表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/80

第60話 冒険者ギルド -side莉亜

 カスパート公爵の直轄領“アスターシャ”はドルフィーラ地方に属する領地の中では小さめなんだって。各地方を統括する“旧家”と呼ばれる諸侯が治める領地は大体小さいとか。理由は聞いてないや、ま、いいけどね。

 そう、カスパート家は旧家と呼ばれる歴史ある家系なんだってさ。

 

 あたしたちは、そんな歴史あるカスパート家が治めるアスターシャに訪れていた。


 カスパート公爵が住むお城を中心に広がる城郭都市は、ものすごいスケールだ。高さ10メートル以上はありそうな高さの城壁が都市全体を囲んでいて、壁の外には6つの城門が構えられているとか。アンナさんによると、城壁は周囲4キロメートルにも及ぶんだって。

 城壁の外には堀がうがたれていて、それを飛び越えるように城門には跳ね橋がかかっている。それは、まるでファンタジー映画の世界だ。

 城郭都市の外にも市街があって、城門の中が旧市街、城門の外が新市街というみたい。冒険者ギルドは城壁の内側、つまり旧市街にあるんだって。

 

 これだけ大きい街なら、ひょっとしたら、れーにぃたちのことを知っている人が一人くらいいるかもね。


 あ、そうそう。この世界では“メールト”という長さの単位が使われているんだって。地球の単位だとメートルと同じ長さになるらしいね。紛らわしいけど。



「おお~ すごいなっ! まるで映画じゃないかっ!」


 武子ちゃんは立派な城門を前に、感激しているみたい。城門の前には兵隊さんみたいな人たちがいて、門を通る人をチェックしているようだね。


「ペイペイッ、ペイッ」


 ユージィもどんな場所なのかワクワクしているみたい。ちなみにユージィはあたしに抱っこされている。周りは人が沢山いて、はぐれるかもしれないからね。


「それじゃあ、みんな行こうか。リアちゃんたちは、私の後に付いてきてね」


 アンナさんを後にあたし&ユージィ、そのあとに武子ちゃんが続く。ジャックさんとカントさん、ケントさんは新市街のほうに用があるらしく、アスターシャに入ってすぐに別行動となった。


 アンナさんは、首から下げた金属の板みたいなものを兵士に見せた後、あたしたち()()のコトを説明し、お金を払っていた。ひょっとして通行料なのかな? あ、あたしたちの分も代わりに払ってくれたのかも。兵士は通ってもいいと許可を出してくれたので、あたし達はアンナさんの後に続く。


「わお、すっごい! ハリウッド超大作! 全米ナンバーワン映画もビックリだ!」


 行き交う人の群れ! 歴史のある街並み! 風情あふれる景観に美少女すぎるあたしも思わず感激しちゃう。


「ペイッ?」


 あたしは、抱きかかえていたユージィを適当な場所に降ろすと、膝をついてしゃがみ込む。そして人差し指と親指をL字形にして左右の指を上下に重ね、それをユージィに向けて覗き込むと指ファインダーの完成だ!


 歴史情緒あふれる建物をバックにたたずむ宇宙ペンギン! なんてシュールな構図なんだろ。

 あたしはユージィに声をかける。周囲を見回していたユージィは、あたしの呼びかけに振りむく。


「ヘイ! ユージィ! チーズ!」


「ペイッ? ペイペイッ?」


 ユージィは『ん? リア、何やってるの?』と不思議そうな顔をしていた。あ、いや、ペンギンの表情の変化はよくわかんないけど、雰囲気でなんとなくね。


「あは~ ユージィ可愛い! も~ なんでカメラないんだろ! っていうかあたしのスマホどこ行ったのよお!」


 カメラがあれば、この街並みをバックにユージィの可愛い姿を撮りまくれるのに! なんていう失態!

 

「リアちゃん、ユージィちゃん、何をやっているの? 置いてくよー」


 アンナさんがあたしとユージィに呼びかける。


「リアちゃん…… 修学旅行に来ているワケではないのだぞ、物珍しいのは分かるが自重しないと」


 武子ちゃんが、お姉さんっぽくツマンないコトを言う。まあ年上なんだけどさ。武子ちゃん、頭もいいし、美人だし、メチャ強いし、おっぱいも大きいんだケド、お嬢様で世間知らずだからなのか少々天然ボケな所があるんだよね~ 正直、あんまりお姉さんな気がしないんだよ。


「え~ ツマンない。いいじゃん、ちょっとくらい」


「遊んでいる場合ではないのだぞ、早く新瀬たちを探さないと」


 そう言うと、武子ちゃんは行ってしまう。武子ちゃんは、あたしのようにこの機会を楽しむという考えはないみたいだね。

 れーにぃが相手だったら、もっと渋って駄々をこねているところだけど、れーにぃはいないのだ。ワガママ言える相手がいない以上、あたしは仕方なく立ち上がる。


「ユージィ、おいで」


「ペイッ」


 ユージィは、しゅた! と右フリッパーを挙げ答えると、ぴょんと軽く飛び上がり、あたしの胸に飛び込んできた。

 ユージィを抱きかかえたまま、あたしは二人の後を追った。




◇  +  ◇  +  ◇  +  ◇ 




 道行く人々とすれ違い、石畳の道路を歩いていく。歩きながら街並みを眺めていると、ある事に気付いた。

 レンガ造りの家が多いと感じたんだけど、特徴的なのはレンガの色が白っぽいのだ。木造建築の家もあるけどやっぱり白を基調とした家ばかりだ。これって何か理由があるのかなあ?


 アンナさんに訊いてみると、このアスターシャという領地は癒しの絶仙“聖女アスターシャ”の影響が色濃く残っているとか。ちなみに、白は癒しの色なんだって。

 聖女アスターシャは“法術師”と呼ばれる人を治療する職業だったこともあり、この領地には法術師が多く住んでいるとアンナさんは言う。


 アンナさんは、メインストリートらしき場所から外れ、旧市街でも少し人気の少ない場所へとあたしたちを連れ歩いてゆく。

 徐々に道幅が狭くなっていくにつれ、あたしたちは奥まった場所に向かっていることに気付いた。

 そして、ようやく到着した。古びた住宅街の裏にそれはあった。


「さあ、着いたわよ。ここがあたしたちの所属する冒険者ギルドよ。ちょっとボロいけどね、それなりに大きいでしょ?」


 建物自体は二階建ての木造建築でけっこうな大きさだった。できてからかなりの年月が経っているみたいで、チョットどころかかなりボロい。


「これが…… ちょっと?」


「な、なかなか風情といか趣があるというか…… 情緒漂う建物だなっ……」


「ペイィ……」


 武子ちゃんもユージィも言葉を選んでいるみたいだ。アンナさんの手前、チョットいいにくいのだけど。


「ま、まあまあ、中は割と綺麗だからね? ホラ、中に入るわよ」


 アンナさんにつづき、あたしたちは冒険者ギルドの建物に足を踏み入れた。両開きのスイングドアをくぐると、広いロビーが目に入る。


 実際、中は結構広かった。奥の方には受付らしきものがあり、カウンターの前にある待合所には椅子に座って待っている人たちが見受けられた。

 中にいる人たちは男女ともに目に入るが、誰もがカタギの人とは思えない目つきをしていた。


 男の人はスゴイ体格だったり、剣やら槍やら斧をもっている人がいた。女性は法衣っぽいものを着ている人もいるが、妙に露出が多い防具を付けている人が目立つ。う~ん、RPGの世界だねっ!


「それじゃあ、私はバジリスク討伐の依頼を達成したことを報告してくるから、ここで待っていてね」


 アンナさんはそれだけ告げると奥に行ってしまった。残されたあたしたち3人は立ち尽くしてしまう。

 あたしたちは互いに顔を見合わせると、手持ち無沙汰になったことに気付く。


「ねえ、武子ちゃん、ユージィ、待っている間どうしようか?」


「ううむ、そうだな……」


「ペイィ……」


 そのときだ、低く荒々しい下品な声が後ろから聞こえた。


「おい?! いつからここはガキと畜生がたむろする場所になったんだ?! どけい!!!」


 振り向くと、高場くんみたいに大きな男があたしたちの前に立っていた。2メートルくらいあるだろうか、顔には傷があって人相は恐ろしく悪い。きっとアタマも悪いような気がした。


「なんだぁ? この小さい畜生は?! 邪魔だぁっ! クソがぁっ!」


 大男は足元にいたユージィを蹴り飛ばす。


「ペイィィィ~」


 ユージィはポ~ンとサッカーボールのごとく蹴り飛ばされると、受付のカウンターの奥に飛んで行った。


「なっ?! あ、あんたぁっ!!!」


 あたしは瞬間湯沸かし器のように怒りが沸き上がってくるのを感じた。コイツ! 許さない!


「おまえっ! あたしの可愛いユージィをっ! 許さないっ! 土下座させてやるっ!」


 全身から湧き上がるムカムカを、あたしは抑えるつもりは無かった。


 れーにぃ、このアバターの力、こいつで試してもいいよねっ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ