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四 舞い降りる使者

この世界に降り立つ一つの影。


 黒い短剣を右手に持つ少女は、風に揺れるショートの艶やかな黒い髪を手で押さえると、降り注ぐ陽光から逃げる様に木陰に身を寄せた。


 私立高校の校章が刺繍された紺のブレザーのポケットに両手を突っ込み、冬の冷風に体を震わせる少女は木々の隙間から空を仰ぐと、鼻から大きく息を吸った。


 鼻腔を刺激する土と僅かな湿気の香り。それは雪解けの水が地面を濡らし、風によって運ばれる生命の香り。


 その香りに少女は僅かに顔を綻ばせた。


 懐かしい香り。五百年前の日本を自然と思い出す。と言っても、日本とこの世界では街の景観が大きく異なるのだが。


 少女は黒ストッキングが覆うカモシカのようにしなやかな足で地面を蹴ると、樹木から分岐する木枝に着地。さらに跳躍を繰り返し、少女は周囲が見渡せるほどの高度に瞬く間に到着した。


 少女は木の幹にもたれかかりながら、ブレザーのポケットから五百年前の日本で普及していたスマートフォンと呼ばれる携帯端末を取り出した。


 ユグドラシルの改造により、電池が減ることはなく稼働時間は永久。電波が飛んでいない為に電話やメールはできないが、そもそも送信先がいないので問題はない。


 少女が電源ボタンを押すと高画質の液晶画面がすぐさま色彩を宿す。


 光り輝く液晶画面は少女が設定した画像を表示し、その画面を少女はガラス玉の様に綺麗な瞳で見つめ、僅かに瞼を落とした。


 そこに映る少女と六人の男女を見て、少女はゆっくりと瞬きを繰り返す。


「見ててね、アタシの復讐」


 スマートフォンをポケットにしまい、少女は右手に持つ鍵と呼ばれる黒い剣に自身の瞳を映した。


 二重瞼ながら吊り目気味の瞳はやや切れ長で、黒曜石のような黒い瞳は真っ直ぐに少女の瞳を射抜く。


 行こう、みんな。


 少女は天に向かって伸びる巨大な塔を睨め付け、空高く跳び上がった。

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