閑話 其の1 ホモ異世界小説とは -side零司
なんだろう、コレは。
それは、次回話すといったはずの桜野が、ホモ異世界小説とやらの説明をしたくて我慢できなくなったらしく、馬車に揺られる最中、PVCを飛ばしてきたのだ。
オレは桜野の説明を、半ば強引に聞かされるハメになってしまった。
《ふふ、オレが異世界小説にハマったのは3年前のことだ。あれはまだオレが少年だったころの事だヨン……》
《いや、アナタ、いまだに少年だから、17歳だよな》
だが、今はアーマメントの影響で、見た目は40代中年男性になってしまったわけだが。しかも途轍もない肥満デブの。
いや、中身もさほど変わらないか。
PVCから桜野の興奮する様子が伝わってくる。ハァハァと息遣いも荒い……キモイ。
《大昔、そう10数年前のコトだヨン。異世界に転生したり転移したりする小説というか、ラノベが流行ったのヨン。でも乱造されすぎて廃れていったのヨン》
《よくある話だな。ゲームとか映画のジャンルでもあるよな》
《そうヨン。ただねえ数年前のことヨン。ひとりの天才作家が異世界モノを蘇らせたのヨン! とある要素とくっつけて!》
《ひどいものと、くっつけたんだな》
《そう、すべてはここから始まったのヨン! すべての始祖、草分け的存在! 業界のパイオニア!その作品の名は【ホモ転生】!!!》
《まんまだな》
《34歳男性ノンケのヒキコモリのクズ主人公がが、ダンプに撥ねられて死んじゃって異世界で転生するの。そして新たに立派なホモとして、人生をやり直すのヨン。前世でクズヒキコモリだった主人公は、異世界で人として正しい道を、様々な苦難に立ち向かいながら歩んでいく姿が描かれるのヨン》
《おい!? なぜホモになってやり直すんだ? フツーでいいだろ?!》
《主人公の魔法の師匠がガチホモだったからヨン。そこで主人公は人の道とオトコの道を師匠から、熱いヴェーゼと共に教え込まれるのヨン》
《既に人の道から外れてると思うのですが……》
《クズだった主人公が熱い魂をもったホモたちと尻愛、そして別れてゆく様子は涙をさそうのヨン。主人公は成長し、最終的に三人の美少年を妻にして、大団円を迎えるのヨン》
《え? 少年を妻にするって意味わかんないのですけど!》
《このホモ転生が話題になって、多くの作家たちが後につづくのヨン》
《いや、続くなよ。いや、ホモだけに後ろから行きたいのか?》
《のちにホモ転生を含めて、【五大ホモ異世界小説】と呼ばれるようになる、素晴らしい作品たちが生まれるのヨン》
《いや、産まれンなよ》
オヤジウスこと桜野圭一は興奮した様子で、話を続ける。あと四作品を紹介してくれるらしい。
これに付き合っているオレは、聖人だと思わなくもない。
《続くは、【ホモロード】だヨン。ホモ属性のキャラクターだけのMMORPGをプレイしていたガチホモの主人公がゲームのキャラクターの身体を得て、自身が育てたホモNPCキャラクター軍団と共に、異世界に転移してしまうのヨン。そして転移した世界をガチホモ色に染めるべく、世界征服を目指すという話だヨン。ちょっと俺たちのシチュと似ているのヨン》
《いや、似てないし。一緒にされるのは、この上なく不本意なんですが》
《お次が【ホモですが、何か?】だヨン》
《開き直ってんじゃねえよ!!!》
《【ホモですが何か?】はゲーム的成長要素をホモ的に表現した、実験的要素が盛り込まれた、初の作品なんだヨン。予測不可能な、怒涛の展開がたまらない作品だヨン。》
《どうやってホモをゲーム的要素に落とし込んだのかは気になるが……。いや、やめておこう》
《おっ? 気になる? 日本に帰ったら貸してあげよう》
《イエ、ケッコウデス》
《その次が、【転生したらホモだった件】だヨン。ノンケだった主人公が異世界でホモに転生して、虐げられている異種族の者たちを集めて、ホモを布教していって一大ホモ軍団を作っていくの。挙句の果て、国にまで拡大していく過程を描いた作品だヨン》
《もうここまで来たら、ホモって特殊能力としか思えなくなるな。ワケが分からなすぎる》
《あ、最終的に、主人公はホモ神として神様になるから》
《オイ、すげえな! ホモ!》
《そう、ホモは特殊能力! 神に与えられし能力といっていいのだよ!》
《いや、ンなわけねーだろ!》
《そして最後が、おワタクシが最もお気に入りの作品だヨン、その名は!
【アタシィ、能力はホモかゲイでって言ったよね!?】だヨン。
ホモに憧れる主人公が死んじゃって、神様の計らいで異世界で新たなる人生を始めるのだけど、与えてくれるはずだった能力がホモじゃなくて、ただのチート能力だったせいで、主人公はホモになるべく頑張る! ほのぼの日常系の異世界ファンタジーなのヨン》
《それ、普通にチート能力で良かったのでは? てかなんでわざわざホモを目指すんだよ! ホモってそんなに素晴らしいのかよ!》
《おワタクシは……それをこの5大ホモ異世界小説から学んだのヨン……ホモの持つユーモアさ、純粋な心、差別と闘う強い矜持、おワタクシはこう感じたのヨン……。ホモは美しいのだとヨン。
でもおワタクシは性的には女の子(二次元に限る)が好きなのヨン。
だからホモの高潔な精神だけは取り込むことにしたのヨン。
それでおワタクシは、ファッションホモを自称することにしたのヨン》
《ああ、そうなの……。それは……がんばってね》
《あ、そうそう! まだほかにも素晴らしい小説たちが……》
オレは一方的にPVCを終了した。




