第56話 ユージィ -side莉亜
「ユージィ…… だよね? あたしのコト、わかる?」
CULOの職業【ビーストテイマー】はCULOの舞台、惑星【ΣEZ550C】に生息する惑星獣を捕らえ、使役することが出来る。最大3体の惑星獣を育成することができるケド、通常時や戦闘時に使役できるのは一体だけだ。
「ペイペイッ!」
「あ……」
CULOでは、視界の左下に文字チャット欄があったケド、それは無くなっていた。そして、今は何か別のメッセージ表示欄に置き換わっていた。
≪やっほー リア。あツし、ユージィだヨ。あツし、リアに会えて嬉しイ!≫
「え、この表示されているメッセージって、ユージィの言葉を翻訳しているってこと?!」
「ペイ? ペイペイッ」
あたしの言葉に答えるかのように、ユージィが鳴き声? を出すと、新たなメッセージが表示される。
≪ん~? 何のコト? ワっかんないヨ≫
あたしは更に質問する。
「ねえ、ユージィにとって、あたしって、どういう存在?」
「ペイ、ペイ、ペイッ」」
少し遅れて、視界左下に翻訳メッセージが表示される
≪相棒、トモダチ。大事なナカマ≫
「あっ……」
やっぱりそうなんだ、この視界左下に表示されるメッセージ表示欄は、ユージィの言葉を翻訳しているんだ!
ヤバイ! ワクワクが止まらない! CULOだとユージィは、ただのNPCだ。戦闘中、いくつかのコマンドを組み合わせて命令することはできるケド、当然、自由な意思なんてない。こんな普通に会話することなんて、CULOでは出来ないコトだ。
でも、この世界ではできるんだ!
「ユージィ! おいでっ!!!」
「ペイィッ!」
思わず、あたしは両手を広げ、ユージィに来るよう催促すると、ユージィは、ぴょ~んというカンジで、あたしの胸に飛び込んで来る。
ぼすん! とユージィの重さを身体で感じた。身長と体重は幼稚園児くらいかな? 頭部から背中を経由し尻尾にかけて青色の羽色をしていて、フリッパーの外側も同様だ。おなかは真っ白で、胸の部分は薄く黄色がかかっている。
普通のペンギンより、シルエットは全体的にずんぐりとしていて、頭は大きめだ。やば、めちゃカワイイ。
CULOの設定だと、ユージィは宇宙ペンギンと呼ばれる種族の惑星獣だ。見た目の愛らしさから、使役獣の人気ランキングで1、2位を争うほどだ。
「う~~~ か・わ・い・いいッ!!!」
ユージィの羽毛はフサフサだ。現実のペンギンはつやつやしていて、あまり毛という感じはしないらしいケド、ユージィはきっと宇宙ペンギンだから、違うんだろうネ。ゲームに登場するキャラクターに、何を言っているんだって話なんだけどさ。
「ペイペイ、ペイッ」
「え? うんうん。あはは、おまえもカワイイって? やだなぁ、もー そんなホントのことを~」
「ペイィィッ、ペイ、ペイペイ」
「うん、そうだね。あははっ! いやいや、そんなそんな」
あたしはユージィとの会話を楽しむ。ゲームの登場キャラクターが現実の世界に現れて、あたしと遊んでくれる。
そんな妄想をしたのは、いつだったカナ? まさか、本当にそうなるなんてさ。う~ん、ヤバイ、なんて楽しいんだろ。
「あ、あの、リアちゃん……? それ、って? さっきまでCULOでリアちゃんの後ろをヒョコヒョコ付いて来た動物だよね? な、なんか会話してるみたいだけど?」
「うん、話せるよ。視界内に表示されるメッセージ欄に言葉が翻訳されるからさ。あと、動物じゃなくて、惑星獣。正確には宇宙ペンギンね」
「いや、そういうことじゃなくて……。なんていうか、その、ええと……」
武子ちゃんは何を言えばいいか戸惑っているみたい。ま、そりゃそうだ。あたしだって、こんなコトになるなんて予想外だったもの。
「なんだ……。これは、本当に…… CULOではないのか……」
武子ちゃんはヨロヨロとあたしに近づいてくると、あたしが抱きかかえているユージィのオデコ? の部分に触れる。
「この感触…… CULOには無かった……。これは、本当に…… 現実のことなのか? ゲームの世界が現実になってしまったのか?!」
武子ちゃんは深刻な表情のまま、その場に座り込んでしまう。あれま、これは大変だ。武子ちゃん、よっぽどショックだったのかな?
あたしはだいじょうぶ。ユージィもいるしね。
ホントにココがCULOの世界だったとしても、なんとかなるっしょ。だって、あたしには、れーにぃがいるもの。
「タケコちゃん、心配ないって。さっきギルドメンバーのチェックをしてみたらさ、れーにぃや他の人もオンライン状態になっていたんだよ。だから大丈夫! れーにぃが助けにきてくれるって!」
ギルドメンバーのオンライン状態を確認したからといって、れーにぃ達がこのCULOの世界にいるとは限らない。
でもね、何とかなる気がした。昔から、あたしに何かあると、れーにぃがいつも駆け付けてくれたんだ。今回だってきっと助けに来てくれるよ。
ま、スグに来てくれるとは限らないね。来てくれるまでは、あたしたちで何とかしないと。
「タケコちゃん、落ち込んでいる場合ではないよ。れーにぃたちが助けに来てくれるまで、自分たちで何とかしないとね」
「……う、うむ。そ、そうだな…… たしかに、助けにきてくれるのを黙って待つのは好ましい事ではないな。毒島家の女子たるもの、気概を示さねばな。うむ!」
武子ちゃんは、少しやる気を出してくれたみたいだ。うんうん、いいよ~ それでオッケー。
そうだよね、あたしもガンバらないと!
あたしは、武子ちゃんと比べるとかなり小さい胸を張り、空を見上げると、雲が殆ど無い青空が広がっていた。
あ、そうだ。ここがCULOの世界だったとしたらさ、一体どのあたりにいるんだろ? オーバヘッドマップで現在地を見ても、ロクに地名とかも表示されていないんだよネ。
「そういえばさー ココどこなんだろうね? ねえ、ユージィ~ いま、あたしたちってドコにいるんだろうね? ココが【ΣEZ550C】だとするならさ、一体どのあたりにいるのカナ?」
あたしは、さほど期待しないでユージィに話を振る。どころが、返って来た答えは、思わず驚いて飛び跳ねたくなるほどのモノだった。
「ペイ、ペイペイペイッ、ペペペイッ」
「え…… そうなの?! マジで?」
「ど、どうした? リアちゃん? その、ゆうじは何だって?」
武子ちゃんが興味深そうに、こちらを伺いながら訊いてくる。
あたしはユージィが言ったことを、一言一句漏らさず武子ちゃんに伝えた。
「あのね、ユージィはこう言っているよ。
ここはΣEZ550Cじゃないかも、だって。
なぜなら、辺りに存在する大気の味も質もまるで違うから、だってさ」
「……は?」
あんなトボけた武子ちゃんの顔、はじめて見たかもしれない。
あ、いま気付いた。CULOのアバターの顔ってこんなに変化しないということに……。
ユージィ :リア・ニゴレイアルの使役獣。ペンギンのような外観をしているが、現実世界に存在するペンギンとくらべると、ずんぐりとした体形をしていて、頭は大きめ。ちなみに性別は♀である。




