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25、同じ目

俺達は王様に頼んで、王宮内に一時的に仕える事になった。

優勝チームの特権って奴の一つで【旅行券】のようなものがあったので王宮に行きたいと言った。


こんなのは普通は、通らないがジルの弟についてが本当の目的であると、話したらこうなった。

レナに関しては緊張すると言って、来なかったのだが…

まぁ、試合でもあんなだったしそれは仕方ないのだろう。


学園にも話は通っている。学園長は久しぶりの優勝でとても喜んでいるのでなんでも「うんうん!いいよ~」と話も聞かずにオーケーしてくれた。

何も聞いていないのだろうか?と思い「学園長のロリババァ」と言ったら「あぁ!?」とキレられた。

悪口だけは聞きとれるようだ。都合のいい耳だなおい。



そんなこんなで王宮に着くと、さっそく俺達は色んな人に話を聞いて回った。


「ハル君?いなくなった日は使い魔召喚の数日後だったねぇ、その時に光属性の天族を召喚したのよ!凄かったわぁ~」

「確か裏で悪いことしてるって噂されてたね…朝から晩まで訓練でそう言う事はする暇なさそうに見えたよ?」

「ハル君は良い噂はあまり無いねぇ…タバコとか、お酒とか…そういう子供には見えなかったけどねぇ」


こんな感じで悪い噂が流れている反面、信じられないと言ってる人もいた。


「アイツは今何処に……」


俺達は町に向かった。

町のギルドで情報を集める為だ。

すると一人の人物が挙がった【神速のハル】。


神速の由来は敵を数秒で圧倒するかららしい。

武器は二刀流、使い魔は光属性の天族だと聞いた。


「あ、ほら今来たあの子が【神速のハル】だよ」


とある冒険者は扉を開ける少年を指差す。

俺達はその子に駆け寄った。髪はジルと同じ銀髪、顔はどこか優しそうな雰囲気があり美少年といった感じだ…そして、背が低い。

そしてジルはその少年に向かって叫んだ。


「ハル!」

「え?あ、ジル兄さんどうしてここに?」


ジルの事を兄という限り、どうやらこの銀髪の少年で間違いはないようだ。


「お前が王宮を出たって聞いて何事かと思ったんだよ!」

「あ、えーっとそれは…」

「ハル君」

「…はい」

「俺はジルの友達でクロという。口を挟む資格は無いのかもしれない。でもジルは君の事をすごく心配していたよ?」


ハル君はしばらく悩み、話してくれた。

事の発端は使い魔の召喚の儀式だという。

召喚の儀式をやったのはハル君の他に、同い年の王子がいたらしい。名前はアルベルト。


アルベルト王子はハル君より先に召喚石を使った。結果はDランクの魔物、周りは「さすが王子!」と言ってアルベルト王子は喜んでいた。

次にハル君がやった。結果はCランクで天族。

それに嫉妬したアルベルト王子が周りにデタラメの噂を流してハル君を追い詰めたらしい。


ある時には「黙って殴られろ、僕がパパに言えばお前の一族を王都から追放も出来るぞ」と命じられ、木刀で殴られた時もあるらしい。


それでハル君はこんな奴に忠誠を誓いたくない、忠義を示す事なんて出来るわけがない…そう思い、王宮から出たらしい。


こいつ…俺と同種だ。


それを話しているハル君の目はかつて俺がカシエル家に向けていた目と同じだった。ジルは気付いてないようだが、この子は復讐心が芽生えている。


「おいおい、追放なんて出来るわけないだろ、アドルフ王の事なんだから絶対にしないって…」

「ハル君」

「クロさん何ですか?」

「君は、復讐を望んでいるね?」

「え?」


ハル君は俺の言葉に少し戸惑う、そこでニヤリと笑うと俺が考えていることをハル君は理解できたようだ。


「おいクロ、それはさすがに「望んでいます」え?」

「フッ、じゃあついて来い」


俺は王宮に向かう、それにハル君は黙ってついて来る。ジルは状況が飲み込めずとりあえずついて来る感じだ。


王宮に入る前に俺はハル君に治癒魔法の応用で変化魔法を使った。

回復魔法とはそもそも傷の部分を思い通りの形に変えて元通りにする魔法なので、思い通りに変化させるのも可能だ。今回はハル君の細胞を変化させた。身体全体の細胞を変化させたので少々疲れたが、うまくいったようだ。

どのように変化させたか?フッ、それは―――


「あの、この姿は?」

「ハル君は身体の細胞を弄られて女の子になりました~」



ハル君の姿は今、十二歳ほどの女の子だ、もう少し大きいかと思ったが、身長が低くて十二歳ほどに見える…

髪はふんわりとした青みがかった銀色で腰までのロングヘア、容姿は細胞を変化だけとは思えないぐらい整っており、何だかよい香りがする。

肌は雪のように白く、繊細な指をしており、瞳の色は海のような青色。

誰が見ても美少女といえるだろう…


ちなみに元は十四歳の少年だ。


「クロさん凄いですね…本物みたいな髪質です」


声のトーンも高くなり、透き通るようであった。


「いや、これはホントに変化させたんだぞ?」


俺がやったのは幻影魔法ではなく、細胞そのものを変化させた事を言うとさらに驚いていた。


「今回の作戦はな…」


俺はハル君に耳打ちで作戦を伝えると少し不安そうな表情をしていた。


「大丈夫だ、なんかあったらフォローするから!」

「は、はい!」


ハル君を影で着替えさせ、王宮に入った。

門番には俺達の知り合いという事で話は通した。


さて…アルベルト王子への復讐劇を見学させてもらおうかな…

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