第10話 初遭遇 -side零司
現地人との遭遇です。
【ジスエクス・ニゴレイアル】
CULOにおいて新瀬零司が作成したプレイヤーキャラクター。
職業は【ギャラクシーハンター】 Base.Lev、Job.Lovともに115。
下位職【弓兵】のスキルチップとアビリティチップを次々と取得し、Job.Lev40になり中位職への転職条件をクリア。中位職【野伏】選択。そのスキルチップとアビリティチップを取得し続け総合職業レベル80になり条件をクリア後、いくつかある弓系上位職から【ギャラクシーハンター】を選んだ。CULOにおけるプレイヤーキャラクターの育て方としては、ごく普通といえるだろう。
ギャラクシーハンターは弓兵の遠距離攻撃力と野伏の追跡や狩猟採集等の強力な補助スキルを合わせ持つ。
ギャラクシハンターならではの専用装備が【エレメンタルシューター】と呼称される弓に分類される特殊なEF武器だ。通常の弓矢と違い物理的な矢を使用せず、EFを消費し光芒の矢を生成し射出する。形状は弓というよりはボウガンに近い。
ちなみに、CULOにおいて、EF武器と呼ばれる種類のものは、通常攻撃を行うだけでEFを消費する為、通常武器よりEFの燃費が悪い。したがってEF武器を装備して、EFスキルを使用すると、通常よりさらにEFの燃費が悪くなる。
だが、特殊な効果を発揮したり、単純に威力が高いなど利点が多いため。EFの回復手段が確保されているならば、非常に強力な武器である。
◇ + ◇ + ◇ + ◇
「北東 方位 6-1か、なるほど。距離は691メートルね」
中位職、野伏だったときに習得したEFスキル。【複合的情報解析】を使用したためだ。
さらに、音声情報取得の範囲を特定の方向に絞る。
目下、オレの視界には解析情報が表示されたウィンドウでいっぱいだ。これだけの情報ウィンドウが、視界を妨げているにもかかわらず、視界に映る状況をを正確に認識できていた。
こんなことCULOのときだって出来なかった。【複合的情報解析】を使っているときに、敵に襲われたら逃げるしかなかった。視界を塞ぎ過ぎて、とてもじゃないが戦える状態ではないからだ。
これは便利だな。そう思いながら、オレは音の発生源まで走る。徐々にスピードをあげていく。
走る、というよりは駆けるという表現のほうが適切かもしれない。気持ちよかった。
まるで、愛車にまたがっているかのような気持ちよさ。速く走れると言うのは、こんなにも気持ちいい事だったとは!
「速い! これは速い! 整備されていない林道だってのに、モトクロスバイクのフル加速より速いぞこれ!」
CULOをプレイしているときは、何てことは思わなかったのだが。現実でプレイヤーキャラクターになって身体を動かすというのは、CULOとはまるで違うということが良くわかる。
まさかここまで走るスピードが早かったとは! CULOにおいて、速度メーターなんてものはHUD表示されていないから、わかるはずもなかった。
喧騒に近づくにつれ、【複合的情報解析】の音声解析は進み、よりクリアな音声が聞こえてくる。
CULOというMMORPGの遊び方として、モンスターを倒し素材やアイテムを見つけるという、他のRPGと共通する部分はあるが。地形を分析し、隠されたダンジョンやロケーションを見つけるのも重要な遊びのひとつなのだ。これらの要素は各ギルドの実績と関係する為、情報分析系統のスキルを持つジョブが必要になってくる。各ギルドには、こういったジョブ持ちがいるのは当然のことだった。
男たちの怒声や悲鳴が、鮮明に聞こえる。
《お、オヤジぃ! ダメだ! ライまでやられちまった! いやだぁ! 喰われたくない!》
《しっかりしやがれ! 固まるんだ! 一人でいたらやられるぞ!》
《うおおお!!! 来るな!来るんじゃねえええ!!!》
《ぐぞっ! ぐぞおおお!!!》
あらま、こいつは凄いことになっているな。
いよいよ、その場所に近づいてきた。男たちが、襲われている場所は窪んだ草地だった。木は少ないが、あちこち藪だらけで明るい時間帯とは思えない程、視界が悪い。森だと思っていたこの場所はどうやら山だったらしい。近くには切り立った崖があり、落ちたら即死だろう。眺めてみるとその下には道が見える。
オレはちょうど姿を隠せそうな草藪に身を隠す。襲われている連中の姿を伺うためだ。
「ああ、こいつは凄惨だね……」
男だけの集団だった。全部で8人。
リーダーらしき40代の男は、革製の鎧と薄汚れた外套をまとっている。あとも似たようなものだ。皆、無法者らしい雰囲気を感じさせる。
男たちは、大きな狼に襲われていた。
地球の狼よりも大きく一見すると灰色だが、光が当たると尻尾が青くみえることから青尾狼と呼称される。
彼らは、青尾狼の群れに襲われているようだ。
通称は青尾。農民たちを悩ませる獣だ。青尾狼は家畜を襲うことがある。オレは前世で、農民たちの依頼を受け青尾狼の討伐を行ったことを思い出す。
もう少し、様子を見る。この男たちは、けっこうな腕前だった。何人かやられ、血を流して死んでいたが、なんとか態勢を立て直し、見事にパーティの再編成を行い反攻に転ずる。
だが、彼らの置かれている状況は窮地だった。倒れている男の数は6人。結構やられてみたいだな。青尾狼はまだ9匹いる。そして彼らに更なる試練か訪れる。
頃合いを見計らったように、一匹の狼が現れる。大きな狼だった。青尾狼よりも二回りは大きいかもしれない。この青尾狼の群れのリーダーだろう。
赤尾狼だ。
こいつは獣ではなかった。凶獣だった。
赤く鈍い妖光を放つ眼は、冷静に状況をうかがっていた。凶獣は知恵がまわる。
凶獣とは、獣がなんらかの原因で突然変異を起こしたものだ。青尾狼が変異して赤尾狼になると言われている。所説はあるものの、錬仙した仙気が悪影響を及ぼすのではないかという説が、広く支持されている。
理由としては戦場の近くなど、錬仙が多く行われた場所に、凶獣が発生しやすくなるという報告がある。
しかし、赤尾狼か。かわいそうに、これは全滅かもな。
赤尾狼の戦闘力は高く、生命力も強い。指揮能力を持っており、部下の青尾狼たちと共に襲ってきたら、絶望的である。
オレは考える。助けていいものか、と。
襲われている集団のリーダー格らしき男が、なんとか冷静につとめて指示をしているみたいだが、どうもうまくいっていない。現場は完全に混乱していた。
「どうする? やるか?」
オレは思案する。
どのみち、情報を仕入れる必要がる。言葉が通じなかったらアレだが。先ほどのあの連中の言葉を聞き取れたことを考えるに、問題はないと判断する。
よし、やろう。
時間があれば、正直なところ武器だけでなく、スキルも試したかった。だが、自身の能力を試しているうちに彼らがやられてしまうのは想像に難くない。
メニューランチャーから装備項目を選び、現在の武装を確認する。
武器の項目を見ると、きちんと装備されていた。武器使用モードに切り替える。
CULOは通常の操作と、戦闘時の操作を切り替えるようになっている。
左手に少し熱い感触があったあと、閃光と共にゼクセルM599 series800 TYPE-EFが左手に握られた。これもCULOと同じ操作で、武器が現れるようだ。
ギャラクシーハンターの武器【エレメンタルシューター】
オレが装備している【エレメンタルシューター】の名称は、【ゼクセルM599 series800 TYPE-EF】(装備アイテム欄にある詳細説明を見た)といって、件のイベント参加報酬として運営より送られてきた、複数の課金アイテムの内の一つだ。
IGは130。CULO最終シーズン最高クラス相当の武器だ。
さっそく、エレメンタルシューターを構え青尾狼を狙う。
「あれま、これは感覚が違うな……」
CULOとの差異に思わずひとりごちる。CULOではターゲットマーカーを使い、標的に定めて射つのがやり方だった。
現実の状況では、弓を引く姿勢をとらなければならない。
昔、この世界で仙技使いだったときは、弓は当然必修すべきものだった。17年前なら使えはしたが、いまはどうか? 17年も経っていたら流石に鈍っているだろう。だが、このエレメンタルシューターは違った。
構えてから弦を引くと、 ふたつのターゲットマーカーが出現する。一つはオレの目線。
もう一つのターゲットマーカーは【エレメンタルシューター】が狙っている場所だ。
この二つが重なると、当たるのか? 弓射ってのはそんなに簡単じゃないのだが……。
俺の目線である、緑青色のターゲットマーカーと【エレメンタルシューター】が狙っている先を示すターゲットマーカーが重なった。重なるとターゲットマーカーは血のような紅いマーカーへと変化する。
射っていいということか。
狙いを付けたのは、あの連中の背後に回り急襲を企んでいる青尾狼だ。
17年ぶりに生物を殺傷する。 オレに迷いは無い。
そして、退き絞った弦が解放されると、エレメンタルシューターから光芒の矢が放たれた……。
【ジスエクス・ニゴレイアル】
職業【ギャラクシーハンター】
【Base.Lev115】【Job.Lov115】
武器【【ゼクセルM599 series800 TYPE-EF】(課金武器)】(職業専用装備エレメンタルシューター系)
防具【6か所一体化防具(課金防具)】【オリジナル外装データ投影アクセサリー(指輪)】
EFスキル【複合的情報解析】【追跡】【狩猟採集】等、ほか多数




