第29話 狂獣 -4
レイジ(ジスエクス)視点です。
オレは狂獣に追われながら走り続けていた。
「ああ、もう! ホント飽きないなコイツ! ちょっと一発喰らっただけでそこまで執着するかね?!」
コイツは一応熊らしいし、熊は獲物に執着するって言うしな。
本当にしつこい、いい加減疲れてきた。精神的に。
林を抜けても狂獣は木々をなぎ倒し、追いかけて来る。
林を抜け暫くすると、沢が見えてきた。
よし、ここで戦おう。
狂獣め、ここがお前の墓場だ。
終わりです、終わり!
「おまえ! いい加減にしろよコラ!」
振り向きざまに一発お見舞いする。
EFスキル、散弾射ちだ。
白色の粒子がエレメンタルシューターの発射口に集まっていき、10発の光芒の矢が放たれる。
当然、全弾命中するが、相手の勢いは止まらない。
ただ、狂獣は一瞬目標を失ったらしく、オレの横をすり抜けて細い川に頭から突っ込む。
水面が爆発したように川の水が迸る。
狂獣は水浸しの大きな身体を起こし、振り向くと妖光を放つ眼でオレを捉えた。
言葉を発さなくても分かる。
コイツは怒っていると。
だが、ちょっと想定外だった。
赤尾狼は一撃で倒せた。
コイツはやっぱそうはいかないらしい。
狂獣は凶獣を圧倒的に上回るのだ。
そして更に想定外、散弾射ちが命中した部分が、現在進行形で回復しているのだ。
「おいおい、おまえ、そんな機能ついてたっけ?」
遥か昔、コイツを駆除したときのことを思索する。
え~と? なんだっけ?
あ、思い出した。
当時は一撃で倒したのだ。
そのときのオレは、それだけの力があったのだ。
さて、どうしよう。あんまりEFスキルは使いたくない。
やっぱ、更に逃げてコイツをまくか? いや、コイツの足の速さから逃げようと思ったらEFスキルを使わないといけない。
それも結構な消費を覚悟しなければならないかも。
それにコイツがさっきの集落に戻って、獲物を取り返しにいく可能性もある。
うむ、やっぱり倒そう。
それが一番いいように思えた。
しかし即時発動できるEFスキルでダメージを与えられるものなのか?
散弾射ちでは大したダメージは与えられなかった。
しかし、CULOではこの散弾射ちを至近距離で連発することで、大型ボスなどに大ダメージを与えるのが弓系職のポピュラーな攻撃方法だった。
ただ、連発しまくれば EFPを消費しまくることになる。
できれば一撃で決めたいところだが……。
突如、狂獣が突撃してきた。
考え事をしていたせいで、反応が遅れてしまい、オレは突撃をモロに受けてしまう。
華奢な女の身体が吹き飛ばされ、宙に舞いながら木に激突した。
これが普通の人間、もしくは並の仙技使いならば衝撃だけでバラバラになっていただろう。
だけどこのアーマメントとかいう肉体が受けたダメージは、それを数値で表しただけだった。
オレの身体は五体満足だ。
どこも傷ついてはいない。
ただ、数値上で表されたダメージを喰らっただけ。
オレのHPは最大値が4200。
それが現在は3900だ。
ダメージ値から考えると、相手のレベルは70くらいか?
いやいやイカンイカン、これゲーム脳だな。
レベルなんて概念はゲームの世界だけだ。
現実はそんなに単純じゃない。
これがCULOならばオレのレベルが115で敵のレベルが70とした場合。
こちらの攻撃が相手に与えるダメージは相当なはずだ。
相手の攻撃は大したダメージじゃないが、こちらの攻撃もあまり効いていないように感じた。そもそも相手、回復するし。
やはり、一発で倒さなければ。
EFPの効率の面でも。
ここは万が一の事を考えて、最大火力で行こうと思う。
どうせ、相手の攻撃は大したダメージにはならないのだ。
だったらギャラクシーハンターの単発最大火力である【極限光射】で決めてしまおう。これなら、一撃だろう。
EFP消費も全体の三分の一で済む。
早速EFスキルランチャーから【極限光射】を選択、エレメンタルシューターを構える。
全身が発光し、光の粒子が空に昇っていく。
チャージ時間が恐ろしくかかる技なのだ。
が、しかし。
そんな暇は与えないとばかりに特攻してくる狂獣。
いやいや、アナタさぁ、そんな攻撃かわせますから。
オレは回避しようとするが……。
アレ? 動けないのですが? なんで?
当然、オレは吹き飛ばされる。
衝撃は感じるが、痛みはさほどない。
このアーマメントという身体はそういう苦痛を和らげる仕様らしい。
ありがたい。
吹き飛ばされ、オレは地に転がった。
同時に思い出す。
あ、そうか。このスキル、発射までの待機時間中その場から動けないのだった。
めったに使わないEFスキルだから、忘れていた。
だからこそ使わない、死に技なのだが。
待機時間中に攻撃を受ければ、当然、EFスキルのオーダーはキャンセルされる。
【極限光射】は使えないということになる。
どうしよう、相手のダメージは大したことないのにも関わらず、こちらの与えるダメージも大したことがないという。
これ、泥仕合になるのでは?
しかも倒せそうな技は、邪魔されて使えない。
もし敵を引き付けるオトリ役がいれば、使えなくもないのだが……。
う~ どうすれば……。
狂獣は待ってくれなかった。背中からいくつもの触手をふりまわし、オレに当てようとしてきた。
バックステップで回避、触手は地を大きく穿った。
実は、この触手とんでもなく威力があるようだ。
余計なダメージを喰らいたくない為、オレは必死に回避する。
幸いこの身体ならば、回避することは十分可能らしくダメージを喰らうことは無かった。
だけどね、イライラしてきた。
今後を考えてEFゲージを温存しておきたいワケだが、なんていうか……。
そう、イラつくのだ。
どうしてこんなことに? そうだよ、エリスの依頼を受けなければこんなことには、ならなかったのでは?
あの時はどうかしていた。
桜野を見つけたからなのか、どういうわけか高揚して気分がよかったのだ。
それでつい、関わってしまったのだ。
くそ、他人に関わったらロクなことがないじゃないか!
くそっ! くそっ! 厄介ごとばかり抱え込むんだよ結局!
こっちは妹と仲間を連れて、地球に! 日本に! オレの住む街へ帰りたいのだ! こんな世界には居たくないのだよ!!!
ああ、もう! 面倒だ! 知るか!
CULOと同じく、散弾射ちを至近距離から連発してやる。
ゲームと同じやり方で行こう。
とにかく射ちまくってやる!!!
コイツを倒すまでな!




