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第1話 ギルド加入 -お願い

転移するまで、ちょっとかかります。

正直、二章から読んでもいいような気がする、今日この頃です。

「起こしてくれてありがとう。見たくない夢だったから丁度よかったよ。それで? なんだね?」


「お、起こしてしまってすまないっ! あ、あらぜっ! イタいッ! へ、へえと、その……らな……」



 女生徒が、机を挟んだ形で俺に迫っていた。彼女のせいでオレは惰眠を妨害されたカタチとなったが、ロクでもない夢を見た気がするので、これは感謝すべきかもしれない。

 喋ろうとして舌を噛んでしまい、恥ずかしさを感じたのか、彼女の顔は紅潮し少し涙目になっている。



 目前にいる見目麗しい少女は、アッシュグレーのブレザーと学園指定の丈を遵守したスカートという、学園の制服を完璧に着こなしている。スタイルの良さとあいまって彼女の制服姿はプロのモデルも顔負けだ。さすが、学園紹介のパンフレットに登場するだけはある。

 俺はそういう感想を心の中で述べた。


 少女の体型は全体的にすらりとした印象を受ける、そして背は高めだ。腰まである烏の濡れ羽色のような髪を、変形ポニーテールにして結っている。


 彼女は机に両手を置き、少し屈んだ状態でいる為、豊満なふたつの双丘(そうきゅう)が、俺の顔面いっぱいに押し付けられるかのような感覚になる。

 

 それほど彼女の胸は大きいのだ。

 体つきは細身なのに。


 というか、近い! 周りの連中も“ソレ”に気づいており、嫉妬や羨望といった視線が俺に集まってくる。はっきり言って、少々不快だ。


 視線を無視して、俺は彼女に尋ねる。



「それで…… なんだ? よりにもよって昼休みに。平和に生きるがモットーを信条とする俺に対する嫌がらせか?」



 俺は不快感を露わにする。女生徒は『すまんっ、いつ話しかければいいかタイミングがつかめなかった。』と言いつつ頭を下げている。



「まあいいや。で? 話があるんだろ? なんだね?」


「ええと、その……」



 女生徒はモジモジしながら、なかなか次の言葉を紡がない。

 しかし、ようやく決意したのだろうか。背を伸ばし俺を見つめ、向き直ると呼吸を整える。

 女生徒の眼差しに目をやると、目力がすごいことになっていた。

 俺に向かって女生徒は大声で叫ぶ。



「この【毒島武子(ぶすじまたけこ)】お願いしたいことがあるっ!」

「お、おう。なんだよ」



 毒島は大きく息を吸い込むと同時に言った。



「新瀬レイジ! わたしの……(ゴニョゴニョ)付き合ってくれっ! 一緒に()()()! おまえと()()()っ!!!」



 その瞬間、平穏だった昼休みは崩壊した。

 

 教室にいた男子や女子が、騒ぎ立てまくり阿鼻叫喚の(ちまた) と化した。



「きゃああああああああ!!! 毒島さんたら大胆! 大和撫子じゃなくて、肉食系女子だったのねぇぇっ!!!」


「新瀬くん! どうするの?! 食べられちゃう?! ビーストッ! ビーストッ!! 捕食されちゃうううううう!?」


「そ、そんなあぁ…… 学園女子人気ランキングトップ3に入る毒島さんが?! よりにもよって新瀬にぃ?! 気が狂っちまりゃあああああ!!!」


「な、な、なんて、パレスチナ! いえ、破廉恥な!! 学級委員長として見逃せないわ! 早速、生徒指導室へ連行しなきゃあああ!!!」


「そ、そんな~ お姉さまぁがぁ…… 新瀬! おまえが(そその)かしたのね! 呪ってやるぅぅぅぇぇぇ!!! はやくウチに帰って呪詛を! それも下痢が一か月、いいえ! 一生は止まらないヤツをぶちかまして人工肛門にしてやるうぉぉぇぇぇ!!!!!」



 教室内はとんでもないことになっていた。

 好奇と嫉妬と殺気にギラつく目が、更に俺と【毒島武子】に突き刺さる。いや、特に俺のほうに刺さりまくってる気がする。



「な、な、あ―― おいっ!」



 俺は背後でこちらの様子を伺っていたはずの、親友ふたりに助けを求める。

 ふたりの巨漢は壁にもたれかかりながら、こちらの様子をニヤニヤしながら見ていた。



「お、おい。ちょっと助けてくれ……」



 左のガチムチが、【高場裕次郎】身長は190を余裕で超える。

 右のクソデブが、【桜野圭一】体重180キロと、健康的なBMI指数を余裕で超える。



「ちょっと、ちょっと聞きました奥さん。『おまえとシたい』ですって、最近の若い子は大胆ですわねぇ~」


 桜野が、おもちゃを得た子供のように、はしゃぎながら下らない小芝居を展開する。



「だれが奥さんだ。しかし、ふかいね。うらやましーわ」



 不快の間違いじゃないのか? と、俺は高場をにらむ。高場は実に涼しい顔をしていた。



「お、おい! ちょっと来い」

「え、ちょっ! 殿方がいきなり手を掴むなんて! そ、そんな心の準備が……」


 俺は毒島の手を握ると、そのまま手を引き、教室の外に連れ出した。

 武術をやっているという彼女の手は、思いのほか柔らかかった。



 俺は毒島の手を引き、人気の無い場所を探す。3階の人通りの少ない廊下まで移動すると、そこで毒島の手を放す。



「おい、何を考えている?  謙虚、堅実をモットーに生きている俺の平和な学園生活を、崩壊させる気か? 剣豪JKじゃなくてテロリストか?」


「ち、ちがう。わ、わたしはただ、お前にお願いをしただけだっ」


「なんのお願いだよ! 思い切り勘違いさせるような言い方だっただろうがっ!」


「え? 私はただお前と【CULO】をプレイしたいと言っただけだぞ?」


 きょとん、とした様子で、毒島は平然と言う。



「CULOなんていつ言ったよ?! 主語を抜かすなよ! 嫌がらせだろうが! ふざけんなよ!!!」


「緊張していたので自分でも何を言ったのか覚えていない。すまなかったっ!!! うむ、そういうわけできちんと謝ったぞ私はっ」


 このお嬢様はまるで動じていらっしゃらない。本当に意味が解っていないらしい。

 この超絶天然娘め。



「まあ、いい。……それで? 何故、俺なんかとCULOをプレイしたいんだ?」」

「う、うむ、以前から興味があってな。SVRヘッドギアを一週間前に買ってもらったのだ。ようやく手に入れたんだぞっ!」



 ねんがんの何たらソードをてにいれたぞ! と言わんばかりの喜びを見せる毒島。



「そうなのか。でも残念だったな、すでにCULOはサービス終了のアナウンスが出て、新規プレイヤー登録受付は終了して……」

「大丈夫だっ。その話を聞いたときは私も驚いたが、タッチの差で間に合ったのだ」



 事実、CULOの新規登録受付は昨日終了している。

 

 毒島は俺たちが(体感型)VRMMORPG【CULO(カオス・ユニバース・ライブ・オンライン)】へ復帰するという話を、俺の妹である新瀬莉亜から聞いたらしい。


  既にSVRヘッドギアは購入済みで、毒島の自宅でCULO用の初期設定やプレイヤーキャラクターの初期クリエイトなどは済ませてあるとのこと。

 その作業を代理したのが、莉亜だという。

 毒島と莉亜は友人だ。なんでも手芸教室で知り合ったとか。


「言っておくが、CULOはあと一か月でサービス停止するんだぞ? いいのか?」


「うむ、かまわない。ただ、みんなでオンラインゲームとやらをするのが、どういう感覚なのかを知りたかったのだ」



 そういうことなら、かまわないが。あ、一応うちのギルド長に聞かないとな。



「毒島、そもそも俺に訊くのは間違っていないか? そもそも今回のCULOへの復帰は……」


「大丈夫だっ! 桜野だろ? 彼から既に了解は貰ってるぞ。お前からの了承をもらえたら、いっしょのぎるど? とかいうのに加入しても良いと言われたのだ」


 既に了解済みかよ……ん? ってことは、あいつニヤニヤしてたけど……知っていたのか?! こうなるってことを!? あいつめ、直接俺に言えばいいものを。きっと、面白くなりそうだからって、こんな回りくどいことを。

 

 俺は頭を掻きながら、やれやれとばかりに毒島に向かって語り掛ける。


「ま、いいや。とにかくだ、毒島のギルド加入に反対するつもりはない。了承だ」


 まるで花が咲いたかのように、ぱぁっと明るい笑顔を見せる毒島。少し心が揺らいだのはナイショだ。俺がこんな小娘に心揺らぐなど。俺のタイプは大人の女性だ。30歳くらいのアダルトな雰囲気を持った色気のある女がいい。


「わ、わかった。ありがとう。それで…… もう一つ頼みがあるんだが…… 莉亜ちゃんからは了解をもらっているのだけどな…… その、あのだな」


「えっ……」



 毒島武子のお願い。

 その内容を聞いた俺は思った。


 これがクラスの連中にバレたら、教室どころか学園にすら行けなくなると。


新瀬零司(17) 主人公。転生者だった過去を持つ、高校生。

毒島武子(16) 零司の同級生。身目麗しい女子生徒。高校二年生。

高場裕次郎(17) 零司の友人、身長196cmもある巨漢の高校生。

桜野圭一(17) 零司の友人、体重180kgを越える巨漢の高校生


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