表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/80

第52話 GONIN -副長

 目前には、多種多様な武器を装備した五人の男が立ちはだかる。


 男達が装備している武器は、長剣、手甲、トマホーク、鉈、細剣、とバラエティは豊かだ。武器が統一されていないのは賊集団の特徴ではあるが、これは特殊すぎる。

 

 先日見た、B級ファンタジーアクション映画の敵ですら、もっと統一感があった。いや、あれは映画だからか? 予算の都合上、武器に統一性があるだけか? そういえば映画に出てくる賊のほうが、もっと汚かったというか、らしさがあるというか……。 


 こいつらは妙に洗練されていた。盗賊が何故、スーツなんぞ着込んでいるんだ? いや、正確にはスーツっぽい衣装か?


 前触れもなく、鉈の男と細剣の男が同時に攻撃してくる。思考の渦に意識を取られていたため、オレは一瞬、反応が遅れてしまう。

 

 しかし、幸か不幸か、二人とも連携を取るどころか我先にと争うように向かってきたので、オレは全速で駆け寄り相手との間合いを詰めると、それぞれ顔面に一撃ずつ叩き込む。

 こちらが相手にとって予想外の速さで動いたため、二人の意が崩されたのか攻撃は防がれることなく直撃し、男たちは地に崩れた。


 残りは長剣とトマホーク、そして手甲。オレの見立てでは手甲のやつが一番強いかな。


 続いて、長剣の男が向かってくる。意外にも一人でだ。

 こいつらは向かってくる順番をどういう基準で決めたのだろうか?


 男が振ってくる剣を可能な限り見切る。時折、当たったりもするが、損傷しない身体である以上、問題ないだろう。

 ぶっちゃけて言うと、最初からエレメンタルシューターで殺せばいいのだ。ただ、レシーカの目がある以上、あんまり派手な事はしたくない。もう手遅れのような気もするが。

 背後に目をやると、レシーカは固唾を呑んでオレの戦いを見守っていた。


 長剣の男はそれなりの使い手だった。剣術の基本が出来ていたし、仙技も錬仙功を使用し自身のスペックを向上させ、向上した己の身体能力と基本を大事にした剣術スタイルで地味に戦っていく。賊にしては真面目な剣だと思う。

 

 だが、それだけだ。


 この剣士は人体の急所や、切られた場合、出血量が多い箇所を狙って攻撃するのがお好みらしい。

 しかし、残念ながら、オレの現在の身体“アーマメント”は並の攻撃ではダメージは通らない。彼の攻撃は暖簾(のれん)に腕押しというようなものだ。


 焦った剣士は全体重を乗せた突きを繰り出してくる。これは読めていたのと、男にとって得意な技では無かったらしくキレが悪かった。突きを受け止めると同時に、首根っこ捕まえて力任せに頭突きをぶちかます。額に受けた痛烈な衝撃に、男は白目をむくと、もんどりうって倒れていく。


 長剣の男が倒れる前に、トマホークが飛んでくる。たまたま男が投げるモーションが目に入った為、かわすことは可能だったが、後ろで見ているレシーカに当たるかもしれない軌道であることを考慮し、やむを得ず手で受けることにする。

 


「ね、姐さん?!」

 


 思わずレシーカが声を上げるくらい、オレの手は思い切り刃の部分を掴んでいた。当然、ダメージはない。



「れ、錬仙功で体の防御力もアップしてるから……大丈夫」



 結構苦しい言い訳だ。誤魔化すように、オレは残りの二人に突撃していく。

 残るは手甲を装備した格闘系の男。そして元トマホーク男だ。


 手甲の男は、一瞬で間合いを詰めてくると、打撃を繰り出してくる。その連撃は徐々に激しさを増していき、拳の重さも上がっていく。ただ、やはりというか、オレの身体に通る程の威力はないらしい。


 オレは複合的(マルチプル)情報(データ)解析(アナライズ)を利用して軌道分析を行い、相手の拳を片手で掴むことに成功する。

 驚愕の表情を浮かべている男を力まかせに引き寄せ、頭突きをかますと男の身体から力が抜けていき、地に吸い込まれていくように倒れる。



「で、トマホーク君。どうすんの? かかってくるの? 武器持ってないけど、エモノはあるのか? ないならこいつを返そうか?」



 元トマホーク男が投げたトマホークを、オレは見せびらかすような仕草で軽く振る。

 それを受け、男は簡潔に答えた。



「一撃がモットー。取られたら、潔く負ける」



 男はそれを言うなり黙ってしまい、やがて身体を丸めるような体勢で座り込むと、そのまま黙ってしまう。



「なんだ、コイツはワケわからん」


「姐さん! スゴイ! アタシ、感動したっ! 姐さんの妹になりたいッ!」



 レシーカはオレに突進すると、そのまま抱き付いて離れない。



「すまん、もう妹はいるんでな。あと、離れて」

「え~ い~ じゃーん。可愛い妹がじゃれているだけじゃない!」



 だから、妹席はもう埋まっているんだって。

 そんな微笑ましいやりとりを断ち切ったのは、一人の男が発した情けない声だった。



「そんな…… 蜘蛛の子が誇る副長五人が…… たった一人の仙技使いにやられただとぉ?! しかも女ァッ?!」


「あ、あんた誰?」


「……蜘蛛の子の総長をしている者だ。それにしても、なっ、なんでこんなことが」



 この男は蜘蛛の子を率いる“総長”という肩書を持つようだ。賊のくせに妙に高価そうなスーツを着込んでいる。

  総長は、オレが五人の部下たちに蹂躙される青写真を描いていたみたいだが、結果は逆になってしまった。



「なっ、なんなんだお前は?! おかしいだろ?! 副長五人を一人で倒してしまうなんて!」



 正直な話、ブルカノ・ブルカン一人のほうが倒した五人より強かった。どうも、この副長とかいう役職は強さに関しては適当らしい。



「あのさぁ、ブルカノ・ブルカンのほうが強かったぞ。こいつら五人より」


「なにぃ?! 何故ブルカノ・ブルカンのことを知っている?!」



 ん? どういうことだ? どうしてこいつはルヴロ村が奪還された事を知らないのだろう? わずかに部下を逃がしてしまった為、逃れた部下が報告していてもおかしくないのに。



「え、いや。オレが倒したしな」


「バカな?! まさか、まさか! ルヴロ村を取り返したというのか?!」


「あれ? ひょっとして知らなかった?」


「き、きき、聞いていない! そんな報告は受けていないぞ!? そんな……そんなバカな!」



 男は頭を抱え、両膝をついていた。ルヴロ村の件は、かなりの衝撃だったらしい。


 オレは男のそばに近づくと、胸倉を掴み高く持ち上げた。身長差は10センチくらいあったが、問題なく持ち上げることができた。



「や、やめろ……。わたしはこれ以上戦う気はない……」


「おいおい、総長だろう? 頑張れよ! 一番偉いヤツが強いのじゃないのか?」


「先ほどの戦いを見て、おまえに歯向かうヤツはいないだろ!? 頼む! 見逃してくれ!!!」


 

 オレは胸倉を掴んだまま、総長を引き寄せる。

 そして彼に問う、答えなければどうなるか言い含めて。総長は怯えた目でオレの目をみつめていた。



「女性たちはどこにいる? 答えなければ殺す」




 


 


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ