第57話 大蛇 -side莉亜
「ね~ ユージィ~ れーにぃはドコにいるんだろーね」
となりをトコトコと歩くユージィを横目に、何となく言葉を投げかける。あたしの相棒であり、使役獣であるユージィは顔をこちらに向けて言葉を返してくれた。
「ペイ、ペイペイッ、ペイッ」
「え? ドコに居るかは分からないケド、あたしの事を大事に思っているのは間違いないから、今ごろ必死に探しているって? うんうん、だよねー」
ユージィは気を使ってくれているみたい。むむ、カワイイやつめ。
「新瀬か…… 本当に何処にいるのだろうな。いや、我々は何処へ行けば会えるのだろうか」
「さあねえ、パーティギルドの項目からメールを送る事が出来なくなっているんだよねー もし、送ることができればさ、れーにぃたちが迎えにきてくれたかもしれないのにねー」
武子ちゃんの言う通り、何処へ行けばいいのだろう。
あたしと武子ちゃん、そしてユージィの女のコ3人組は、アテもなく広い荒野を彷徨っているカンジだ。
「ペイ? ペイッ?! ペイペイペイッ!!!」
≪リア! あそこ見て! なんかスゴイのが走ってる!!!≫
ユージィが鳴くのと遅れて、視界左下のメッセージウィンドウに翻訳されたメッセージが表示される。
「え? ナニ? 何処?!」
「ど、どうしたと言うのだ?!」
「ペイペイペイッ!」
ユージィは右手…… じゃない右のフリッパーを上げて指さし…… フリッパーさしして方向を教えてくれた。ユージィの指した方向に、ものすごい土煙があがっている。
「な、何なのだ、あれは?! 何かとてつもなく大きいものが移動しているのか?!」
武子ちゃんが、ものスゴく驚いていた。
オーバーヘッドマップを最大縮小表示すると、あたし達から800メートル離れた先に、熱源反応を示す大きな赤い点が動いている。その赤い点は、CULOならば大型モンスターなどを意味するものだ。その大きめの赤い点の前に、4つの赤い点が動いている。
障害物の少ない荒野なので、土煙の方向を目を凝らして、よぉぉ~く見てみると馬に乗って移動する人間が4人、その土煙の前にいるみたい。
視点を戻し、オーバーヘッドマップを少しのあいだ眺めていたら、大きな赤い点から4つの赤い点は逃げているかのように見えた。4つの赤い点は…… 人間だよねぇ。この大きな赤い点は土埃を起こしているヤツなのかなあ?
「う~ん? なんだろうね? アレ。 ねえ、ユージィ、アレなんだと思う?」
「ペイペイッ」
「え? わかんないから見に行こうって? う~ん、そうだね! いってみよっか!」
あたしとユージィは走り出す! ただ歩いているのも飽きてた所なんだ。目の前で何かが起きてる以上、行ってみるのも悪くないよネ。
「え?! ちょっ、危ないのでは?! って!? リアちゃん?! ゆうじ?! ちょっとまってぇ~」
武子ちゃんは遅れて走りながら付いてくる。
あらためて思ったんだけど! やっぱり速いよ! このアバターの身体わっ!! 800メートル先なんてあっという間だネ!
近づいてみて分かったのは、すっごい土埃を巻き上げているのは、とっても大きな大ヘビだ。何アレ?! まるで怪獣映画じゃん!?
その大きな大ヘビに追いかけられているのは、馬に乗った4人の男女だ。
若そうな男の人が3人、女の人が1人。全員必死な顔をして、馬に乗って大ヘビから逃げているようだった。
うん、追いかけっこしているワケではなさそうだよネ。ここがユージィの言う通りCULOの世界ではないとしたら、いろいろ知りたいよネ。そうだ! せっかく人を見つけたんだし、あの4人のお兄さんとお姉さんに訊いてみようじゃないの。
全力でドデカ大ヘビから逃げている人たちに、あたしは近づくと、一緒に横並びに走りながら声を掛ける。
「やっほー お兄さんたち! ナニしてるんですかぁ! 追いかけっコですかぁ?!」
お兄さんたちは目を見開いて、驚いた顔であたしたちを見る。まるで信じられないモノを見たといったカンジだ。
「え、エエッ?! き、君!? なんでそ、そんなに速っ?! え、ええええ?!」
お兄さんたちは口をあんぐりと開けて呆然としていたみたいだけど、スグに首をぶるぶると振ると、正気を取り戻したかのように、あたしに向かって大声で叫んだ。
「き、きみっ! すぐに逃げるんだ! 喰われてしまうぞっ!? って、なんで馬と並走できるんだっ?!」
「え、なんでって? そりゃ走れるからだよ~」
「ええっ?! な、なんだよそれっ!?」
う~ 超絶美少女リアちゃんの推察によると、この人たちは大蛇に襲われているらしいネ。これは助けてあげるべきかな? あたしの身体はCULOとおんなじアバターなワケだし、なんか戦えそうだよね。
横を見ると、ユージィもあたしに並んで同じスピードで走っていた。しかもスッゴイ砂ぼこりをあげまくって! なんかスッゴカワイイ! ユージィの横には武子ちゃんが少し遅れて続く。
あれ、待てよ?! でも、どうやって戦うんだろ? わっかんないよ?! CULO と同じなら普通に戦えそうなんだけど。 だいたい、今、あたし武器もってないし? あたしの弓って何処へいったのよっ! しまった! こんなことになるなら、そーいうトコちゃんと調べておけばよかったっ! あたし失敗ッ!
頭を抱えながら“おーまいがっ”とかヤりたくなってきたが我慢する。そんなコトやっている場合ではないからね。
ん~? まてよぉ? あ、そうだよ! あたし【ビーストテイマー】じゃん!? ビーストテイマーは惑星獣を使役して、戦わせる事ができるワケじゃん! ということは、ユージィを……。
イヤイヤ、ダメダメ! こんなに可愛いユージィを大蛇と戦わせるなんてヒドイじゃん!
あ、アレ? でもあたし、CULOでは普通にユージィを戦わせていたよね。それをこんな状況になったからって、急に態度を変えるのも露骨というかなんというか……。
ん~ でも、一応聞いてみようかな?
「ねえ! ユージィ、後ろの大蛇! なんとかならない?! 追ってくるのを止めて欲しいンだけど……」
「ペイペイッ、ペイッペイッ!」
「え? お安い御用だって?! あツしに任せればアノ程度のデカブツ、お茶の子さいさい?! え? チョ、マテヨ! ユージィィィィ?!」
ユージィは凄まじい音と土埃を上げまくり、急停止すると思いきや、完全に止まりきる前に反動をつけて方向転換! そのまま大蛇に突っ込んでいっちゃった!
大蛇は人を一度に2、3人くらい余裕で飲み込めるほど大きく、体長は10メートル以上あるかもしれない。完全に怪獣だよ! ヤダ! ユージィがたべられちゃう!!!
でも、その心配は無意味だったみたい。
ユージィはトンデモない勢いで飛んでいくと、そのまま大蛇の頭にヘッドバッドをぶちかます!
これは…… 必殺! ペンギンスピアーだ!
スッゴイ音とともに、喰らった大蛇は派手に吹き飛んでいき、ズズン! と音を建てて地面に落下した。
そして大蛇は動かなくなった。ピクリとも動かない。
まさに一撃だ。 スゴイ! すごすぎる! ユージィってば!!!
「ペイッ、ペイッペイッ!」
ユージィはドヤ顔でこっちを振り向く。あたしの視界の左下にある、ユージィの翻訳メッセージ欄には、訳されたユージィのセリフが表示された。
≪どうヨ、リア。あツしにかかれば、お茶の子さいさいダロ!≫
あたしはふと思った。オチャノコサイサイってどういう意味? と……。




