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9、シャル・カシエルは知る、信じていた人の世界を

途中からシャル・カシエル視点となります。

「待って!」


後ろから声を掛ける茶髪のハーフツインテの女の子、そうシャル・カシエルだ


「おや、カシエルさん僕に何か用ですか?」


俺は自己紹介中の殺気の件だと知りながら、逢えて聞いた。

一応、違う場合もあるし、初めから殺気を放ってた事を認めるのは得策じゃないからね。


「じゃあ聞きますが、殺気を放ちましたよね?私に対して」

「殺気?何故僕がそんな物騒な物を放たなきゃいけないんだい?」

「それを聞いているのです!」


とぼけていたら突然怒鳴られた。怒鳴られたらこちらもお返ししなきゃいかないな


「じゃあ、次の質問に答えたらいいですよカシエル家のお嬢様」

「質問しているのはわたーーヒャッ!」


俺は反抗しようとしていたので自己紹介の時より濃厚で、軽く闇属性と光属性を合わせた重力波を乗せた殺気を放った

シャルは重力に耐えられず、地面に手を付けた。


「おいおいクロ、この重力はこの子にはちっときついぜ」

「ってか何でお前普通に立ててるんだよ……この重力の中で普通にしてるとか化け物か?」


乗せた重力は軽いがここまで普通にいる奴はなかなかいない。

ジルってチャラ男に見えるけど結構強いのかもな。


「おいおいひでーな、さっさと重力解いてやれこの子もう失神寸前だぜ?」

「あ、やべ」


俺は失神されたら困るので、汗でびしゃびしゃの彼女の重力を解いた。


「大丈夫ですか?カシエルさん」


ジルは半分笑いそうな顔を必死に堪えて心配そうな表情を見せた。

コイツ、絶対本心で言ってないだろ。


「ハァハァ、ハァハァ、こ、これは…?」


シャル・カシエルは何が起きたか理解出来ていない様子だった。


「(クロ!やり過ぎ!)」

「じゃあ質問するよ?貴女は養子ですよね?」


シャル・カシエルはさっきまでの汗など気にせず、俺の言った養子という言葉に驚いていた。


「な、何故それを?」

「やっぱりか…カシエルさん」

「は、はい…」


さっきの現象を理解出来ずとも俺がやったと理解したのか、大人しくなった。


「この度の無礼を深く申し訳なく思います」


俺は跪き、頭を下げた。


「ほえ?」


何故謝られているかまるでわからない様子のシャル・カシエル、まぁそりゃあそうだ。さっきまで攻撃してきた相手が急に謝り始めたんだからな。


「おいおい、どういう風の吹き回しだ?クロ」


理解が出来ないジル、うん、まぁそうだよね。


「養子と分かっていればこのような真似はしなかったのですが…」

「ちょ、ちょっと待って、その言い方はおかしくない?」

「何がでしょう?」

「だって、その言い方だとカシエルの人だったら容赦なくさっきみたいな事をするって感じだから」

「ハッハッハ、あんな生温い事で済ましませんよ~」


俺は笑いながら言った。シャル・カシエルは怖がっていた。


「おいクロ、脅しもその辺にしとけお前の本命が来るぞ」


「マジか、今はやり時じゃないからまた今度ねカシエルのお嬢様」


俺とジルは駆け足で寮に逃げるように入った。

やり時はアイツが調子に乗った時だと決めているのでね―――









クロが去った後、シャル・カシエルは重力の負荷が消えて立ち上がりながら呟いた。



「何だったのかしら…あの二人は…」

「おや、シャルじゃないかどうしたんだ?」


話しかけて来たのは義兄のシード・カシエルだった。

シード兄さんは、義理の妹の私にも優しい。

とても、下の子思いの方だと思っている。

生徒会長ともあり、尊敬できる人物だ。


「あ、いえ、少し気になる人がいたもので…」

「ほほぅ、恋の話か兄さんが相談に乗ろうか?」


笑いながら茶化すように言ってきたので私は「真剣に話をしているんですっ!」と言った。そして話をしていくと、シード兄さんは私を心配してくれた。


「へぇ、黒髪のクラスメイトがカシエル家に恨みを持っている……か」

「心当たりありますか?」


するとシード兄さんは真剣な顔で言った


「レインに二人で相談しにいこう、僕には心当たり無いか記憶から消したかのどちらかだからね」


そのあと、私達は家に帰った。

レイン兄さんに相談するために…


私はお兄様と家に帰ると、お父様が玄関で待っていたようで話しかけてきた。

サン・カシエル様だ。

私を養子として引き取ってくれた人。

とても慈悲深い人だ。


「どうだった~?シャル、入学式は?友達出来たか~?」

「それよりもお父様、レイン兄さんは?」


お父様は何かあったのかと心配しているが後でお話しますと言って、レイン兄さんのいる部屋に向かった。

レイン兄さんは学園の座学の授業で好成績を収め、生徒会副会長になったのだ。

よく本を読んでいるので物知りなこともあって、カシエル家の資料も記憶している凄い人なのだ。


「あれ?どうしたの?シャル、兄さん」

「あぁレイン、説明するから聞け」


シードお兄様はあらかたレイン兄さんに説明した。


「どうだ?心当たりあるか?」

「…もしかして…クロードかも」

「クロード?誰だっけ?」


クロード、始めて聞く名前だ。

けれどレイン兄さんの顔の険しさを見ると何やらあるようだ。


「クロード・カシエルって言えば思い出す?」


レイン兄さんは突然カシエルの名前を口にした。

どういう事だろう?

カシエル家には家族がシード兄さんとレイン兄さんと、お母様とお父様しかいないと、使用人もお父様もお母様も兄さん達も誰もが言ってたはずだけど…

カシエルの名前を聞くとシードお兄様が突然顔を青くしていった。


「馬鹿な!?あいつは死の森に捨てたはずだろ!?」


死の森?死の森って確か生存率ゼロの森?

それに…捨てたってどういう…?


「けど、それ以外考えられない」

「アイツは無適性だ!冒険者でも死ぬ森で生き残れるはずがない!」

「…少し昔の事を調べたんだけどね、水晶が透明になった例を探してたんだけど…」

「なんの話だ!?今はそれ所じゃ・・・」

「聞いてくれ、…透明になった例だけど言い伝えに書いてあったんだ」


部屋にいる全員が息を飲んだ。


「透明なのは無適性ではなく、全魔法適性者、つまりもしそのクロって子が本当にクロードなら全ての属性の魔法を使えるって事だよ」


「なん…だと?」


「ちょっと待って!クロードとか死の森とか何のこと!?」


「それは…「私から説明しよう」」


突然部屋の扉を開け話に割り込んで来たのはお父様だった。

どうやらずっと部屋の前で聞いていたようだ。


「お父様?」

「あのな、これは何でもないんだ。クロードって奴は養子として育てたんだけど、カシエル家に酷いことをしたから追放したんだよ、だからその子がクロードだったとしても逆恨みなんだよ」

「酷いことってなんですか?」

「あ、えっと…それは…「父さん、僕が説明するよ」」

「う、うむ頼むぞ」


どうやらレイン兄さんが話してくれるようだ。


「…クロードは養子なんかじゃんくて僕達と血の繋がった兄弟だよ」

「レイン!!ち、違うぞ!!シャル、本当にクロードは酷いことしたからな…それで…!」

「父さん、もう止めよう、シャルは家族だよ」

「…」

「じゃあシャル、これからシャルはとても恐怖するかもしれない。それでも聞いてくれるね」

「…はい」


そして説明を聞いて私は恐怖した。私が養子として貰われた前のこと、私が属性が二つ持ちでは無かったら養子になっていなかった事、そしてクロードにはなんの罪も無く捨てられたこと。


「そんな…ひどい…」

「何と言われようと僕は何も言えないよ…」

「俺は父さんを止めようとしてたんだ!!シャル、俺は悪くないぞ」


シード兄さんがそう言うとレイン兄さんは「…兄さん」と呟いた後、「いや、そうだね…」と苦しそうに言った。


「しかし父さん、奴をどうする?」


シード兄さんがお父様に尋ねるととんでもない事を言い始めた。


「もちろん、このまま野放しには出来ん、暗殺しよう」

「父さん、それはあんまりにも…」


その言葉に反論をしたのはレイン兄さんだ。

どうやらこの中でマトモなのはレイン兄さんだけのようだ。

皆、興奮状態になってるだけ…だよね。


「レイン、シャル、これは家の未来を賭けているんだ、分かってくれ……」


そういってお父様とシード兄さんは部屋を出た。

その姿を私はただ呆然と見ることしか出来なかった。

いつもお父様は慈悲深い人だと思っていた。

けれど暗殺、その言葉を聞いて驚いて唖然とするしかなかったのだ。


「レイン兄さん、どうすれば…」


これは夢なんじゃないか、そう思っている場合じゃない事を察知し、レイン兄さんに解決策を問う。


「落ち着くんだシャル、とりあえずこのことをクロードに言いに行こう」


そして私とレイン兄さんは男子寮に急いで向かった―――









男子寮が見えるところまでくる。どうやらまだお父様達は来ていないようだ。


「よし、もうすぐだ」


私達は男子寮に駆け込もうとした時、レイン兄さんが突然地面に倒れた。


「ぐ、ぐぅぅ、これは!?」

「レイン兄さん大丈夫ですか?……あ」

「何しに来た」


そこには黒いレザーコートを羽織った黒髪の少年がいた。


「あ、あなたはクロードね」

「その名で呼ぶな、お前もこうなるか?養子と言えど、手を出さないと思ってるなら大きな間違いですよ、カシエルのお嬢さん」


その時、私は理解した。

このクロは、間違いなくクロードだ…と。


「おおーい、クロどうしたんだ~ってレイン副会長!?」


男子寮の扉から出て来たクラスメイト…確かジルと名乗っていた。


「ぐ、ぐは、く、クロード話を…」

「そうか、まだ口が聞けるか重力をもっと上げないとな」

「おいおい、それ以上やったらそのレイン副会長は多分内臓とか潰れるぜ?」

「ま、待って!あなたをレイン兄さんは助けに来たのよ!?早く助けて上げて!」


ジルさんは多分クロードと仲がいいのでしょう。

話し方からそれがわかる。

だから彼に頼めば止めてくれるようにお願いしてくれるかも…。


「うーん、ゴメン、これはクロの問題だから」

「俺はお前らゴミの助けなどいらない」

「ぐおおおおおおお!!」


レイン兄さんが更に苦しそうな顔をした。

おそらく重力の負荷を上げられたのだろう。

体が少しずつメキメキと音を立ててる。


「あなたは今、暗殺者に狙われてるの!」


私は要件を伝える。

これをすることによって私達が敵じゃないと言ったことになる。


「は?」

「それを言いに来たのよ!だからレイン兄さんを離して!」


クロードはしばらく黙り、少ししてレイン兄さんが開放されたようで苦痛の表情が消えた。


「ハァハァ、ハァハァ、こ、これは一体?」

「まだ、声が出せるのか運が良い奴だ」

「副会長さん、回復しますよ!」


倒れている状態で動けない兄さんにジルさんは近づき回復魔法を使った。

回復魔法は光属性の上位魔法、それを覚えてるジルさんって一体…

それでも回復してくれるのはとても助かる。

レイン兄さんは多分体に凄いダメージを受けてる。

しばらくしてレイン兄さんは起き上がった。


「あぁ、ありがとう。君は…?」

「ジルって言います。クロの友達ですよ」


ジルさんは笑顔でそういった。

この人は良い人なの?悪い人なの?

さっきは止めてくれなかった…

だけど今度が回復してくれた。


「クロード、暗殺者はもうこっちに向かってる早く逃げろ!」


レイン兄さんは本題を思いだし、クロードにそう伝えた。

もう、私が伝えているのは知らないらしい。

それも当然だ。重力の力を体験してるから分かる。

あれを受けてると周りの事なんか考えられなくなる。

けれど、クロードはどんな反応をするだろう?


親に捨てられ挙げ句の果てに暗殺されるのだから…


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