第22話 苛立ち -side零司
どうも、展開がダラダラしているような気がします。
もう少しテンポよくして行きますので、どうかよろしくお願いします。
あと、ブックマークが増えていました。うれしいです。
入れて下さった方、ありがとうございました。
これからも頑張ります。
町長の家は、なかなかにして立派なものだった。政治的な付き合いで色々な人間が訪れる以上、そうヘンな作りにもできないのだろう。
キチンと客間もあり、おそらく夫婦客を迎えるための部屋と、複数用の部屋があるようだ。
エリスと専属侍女リディアが夫婦用の部屋。オレと3人の侍女たちが複数客の部屋に宿泊することになった。
いや、若い女の娘と同じ部屋に泊まるのは、あくまで護衛のためだ。エリスがいる部屋のすぐ隣にあるのだから、護衛としては当然だろう。
オレが特に希望したワケではない。部屋割りはエリスが決めたのだ。オレはそれに従っただけだ。
雇い主に従うのは当然のことだな。うん。
夕食は町長邸でとることになった。町長の名前はグラガという。
グラガ町長は57歳で、胡麻塩頭が特徴的な老人だ。10年前からこの小さな町、プルートの町長を務めている。町民からの評判はいいらしい。
そのグラガ町長の妻、ラウメは50歳。夫と同じく白髪交じりの髪を揚げ巻きにして、結いあげていた。
エリスは迷惑になるからと、町にある食堂兼居酒屋で食べると言ったが、グラガ町長が是非おもてなししたいと言うので、押し切られたカタチとなった。
騎士たちと侍女3人は、その食堂兼居酒屋で夕食をとるそうだ。
グラガ町長邸で夕食をとるのは、エリスとリディア、そして何故かオレとオヤジウスだった。
エリスが希望したらしい。
それをグラガ町長は快諾したというから、驚きだ。オレたちはただの雇われ護衛者だというのに。
どうやらエリスが、詳細は伏せた上で前もって説明したらしく、たまたま出会い、命を救ってもらった事や、オレと桜野が類まれな仙技使いであることを聞くと、ぜひ話を聞きたいと、同席を許可してくれたという。
だが、何よりも本当の理由は桜野が法術師であることが大きいらしい。
この世界で法術師は一目置かれる存在だ。他人を癒す仙技は習得が難しく、やはり医療技術者というのは、どの世界でも貴重な存在だということだ。
予感はしていたが、遠回しに町にいる病人を診てもらえないかと、せがまれた為、桜野には悪目立ちしないよう、最低レベルの回復用EFスキルを使うよう厳命した。
あと、いずれ調べるつもりだったが、CULOとこの世界でのEFスキルの仕様の違いを、調べるようにとも付け加えておいた。
桜野はオレの言に得心がいったらしく、『わかってるヨン。おワタクシもそうするつもりだった』と答えた。
当初、桜野の姿を見た人は、みんな驚き、中には後ずさりする者もいた。
だが、ケガや病気の者たちを治療する光景を見ると、その態度は変わっていき、ほとんどが好感を持ったようだ。
中には『後光が射していらっしゃるようだ』と桜野に手を合わせる者もいたが、個人的には、どこからどう見てもキモヲタデブ以外の何者にも見えなかった。
やがて、夕食の時間になり、オレたちは町長からもてなしを受けていた。
テーブルについているのは、オレと桜野、そしてエリス。この町の人間では、町長とその奥さん、そしてエリスを町長邸へ泊れるよう配慮してくれた奥さんとその娘エニャ、そしてもう一人。
奥さんの旦那さんである、グリド。
グリド一家の同席は、これもエリスが希望した為だ。
食事は和やかに進んだ。
食卓に並んだ料理は、領主であるエリスから見ればさほど御馳走という程のものではないだろう。だが、町の居酒屋では出ない料理たちが並んでいた。
グラガ町長の妻であるラウメが料理を作ったのだが、エリスの専属侍女であるリディアが手伝った為、このような田舎では出てこないような洒落た料理がいくつも並んでいた。
だが、メインディッシュはこの町の名物だった。
この近くの川で採れた大きな川魚が、テーブルの真ん中にデン! と大皿に乗ってひときわ目立っていた。
この川魚は、糸魚と呼ばれていて、名前とはかけ離れた大きな魚だった。
生態の都合上、初春から晩春のあいだ、生殖活動後の痩せ細った個体が目立つためこういう名前が付いたそうだ。
なかなか捕れない川魚であり、なにより高価な魚らしく、これを調理して出してくれるということは、この町で精一杯のもてなしだと分かる。
まるごと一匹、とても大きい魚のため、炭火で中に火がしっかり通るようじっくりと、そして皮が焦げないよう慎重に、かつ丁寧な火加減で調理されており、単純な焼き魚の類では無かった。
糸魚は全長50セチルはある大きな川魚のため、グラガ町長の妻、ラウメが切り分けてくれた。
川魚は独特の匂いがあるものだが、この糸魚はまるで嫌な香りがせず、魚特有の臭みも無かった。
ひとくちサイズに切り分け、口に含むと上質な脂と柔らかな肉質が食欲を刺激する。
咀嚼すると、脂と肉が混ざり合い至福の時を与えてくれた。
これはごちそうだ。素直にそう思った。
日本の魚だと、トキシラズのようなサーモン系の魚に近い味かもしれない。
そして何よりも炭火でパリパリに焼いた、皮が絶妙だった。
皮の裏についた脂がたまらないのだ。酒の肴にぴったりだった。
ちなみに出された酒は、ぶどう酒だった。
この町で作っているものらしく、貴族が飲むような高級な葡萄は使われてはいなかったが、飲みやすく食事をしながら飲むには最適だった。
この身体だと酔えないのが口惜しい。
まぁ、前世の身体も、転生してからの身体も酒には強いみたいだったが。
日本人はアルコールに弱い民族と聞いているが、新瀬家の人間は大抵強いと父親が言っていた。
エニャのお母さんの名前はジェーニャといって、年齢は26歳だ。夫であるグリドとは、幼馴染の縁で結婚したそうだ。
グリドも26歳。この3人の家族は、グリドとジェーニャの生まれ故郷である、トートという集落で暮らしている。
グリドは結婚する前、15歳で成人したあとトートを出て、カスパート領の城下町で冒険者をしていたそうだ。
それなりに才能があったらしく、わずか3年で極銀級冒険者まで昇りつめたものの。ジェーニャのことが気がかりでならなくなり、帰郷して結婚。
それからは林業従業者と冒険者という、二足の草鞋を履く生活を営んでいる。
グリド一家は、見るからに幸せそうな家庭だった。
エリスもジェーニャの話に、ほほ笑みを絶やさず聞き入っていた。
専属侍女であるリディアは食卓はに着かず、グラガ町長の妻であるラウメの勧めを固辞し、給仕役を務めていた。職務に忠実なリディアを見て、心から真面目だと思ってしまうオレ。
話は弾み、エリスとリディアの話に移る。
しかし、話を振られた際、リディアは自分から積極的に、かつ簡潔に話し始めた。
昔、父を不幸な事故で亡くし途方に暮れていた母娘を、エリスの父であるダリウスが、リディアの父と縁があった為、自分たちを保護し。母に侍女としての仕事を与えてくれたこと。
血の繋がりもないリディアに、高度な教育を施してくれたこと。
その恩を返したくて、エリスに侍女として仕えている事などを話してくれた。
それは、一方的に話すことで、質問をする隙を与えず、詳細を探られたくないかのような印象を受けた。
エリスはというと、18歳の若さで領主代行をしていることを話すと、グラガ町長はとても感心していた。
「いやー すごいですなエリアス様、その若さで領地を切り盛りされているとは、頭が下がりますな」
「いえ、まだまだ力不足を感じております。家の者たちの助けで、なんとか体裁を保つのが精いっぱいでして」
エリスはコルダートの侵略については、おくびも出さず、そして自身の領主としての能力を、実際より上のように吹かすこともせず、ただ謙遜に語っていた。
平民相手でも真摯な姿勢を崩さぬ姿を見て、俺はエリスに悪態をついた事を密かに反省した。
「ね~ エリスおねーちゃん。エリスおねーちゃんはお姫様じゃないの?」
エニャの言葉に反応し、注意するジェーニャ。エリスは構いませんから、と言ってエニャの質問に答える。
「そうね、立場的にはそうなるのだけど……今は領主代行だから……。でも、いつかエリアス家の当主として相応しい男性を夫に迎えて、姫としての役割を果たしたいと思っています」
「え~ 好きなひとじゃないの?」
エニャが子供らしく、無遠慮に訊く。エニャは聡い子供のようだ、きちんと話の内容を理解しているのだ。
すると、今度はグリドが席を立ってエニャ注意し、エリスに謝罪する。
エリスはいいんですよ、とグリドに言うと、エニャに対して語り掛ける。
「そうね、エニャは好きな男の子がいるのかな?」
「うん、いる」
エニャの答えを聞いた瞬間、『なにぃ?! どこの馬の骨だ! おとうさん許さんぞ!』と、グリドは興奮し、気が気でないと言った様子だ。完全な親バカである。エリスはクスリと笑う。
ジェーニャが夫をなだめ、エリスに話の続きを促す。
「エニャは好きな男の子と、将来いっしょになるのが幸せなことだと思うのよ。でもね、世の中にはわたくしのように、思うようにはならない人もいるのよ」
「えー それってかわいそう」
「そうね、そうかもしれない。でもね、自分が我慢する代わりに、ほかの人が幸せになるのだとしたら、どうかしら?」
「ん~ ほかのひとって、おとーさんとおかーさんのこと?」
エリスは頷く、するとエニャは少し俯いて考えるポーズをとると、しばらくしてからエリスへ答える。
「んっとね、あたし、おとーさんとおかーさん大好きだから、がまんするかも」
「「エニャ!」」
丁度、両親に挟まれる席順だった為、ジェーニャとグリドは、ひしっとばかりにエニャに抱き着いた。完全な親バカだった。
目の前で繰り広げられる光景に、エリスは口元を片手で隠しながら、穏やかな笑みを浮かべていた。
ジェーニャの叔父夫婦もほっこりとした笑みを浮かべ、クリド一家の様子を見守っていた。
桜野というと、無言で料理を食べていた。
恐らく、この和やかなムードに気おされているようだ。訳の分からないボケも一切言わなかった。
高場と違い、桜野は空気が読める男だ。普段は意図的に読まず、キモオタとしての本分を全うしているが。実際は思いやりのある優しい男なのだ。キモイけど。
桜野の話になり、少しオレの中で緊張が走ったが、桜野は難なく、グラガ町長夫婦や、グリド一家の質問に答えていた。
オレを除く皆は、オヤジウス・オッサンディアという男を、お忍びで旅するどこかの貴族かと思っているらしい。
名前の語感もさることながら、何処で覚えたかはしらないが、それっぽい貴族口調で話し始めたのだ。
詐欺師にも程がある。
キモイ見た目も、昼間の活躍が功を奏したのか、どこかの流派に属する法術師の衣装だと思われているフシがあるようだ。
次にオレに話が回ってきたが、オレは必要最小限のことを告げ、旅をする流れの冒険者だと言っておいた。あまり聞かれたくないような雰囲気をだしながら。
それが通じたのか、あまりたいしたことは訊かれず、彼らの興味は次の話題へと移っていった。
その微笑ましい平和な光景を見て、何故かオレは嫌な予感がした。
気のせいだと思ったが、まずいことに前世から今に至るまで、オレのそれは当たることが多いのだ。
オレは信仰心なぞカケラも持っていなかったが、密かに何かに祈った。
どうかこの人たちの幸せが、この人たちが老いて人生を終えるまで続きますように。
そう祈ったのだ。
オレは手元にあった、飲みかけのワインを一気に煽る。
そして、この身体だと酔えない事に気付き、わずかな苛立ちを感じるのだった。
ちなみに、アーマメントの状態で食事をした場合、食べた分はどうなるのか。
その辺りは次の話でやると思います。
いろいろツッコミどころはありますが、その都度修正していきたいと思います。




