要だったのです。それはわたくしにとって一刻も早く必要だったから……」


 エルメリアさんは思い詰めたような表情を見せながら、絞り出すかのようにあたしたちに告げた。


 あたしは考える、エルメリアさんはひどく深刻な表情をしていた。その“ゼ―ヴェパウダー”とかいう単語を出した途端、悩みの原因を思い出してしまったかのように辛そうな顔に変化したような気がしたのだ。


「その、よくわからないのだが“ゼ―ヴェパウダー”というものは何なのでしょう? そして()()を作らなくてはいけない理由は」


 武子ちゃんがエルメリアさんに問いかける。エルメリアさんは一旦、あたしたち全員の顔を見た後、再び視線をテーブルの上に落とし何やら考え込むような仕草をすると彼女は語り始める。


「“ゼーヴェパウダー”とは遥か昔にあった“魔人戦役”の時代に作られた薬のことです」


 まじんせんえき? なにそれ? また知らないキーワードが出てきた。

 まぁとにかく、ゼーヴェパウダーというのは薬のことらしい。そっか、その薬で病気のお父さんを治すんだね。


 あれ? まてよ? 父の薬が必要って、さっき言ってたよね? 隠していた理由ってどゆこと?

 エルメリアさんはおもむろにカップに手を伸ばし、お茶をひとくちすすると、話を続ける。


「ゼ―ヴェパウダーの効果は病を治すためのものではありません。ゼーヴェパウダーは仙技士、魔術師、法術師など仙技使いと呼ばれる者たちの“錬仙量”を飛躍的に高めることができると言われております。

 魔人戦役において、多くの絶仙たちが魔人たちと戦ったと言われておりますが、とにかく魔人の力は強大であったとされております。

 魔人たちに対抗する為、創造神ゼ―ヴェの使徒である“神人(かみびと)”は、とある秘薬の製造方法を伝えたとされております。それが、絶仙へと至る薬、“ゼ―ヴェパウダー”です」


 言い終わったエルメリアさんは一度目をつむり、わずかな時間が過ぎるとふたたび眼を開いた。開かれたその瞳には、宿っていた強い意志がより力強くなっている気がしたんだ。


 エルメリアさんには、どうしてもその薬“ゼーヴェパウダー”が必要みたいだ。

 彼女の執念じみた意思を感じ取ってしまい、少し怖くなったあたしはお茶のカップに手を伸ばすと、そのままお茶をすする。

 

 お茶の味はしたけど、美味しいともまずいとも特に思わなかった。


 あたしの胸の中にあった、どうして彼女はソレを必要としているのか? という疑問が脳裏を過ぎった時、部屋の外が慌ただしくなっていることに気付く。


『おい、エルメリア! エルメリアは何処にいるっ?!』

『フ、フルレド様っ?! 落ち着いて下さい。現在、自室にてエルメリア様はお見えになったお客様と…… あっ! いけません! フルレドさまっ?!』


 ドスドスという足音がこちらに近づいて来る。そして足音の主は廊下の部屋の前に止まると、勢いよくドアを開けてきた。


「エルメリアァ!! 一体どういうことだっ?!」


 大声でエルメリアさんの名を呼ぶ、謎の男。エルメリアさんを呼び捨てにしてるってことは親しい人なのだろうか? でも、雰囲気的には違うような……。


「お兄様!? 一体何事ですっ!? お客様がお見えになっているのですよ! 無礼ではありませんか、すぐに退室なさってください!」


 エルメリアさんの両方の眉が釣り上がる、メチャクチャ怒ってるね。彼女のキレイな顔が台無しだよ。

 その原因を作ったこの男は誰なのさ一体?!


「そんなこと構うかっ! 聞いたぞエルメリアっ! おまえっ?! “絶仙会議”より召喚状を頂戴したそうじゃないかぁっ!? この俺様に報告しないとはどういう了見かっ!?」




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