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第47話 村民奪還 -2 

 その場にいた者、すべての意識が、オレに集中する。


 当然だろう、それまでこの場に居なかったはずの者が、突如、牢があるこの部屋に現れたのだから。



「て、てめえ、だれだよ?! 何処からでやがったぁ?!」

「な、なんだ?! 女ァ! いつの間にィ?!」



 二人の男は、ひきつった顔が戻りそうにない。まるで魔人か幽霊でも見た顔だ。


 驚くのも無理はない、本来ならば牢があるこの部屋は行き止まりだ。それなのに、まるで壁から出てきたかのように、銀髪の女が出現したのだから。



「えっ…… だ、誰……? ゆ、幽霊?!」



 赤い髪の娘が、血の気が失せたような表情をこちらに向けてくる。驚きすぎて腰が抜けたのか、尻餅をついたまま身じろぎ一つすらしない。ただ、真っ直ぐオレの顔を凝視していた。



「いや、幽霊じゃない。ちゃんとした人間だ」



 アーマメントと呼称するこの状態を、人間と呼んでいいか疑問だが、見た目と触れた際の感触だけはそう言っていいだろう。


 オレの言葉を聞いて安心したのか、賊のひとりが調子にを取り戻したらしい。



「へ、へへ……。驚かせやがって。女、おまえひとりか?」


「ああ、そうだ。オレ、一人だが」


「おう、そうかあ…… げへへ、それはそうと、いいカラダをしているじゃねえか!」


「ほほう……そいつはそいつは。……ウヒヒ、それに、よく見たらイイ女じゃねえかぁ!」



 CULOはSF設定のMMORPGだ。したがって武器や防具にはそういった要素が用いられているものが多い。ジスエクス・ニゴレイアルが装備している防具類も該当する。


 現在のオレの姿は、クロークの形状を変化させ、背中から垂らすような状態になっている。その為、露出の多い防具に守られた、ジスエクス・ニゴレイアルの肢体が見えてしまっているわけだ。



「どうだい? そんな幼さの残る女より、オレと()()()ぜ」


「ヒヒヒ、それはいい考えだな……。上の連中みたいに、肉付きのいい女のほうが、俺たちも好みだからな」

「まったくだぜ! やっぱそれなりに若い方がいいが、やはりカラダは成長しきったほうがいいからな!」



 上の連中? ここにいるのは20人程度。上の階にはさらにいるという事か?



「ほう、とするとオレは好みに合うというわけか? ところで、上の連中とはどういうこと? 誰かいるの?」


「ああ、村から連れて来た女どもとお楽しみ中だ。俺たちには回ってこなかったんでな、しょうがないからこっそりと、こっちの若い女で我慢しようと思ってたんだがなぁ…… へへ、ツイてるぜ」



 どうやらコイツらには、いきなり現れたオレを警戒するという発想がないらしい。本来なら拘束して調べるのが当然なのだが。

 一見すると、武器の類を()()()()()()()()()見えるとはいえ、それでも緊張感が無さ過ぎる。



「へへ…… おっと、抵抗はするなよ? 暴れるんじゃねえぜ、そうすりゃ優しくしてやるよ。ゆっくりと調べてやるからなぁ……ヒヒヒ」


「そうだぜぇ? おとなしくしてりゃ楽しませてやるからよぉ? マジでツイてるなぁ、上で見せつけられたせいで溜まっていたからよぉ!」



 2人の男は獣じみた目つきでオレをみながら、厭らしい顔つきで迫るや立ったままのオレを挟み込むと、2人してこちらの身体をまさぐり始めた。



「おお、細身かと思いきや、これはなかなか!」

「おほほぉ! 足の肉付きがたまんねえぜ! これは俺好みだぁ!



 二匹の獣はオレの身体を貪ろうとしていた。


 かくゆうオレだが、いくらまさぐられようと、()()()()()()はまったく湧き上がってこない。


 まるで感じないのだ。せいぜい、もぞもぞと虫か何ががはい回る程度だ。どっちにしろ不快なので、潰す。だが、その前にやることがあった。



「おい、こんなところでやるのもナンだし、上に行こうぜ。ベッドがあるからよ」

「へへへ! ちょっと汗臭いが、ここよりはマシだろ? ホラ、行こうぜ」



 二匹の獣はオレに誘いかけてくる。それに対して答える前に、オレには訊くことがあった。



「なあ、ちょっと訊きたいのだけど、こんな事していていいのか? 誰かが、この場所に襲撃を仕掛けてくるかもしれないだろ? 警戒はしなくていいのか? 村から女たちを連れてきたんだろ?」


「ああ、いいんだよ。ここの領主とは話がついているんだ。騎士たちも誰も、ここには寄り付かねえ。俺たちの支援者は力をもっているお方でな、俺たちは安心して稼業に励めるってワケなのよ」



 なるほど、やはり領主は黙認しているわけだ。



「その支援者って誰なのさ?」


「へへへ、俺たちも知らねえんだよ。ああ、総長(そうちょう)なら知っているかもだが」


「総長?」


「ひっひひ、俺たち蜘蛛の子の長さ、頼りがいのあるいい男だぜ。おいおい、質問攻めかよ、なあ、もういいだろう? 俺ら我慢できねえぜえ?!」



 二匹の獣は涎を垂らす勢いだ。溢れ出さんばかりの醜悪な劣情をオレに向けている。


 こいつらは大したことは知らないようだ。ここは“総長”とかいうヤツを探し出し、訊き出すしかないだろう。


 さて、こいつらは用済みだ。殺すか。

 いや、待て、盗賊や野盗の類は大抵懸賞金がかかっている。できるだけ生かしておいて、冒険者ギルドや騎士団などに引き渡したほうがいいだろう。そうは言っても、ここの領主と蜘蛛の子は繋がっているから、ギルドに引き渡すのが無難だろう。



「ああ、上に行くんだっけ? いいよ、行こう。ただし、お前らはココでお留守番だがな」


「あ? 留守番だ、どういうこ……」「え、何言って……」



 2人が言い終わる前に、それぞれの衣服をがっちりと掴む。


 CULOのSTRランキングにおいて、意外な事に上位クラスにいるほどに、ギャラクシーハンターの膂力は高い。唐突な反応と予想外の力に、ふたりは暴れるが気にせず無理やり捕まえると、オレの背中側に位置する壁に放り投げる。


 ふたりの賊は猛烈な勢いで壁に衝突すると、当然の如く跳ね返り、地面に叩きつけられた。


 両方ともピクリとも動かなかった。生きているかも死んでいるかもわからなかったが、既に興味がないので、いちいち生死を確かめることなどはしない。


 その様子を見届けると、オレはPVCの回線を開き、オヤジウス(桜野)と連絡を取る。

 すぐに通信許可が下り、桜野の声が聞こえてきた。



《ハァい♪ おワタクシのセクシーボイスはいかがかヨン?》


《くだらんボケはいらんから、始めてくれ。渡しておいた()()は用意してあるよな?》


 

 ()()とは前にタブサたちが持ってきていた資材から、いくつか失敬してきたものだ。

 桜野に使い方は教えておいた。きっと、大丈夫だろう。桜野は器用なやつなのだ、学業もオタク趣味もボランティア活動も立派にこなしているほどなのだから。



《大丈夫ヨン。ところで、アレさ、本当に殺傷力は無いんだろうね? おワタクシ、人殺しはしたくないのだけど》


《大丈夫だ、多分。それに、おまえさんの仕事は注意を引きつける事だ。ムリに使わなくてもいいし、とにかく適当に逃げ回って、時間を稼いでくれたらいい》


《わかったのヨン。これから始めるわヨン》

《たのむわ》


《あ、お約束を忘れてた。おワタクシ、この仕事が終わったらホモ……》



 何を言うか内容までは分からなかったが、下らない事であるのが予想される為、PVCは切断する。


 さて、次はこの子たちだ。

 こいつらを連れ、この場所から脱出する。オレは誰か話せそうな者を選ぼうと、見回す。



「ね、ねえ! あ、あんた!」



 だが、オレが声を掛ける前に、赤髪の女の子が話しかけてきた。


 背丈はオレ、ジスエクス・ニゴレイアルより、少し高いくらい。白い下着姿の肢体は筋肉質で締まっているが、きちんと女性らしい部分は豊かだ。見た目は10代後半といったところか。


 顔は美人と言っていいが、幼さが残る顔立ちのため、まだまだ可愛いという表現が似合うだろう。彼女は、まだ緊張が解けないのか、緊張した面持ちでオレに問いかけてきた。



「ね、ねえ……。訊いていいかな? アンタ……何者なの?」



 オレは答える。この世界での存在としての名前を。



「ジスエクス・ニゴレイアルだ。きみたちの救出を頼まれた者だ」



 彼女の表情に浮かんでいた不安の色が、徐々に引いていくのが見て取れた。


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