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プロローグ
ユリーレ王国の王立図書館には、王族と軍上層部しか立ち入ることのできない特別閉架書庫がある。そこに保管されている最重要資料の一つであり、王立図書館が所蔵している資料で一番古いと言われている書物に「ガーネットの日記」があった。二千年前に書かれたガーネット王女のその日記の原版は、もちろん残っていない。様々な人の手によって書き写され現代に残ったそれは、現在のユリーレ王国にあっても、多大なる影響力を持っていた。
当時十三歳であったガーネット王女が国を変えたという事実は、二千年を経た今でも色褪せることなく、ユリーレ王国民に英雄伝説として語り継がれている。
だが、そこに至るまでの彼女の経歴は、決して綺麗事だけで済まされるものではなかった。そしてそれを知るのは、代々彼女の日記の閲覧を許可されている王族と、一部の軍上層部だけであった。
二千年の時を経て、かつてのユリーレ連邦はユリーレ王国へと名を変え、領土も減らしたが、いくつもの政変を乗り越えながら、確かに今も大国として存在していた。