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第30話 スキルブースト  -side零司

ブックマークが50件を越えました。入れて下さった方、ありがとうございます。

これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします。


今回の出だしはオヤジウス視点です。

その後、主人公に変わります。

「おかーさん! 死んだらヤダ! イヤだよう!!!」



 エニャは泣きじゃくる。

 血まみれなった母親の身体、息絶える寸前の身体にしがみつきながら。



 ボクはEF(エーテルフォース)(ポイント)の残量を確認する。

 低級の回復系EFスキル2回分ぐらいしか残っていなかった。


 かまわない。


 いいじゃないか、つかってしまえ。


 残り2回分なんて、無いも同じだ。

 あとで、レイジが何か言ってきたら『ウフッ♪ 思わず使っちゃった、おワタクシのうっかりさん♡』とか何とか言ってボケておこう。

 正直、そんなボケをやれるほど心に余裕はないけど……。


 レイジは怒るだろうけど、目の前の光景はなんとかしたい。


 ボクは【慈愛(アフェクション)のそよ風(ブリーズ)】を使用する。

 対象は単体、回復レベルは最小回復量のLev.1で行う。

 いや、行うしかない。EF(エーテルフォース)が少ないから上級のLev.3は使えない。


 ボクの身体が鮮緑色の光を帯び、小さな閃光と同時に緑色の光の雨が、瀕死のジェーニャに降り注ぐ。


 負っていた傷口はすべて塞がっていった。

 そう、塞がったはずなのに……。



「エ……ニャ……ぅ……」



 ジェーニャの目から光失せていく……。

 命の輝きが失われたのだ。



「そんな?! 間に合わなかった?! どうして?!」



 先ほど集められた住民の中にも、瀕死の者はいた。手足を失い、内臓が露出していたような重症者でも傷が癒えて、命を取り留めたのに?!



「おかーさん! おかーさぁぁんッ!!!」



 エニャは母親の体を揺さぶる。だが、もう、その肉体は何も答えなかった。

 

 少女は慟哭する。

 そして、ボクの足にすがりつき、涙と鼻水とでぐしゃぐしゃになった顔を向けて懇願する。



「おねがいです! ほうじゅつし様! おかーさんを生き返らせて! おねがいです!!!」



 エニャは絶叫する! この世界の法術というものは、人を蘇らせることができるかは知らないが、今のボクにはできないことだった。


 ただ、何かしたいと思った。もう一度、最後のEF(エーテルフォース)スキルを使用する。

 無駄なことはわかっていた。でも使う。


 先ほどと同じ【慈愛(アフェクション)のそよ風(ブリーズ)】を使用する。

 いま使えるのは、Lev.1の最小回復量しかないものだけだ。


 小さな閃光と同時に緑色の光の雨が、遺体となったジェーニャに降り注ぐ。

 なにも起きなかった。


 少女の母親はこの世を去ったのだ。



「ごめん、もう使えない。ボ……()()()()()はこれ以上、法術は使えないんだ、ごめん、ごめんね……」



 ボクの言葉を聞き、エニャは崩れるように母親の遺体に顔をうずめて泣き叫んだ。


 やるせない気持ちと同時に虚無感に襲われた。

 人が死ぬのを、こうして見るのは初めてだった。


 ボクは幼いころから、両親に言われていることがあった。

 『困っている人がいたら助けてあげなさい。それはきっとおまえにとって幸せなことに繋がるから』


 自分の幸せに繋がるから、だからこそ人を助けるのだ。

 倫理観がどうとか哲学的だとかそういうのではない、自分も幸せな気持ちになれるから。だからこそなのだ。


 でも、助けることができなかったら? そのときはどうするのか?


 考えたことはあったが、そこまで深く考えたことは無かった。

 今、まさにそのときじゃないか。


 助けることができなかったら、それは自分が苦しいことになるのだ。


 この世界にきて、CULOのキャラクターの力を持つはめになって、最初は浮かれていた。

 なんとなく道中を旅して、行く先々で人助けをして何か幸せで楽しかった。


 そしてその行く末がコレだ。


 母親の亡骸を前にして、ただただ泣き続ける少女にボクは何もかける言葉が見つからなかった。


 ごめんなさい。

 ただ、それだけしか言えなかった。


 ふと、あることにボクは気付く。視界右下のインジケーターが変化していたのだ。

 右下にあるのは【スキルブースト】ゲージだ。そのゲージが満タンになった為、青白く点滅しているみたいだった。


 ええと、これはなんだっけ?


 ああ、そうだ……これは……。




【スキルブースト】

レイジたちが引退したあと、CULOには大幅アップデートが入った。スキルブーストはそのときに追加された新要素のひとつだった。


 EFスキルを使用すると、そのたび【スキルブースト】ゲージが少し増えるのだ。先ほど、住民たちを治療しまくった為、最大まで溜まったのだろう。


 そして最大まで溜まると、すべてのスキルブーストゲージを消費する代わりに、スキルブーストに対応可の任意のEFスキルを強化して、使用することができる。

 その際、EF(エーテルフォース)は一切消費することはない。


 つまり、EF(エーテルフォース)(ポイント)がゼロでも一度だけ任意のEFスキルを使うことができるのだ。


 そして強化には特徴があり、SG(スキルグレード)が低いEFスキルほど強化率が高くなり、強力なEFスキルとして使用できるようになる。


 また、強化された一部のEFスキルは、通常時とは違い()()な効果が追加されるものもある。



ドクン!



 心臓が高鳴った。


 そうだ、忘れていた。


 レイジ達、ギルドに所属する多くのCULOプレイヤー達が引退したため、新要素であるスキルブーストについてはさほど調べてはいなかった。

 ギルドのプレイヤーと冒険することが無くなったせいで、熱意が薄れたというのもある。

 なにせ、ログインボーナスを受け取るために毎日ログインするか、たまにクラフトをやるくらいで、たいしてプレイしていなかったのだから。


 もし、もしこの溜まったゲージを使用していずれかの回復系EFスキルを使用した場合、何が起こるのか?

 ひょっとしたら、エニャのお母さんを生き返らせることができるのでは?


 いやいや、死んだ人間を生き返らせるとか、バカじゃないのか?



 そもそもCULOでは、どの回復職もプレイヤーキャラクターを蘇らせるEFスキルは持っていない。

 プレイヤーキャラクターが死んだ場合、そのまま強制的に拠点であるステーションに戻される。


 設定では、ステーション内に記録されている最新のプレイヤーデータから、新たに肉体を構成するという、想像するとちょっと恐怖を感じる仕様になっているのだ。さすがSF設定。


 もし、戦闘中に死んだ場合、どうしてもその場で蘇りたいときは課金アイテムである【蘇生薬】を使用しなければその場で復帰はできないのだ。



 だけど、ゲームのキャラクターになって別世界に転移するとか、妄想も甚だしいことが現にこうして起きているのだ。可能性はある。


 スキルブーストされた回復系EFスキルを使えば、蘇らせることができる可能性は無いわけではないかも?


 ただ、スキルブーストを使った場合、どの回復系EFスキルがどういう効果が追加されるのかを、ボクは知らない。


 これは推測と運でやるしかない。


 おまけに、スキルブーストには時間制限がある。

 EFスキルを使用せず一定時間を過ぎると、スキルブーストゲージは消失する。これは最大まで溜まってようが関係ない。

 一定時間以内にEFスキルを連発することで、ため続けることができる、そういう仕様だったハズ。


 そうだ、早く使わないと。


 でも、どうする?! どれがその効果があるのか……。


 ボクは焦りながら悩む、時間は迫っているのにもかかわらず……。







◇  +  ◇  +  ◇  +  ◇ 



「低燃費でいくハズが……。なんでこうなった」


 オレはイラついていた。

 安定してEFを回復させる手段がない以上、可能な限りEFスキルは使いたくないのだ。


 だから、どうにかしてEF(エーテルフォース)をできるだけ消費せず倒せるか考えたハズなんだが、結局使いまくってしまったのだ。


 昔からオレは感情に流されやすい、ホント、バカだなオレは。


 それでも狂獣を倒せていたら、まだマシだったろう。イラつきもそこまでではなかったかもしれない。


 だが、最悪なコトに、目の前にはクソでかい熊のバケモノが堂々と立っているではないか。

 しかも狂獣は、元気よく背中からウネウネと何本もの触手を生やしており、気色悪いことこの上ない。




「クソ……狂獣めが、昔のオレならば一撃で屠っているぞ!」




 あ、負け惜しみ感がすごいコレ。



 どうしよう、EF(エーテルフォース)はほとんど使ってしまった。


 だってだって、しょうがないじゃないか?!


 CULOにおけるギャラクシーハンターのポピュラーな攻撃方法は、至近距離で散弾射ち(ショットアロー)を連射するのが、一番効率のいいダメージ方法なんだよ!



 CULOというゲームの戦闘システムにおいて、一度の攻撃につき敵に与える最大ダメージは9999までしかカウントしない。

 だので、一度の攻撃が単発で攻撃の発生に時間がかかる技より、威力が半分以下でも連発できる技のほうが強いことになるのだ。



 それにこのアーマメントとかいう能力は、なんとなく強いと感じたのにもかかわらず、まさかここまでダメージを与えられないとは思わなかった。


 この狂獣相手にギャラクシーハンターが相性が悪いのか? いや、所詮ゲームのキャラなワケで……。

 あああ!!!!! ムカつくわ! どうすりゃいいのよ!

 

 腹立ち紛れに、一発! 散弾射ち(ショットアロー)をぶち込む。

 やはり、効きは悪いようだ。



 そのときだった、妙な音声が頭に響いたのだ。


≪スキルブーストゲージが最大値になりました。一定時間以内に、任意のEFスキルに適用してください。使用しなければ、スキルブーストゲージは消失します≫



「う、うわっ、なんだよ?!」



 思わずうわずった声が出てしまう。


 だが、すぐに冷静さを取り戻す。その声には聞き覚えがあったからだ。

 それはCULOの標準設定だとお馴染みのサポートガイド音声だ。


 その昔、サポートガイド音声がウザかった為、設定をいじってすべて切ったハズなのだが、どうやら新要素であるスキルブーストに関しては設定していなかったため、読み上げてくれたらしい。


 スキルブースト? なんだったか、たしかEFスキルを使いまくったら溜まっていくとかなんとか?


 そういえば、桜野(オヤジウス)が言っていたな。

 

 スキルブーストはSG(スキルグレード)が低い下級職のEFスキルの威力を、飛躍的に高めると。

 そして、追加で特殊な効果も追加されると言っていた。


 だが、攻撃職にとって一番ありがたいのが別にあると言っていた。

 そう、それは……。


 それは、使用してから発動まで時間が掛かり過ぎるEFスキルが、一瞬で発動するようになるということだ。


 つまり、さっき使おうして止められたアノ技が瞬時に使えるというコトだな。



 よし、いいだろう。時間もないし、やってやろうではないか。


 ぶっつけ本番だけど。



 ところでさ……。


 このスキルブーストってどうやって使うんだ?



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