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干物の増産に

 今日も、徒然つれづれなるままに、思い浮かぶたわいもない話を綴りました。

 お楽しみください。

 時代小説風の話になりますので、表現など十分に注意しておりますが、誤字・脱字・言い回しのおかしな箇所があれば、ご指摘お願いします。


 また、面白いとお感じになれば感想や評価をいただけましたら励みにもなりますのでよろしくお願いします。

 実験は大成功だった。

 美味しい物は少しでも余裕があれば誰でも欲しがるのだ。

 しかし誤算が全く無かったかというとそんな事は無く、誤算だらけだった。

 今我々が扱っている商材は炭だけだったのが、今回の実験で、それに塩と干物が加わった格好だ。

 炭については今までの活動で充分にノウハウが蓄積されており、完全に村人に任せきることができる。

 しかし、それ以外の商材である塩と干物は、これから手探りでノウハウを蓄積していかないといけないので、村人にそのまま任せることができない。

 当初の予定では、干物の商材としての価値を門前で確認できたのならば、観音寺での商いの主力として商いを始めるつもりだった。

 でも、先の実験での影響で、門前での商いでもこれら商材として扱っていくしかない状態にまでなってしまったのだ。

 一番の問題は塩と干物の増産について如何しようかということだ。

 塩その物の増産については全く問題にしていない。

 今やる作業の量を増やせばよいだけだから、これについては既に一部を村人に任せている。

 問題は、塩の販売における容器についてだ。

 現在、林の部落で小ぶりの壺の生産を始めているが、何故だかこの小ぶりの壺入り塩が評判になってしまったので、容器入りの塩の増産をしなければならなくなってしまった。

 当初どこかの遊園地よろしくポップコーン販売のように容器を売った後に、塩だけを売るビジネスモデルを考えていたので、それについて準備をしていたのだが、壺入りの塩が、こちらで考えている以上に門前での需要があるのだ。

 物が無いので売れないということもできなくはないが、これだと悪目立ちをしそうで、考えものだ。

 なので、塩については壺の増産と合わせて行っていくことになる。

 林の部落組には頑張ってもらうようにお願いをしておいた。


 干物についても、需要を喚起してしまい、毎回とはいかないまでも、相当の回数の販売を期待されている。

 浜に作った集魚装置は魚を捕ることには成功しているが、量と種類に問題が残り、自家消費にしか使えそうにない。

 なので、南にある漁師部落にお願いに行くしかなくなった。

 これから定期的に魚の買取を交渉をしに行く事になった。

 この時代にはとにかく変化を嫌うというか、変化しないのが当たり前で、商いも同様で、これから行く交渉は、今までの商いのルートを変えてしまうくらいにインパクトがあることだ。

 今まで南にある小さな部落の水揚げされた魚の売り先に、新たに我々のためにかなりの量の魚を卸して貰う必要が出てきた。

 なので、今日は勉強会を抜け出してもらった張さんと珊さんについてきてもらい、部落に交渉に出かけた。


 昼前に部落に着いたのだが、部落は朝の漁を終えたばかりなのか浜は人が出ていた。

 近くにいた漁師を捕まえて村長に案内してもらい、事情を話し交渉を始めた。

 今まで我々に事あるたびに色々と良くしてくれた部落の村長は快く交渉に応じてくれた。

 何でも、最近落ち武者と思しき一団を保護したら彼らは体調が戻ってきた先週あたりから漁に積極的に協力してくれ、水揚げの量も増えてきており、売り先が問題に成りかけていたとかで我々の提案は渡りに船だったとか、今後は増産分を我々に回してもらえる事で話はついた。

 何でもこれからは、朝に水揚げした分を浜の部落まで持ってきてもらえるとか、我々にしたら破格の条件まで提示して貰った。

 その分買取価格を増やしてほしいそうだが、我々にしたら文句などあるはずが無く、すぐに快諾をして話し合いを終えた。

 その後は村長と雑談などをして部落を離れた。

 魚は明日から早速運ばれることになった。

 なので、浜の部落での受け入れ態勢を整えたらすぐにでも干物の増産に掛かれることになった。

 寺に残っている子供たちの内、もうすぐ大人になりそうな女性を浜の作業に回ってもらい、受け入れ態勢を整えた。

 それに、作業も分業体制を構築して、家内制手工業のまねごとを始めてみた。

 これならば、少数の我々にも増産ができそうだった。

 

 一応の目途を付け、安心して、一息を入れていたのだが、先の漁師部落との話で出てきた落ち武者について気になってきた。

 村長の話ではその落ち武者たちはかなり衰弱した状態で、部落の傍で倒れていたのを村長たちが助けたそうだ。

 本当にあの部落の人たちはお人よしばかりで我々も援けて貰った口なのであまり偉そうなことは言えないがちょっと心配になってきた。

 助けたことでひどい目に合わなければ良いのだが。

 

 それよりも、助けた落ち武者たちだが、落ち着いて話を聞いたそうだが、あまり自分たちのことを話したがらないとのことだったが、それでも判ったのは『若』と呼ばれる一人の青年を助けながら南の方からやってきたとのことだ。

 何でもお家騒動で敗れて放浪していて力尽きたそうだったのだ。

 この地より南で、かつ、この時代のお家騒動と言えば、やはりあのお家騒動くらいしかないだろう。

 だとするとあの一団は九鬼 嘉隆を『若』と呼ぶ者たちの集まりだろう。

 まだ織田信長には仕えてはいなかったのだ。

 俺の存在がすでに歴史に何らかの影響を与えているはずだし、俺自身の目標が長島の一向一揆の阻止だからバリバリ歴史に介入する気なので今後どうなるのか予想もできないのだが、何となく波乱を呼びそうな気がする。

 当面は十分に気を付けていくことにした。


 それにしても、商材の増産って簡単な事では無いな。

 炭の増産だって、炭だけでは済まなく、炭を運ぶための筵も増産しないとならない。

 塩や干物はもっと面倒で、塩については壺の増産に力を入れていくことになる。

 そうそう、忘れていたが、干物の増産には竹かごも増やさないとならないことだ。

 こちらについても珊さんと話し合い、珊さんのところの若いのを充ててもらい今後のこともあるので多めに竹かごを作って貰った。


 まだまだ我々としては生きていくうえで食料の確保を最優先で行っていくのだが、そろそろ自衛のための手段を考えていかないとまずいかもしれない。

 そうなると、伊賀の藤林正保さんが一族を連れて我々と合流して貰えないかな、などと都合の良いことを考えてしまう。

 そもそも、伊賀の藤林正保と言えば歴史上に名を遺す藤林長門守のはず、そんな人が俺の下に就くはずなど無いのだが、せめて友好的な協力関係だけでも築けたら良いのだが、どちらにしても情報の入手のこともあるので、もう一度きちんと話さないといけないことだけは分かる。

 干物と塩の増産体制が整ったら、もう一度大和の本田様のところに行くついでに甲賀に寄って藤林さんを訪ねてみよう。


 以前に比べ我々も少しは力を付けてきた。

 干物の販売が軌道に乗ればきちんとした格好で藤林さんに仕事としてお願いもできるようになるだろう。

 それには今ある人員でのさらなる増産が不可欠だ。

 浜の部落は家内制手工業のような形ができそうなので、林の部落も検討していこう。

 林の部落も炭と木材だけでは勿体ない。

 壺作りで増産のノウハウを蓄積して、焼き物も将来的に商っていけるように準備を進めていくことにする。

 そのためにはとにかく塩用の壺の増産体制を早急に構築していくことにする。

 壺の蓋くらいは製造に型を使ってみよう。

 そういえば葵の大工道具にノミなどがあったはず。

 それを使って蓋の型を早速作ってみた。


 ………… 

 俺には工作の才能がないことが嫌というほど分かっただけだった。

 珊さんに、前衛的なオブジェでも作ったのかという目をされた。

 とても恥ずかしかったのだが、俺のやりたいことを説明して珊さんのところの手先の器用な人に代わりに作って貰った。

 良く捏ねた粘土を使って型に入れ蓋を作ってみた。

 粘土が乾かないと型から外せないし、取り出しに苦労したので、簡単に外せる様に工夫をした型をそれもかなりの数の用意を始めた。

 こっちの方がかえって手間をかけているが将来的に大きな力になると自分に言い聞かせ頑張って準備をしていった。

 この型作りには、明らかに俺は戦力外なために、別の事を始めた。

 そろそろ(うわぐすり)の研究を始めて、ここでの焼き物も売り物にしようと考えている。

 どうせ素人が作るのだから品質が悪いのは諦めている。

 なので、安く多く提供できるのを作りたいので、素焼きに関しては蓋以外にも型を使えないか試していくことにして、素焼きでない焼き物に挑戦を始めた。

 俺のあやふやな知識の中に草木灰での釉があったので、とにかく試すことにしたが、売り物の生産の邪魔だけはできないので、俺は今は使わなくなった河原の炭焼き用に作った窯の前でとにかく色々と試していった。

 今では、浜も林もどちらも任せきることができたので、俺は河原で籠って実験を始めていった。


 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 感想、評価、ブックマークを頂けたら幸いです。

 また、誤字脱字、不適切表現などありましたらご指摘ください。

 作文する上で、参考になりますし、何より励みになります。


 よろしくお願いします。

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